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正常不安じゃなくて病的不安だった


先月心療内科にて、『重度の病的不安』と診断され、薬物治療を開始した。

【発症】

事の発端は、2020年7月に遡る。以前から、お腹の特定の部分が動けないほど痛くなるときがあった。病院へ行ったこともあるが、原因は不明だった。

そして4度目の腹痛のとき、「なにか大病なのでは」という考えが頭をよぎった。その瞬間、はじめて自分と死が結びつき、不安と恐怖がからだを駆け巡って、徐々に息ができなくなっていく感覚に襲われた。

混乱し、正常な思考ができなくなっていくなかで、数秒後の命の危機を感じた結果、躊躇いながらも119番へ電話した。今思えばあれは、『パニック発作』だったのだと思う。(119番後、病院で検査し腹痛の原因が分かったが、大げさに騒いだわりに大したことではなく、恥ずかしい気持ちがあるのでここでは割愛する)

『動悸、息切れ、ふるえ、しびれ、冷や汗、吐き気、めまいやふらつき、悪寒やのぼせ、窒息しそうな息苦しさ、胸の不快感、現実感のなさ、死んでしまうかもという恐怖、気が変になるかもという恐怖の13の症状のうち、4つ以上の症状が突然、発作的に始まるものをパニック発作と呼びます』

出典:NHK 健康ch


それからというもの、腹痛、頭痛、動悸、吐き気、めまい、便の状態、食欲不振、体重減少など、からだに起きるすべての不調が「大病なのではないか」という考えに繋がってしまうようになり、自分も日常もどんどん狂っていった。

1週間のうちに何回も病院へ行ったり、朝病院に行って、不安が収まらず夕方に同じ科の別の病院に行くということもあった。

緊急性があるか判断してくれる電話に何回もお世話になったり、不安があまりにも強大なため病院で医師に「大丈夫」というお墨付きをもらわないと少しも落ち着けなかった。

それでも安心はできなかったので、当然夜は眠れなくなった。今思い返すと異常だったなと思うが、このとき『心気症』だったのだと思う。

『心気症とは、医学的な診察や検査では明らかな器質的身体疾患がないにもかかわらず、ちょっとした身体的不調に対して自分が重篤な病気にかかる(かかっている)のではないかと恐れたり、既に重篤な病気にかかってしまっているという強い思い込み(専門用語で観念と言います)にとらわれる精神疾患の一つです』

出典:一般社団法人 日本小児心身医学会


【心療内科を受診】

まともに日常生活が送れなくなっていたので心療内科を予約し、数日後受診することができた。しかし症状が起きてから1ヶ月も経っていなかったから判断できなかったのか、はずれの病院だったのか大して話を聞いてくれなかった。

とりあえず、抗不安薬を頓服薬として処方してもらうことになったが、切実に助けを求めていたので期待を裏切られた結果になり、二度と行くことはなかった。

受診後も心気症の症状は続いていたし、車や電車、ライブ会場、映画館、美容院などの閉鎖的な状況だったり、自宅やファミレスでもパニック発作が出る時があったので、どこにいても予期不安に襲われていた。

他にも、外で突然意識を失ったら、寝ている間に何か起きたら、ご飯を食べて食中毒になったら、公共交通機関で事件に巻き込まれたら、約束した日に何かあったら……と考えてしまい、頭の中はいつも「どうしよう」でいっぱいだった。

不安な時に飲む用の薬なのに、過剰に副作用に怯えて服用するのを躊躇ってしまうこともまたつらかった。常に不安と恐怖心で雁字搦めになっていた。

それでも自分なりに向き合って対処していて、その甲斐あってか、何度も病院へ行ったり、予期不安はありつつもパニック発作が出ることは減っていった。

【逆戻り】

発症から1年以上経った頃には、不安や恐怖心を抱えながらの生活は続いていたが、いい変化をもたらしてくれた出来事や存在のおかげで、不安よりやりたいことや楽しいことに目を向けられるようになって、物事を前向きに考えられるようになり始めていた。

その最中、ものすごく精神的にダメージを受ける出来事が起こってしまい、1年以上ストレスにさらされていたことが拍車をかけたのだと思う。

日常的に不安と恐怖心に苛まれて、怯えながら生きる日々に逆戻りしてしまい、だんだん生きていることに苦痛を感じるようになった。

起きてる間は常に不安と恐怖心からぐるぐる思考していたので、何も考えたくない・何も感じたくないと思うようになった。食欲はなくなっていき、何が幸せなのかも分からなくなっていった。

不安や恐怖心に苦しむことなく、でかけて日々を楽しんだり、日常生活を送ったりしている人たちを羨望の眼差しで見ていた。
それと同時に劣等感も感じていて、妬み嫉む気持ちもあったので、どんどん心が荒んでいった。

日常生活に支障が出ている自覚はあったが、自分の不安は病院で診てもらう必要があるほどなのか、病院へ行って誰でも抱く程度の不安だと言われたらどうしようと悩んだり、不安や恐怖心を抱くのは自分の考え方に問題があるのでは?と思っていた部分もあったので、一歩が踏み出せずにいた。

【病的不安】

自分の考え方に問題がある可能性があるなら、まずは根本的な原因を知ろうと考えた。精神科医の方の動画を見たり、本で理解を深めていくうちに、異常なほどの不安や恐怖は脳の扁桃体という部位の働きが過剰になっていることを知った。

扁桃体は、不安や恐怖などの感情を感じた時に活動することが知られています。過度な不安や恐怖が症状であるうつ病、不安障害やPTSDといった精神疾患においては、扁桃体の活動が過剰であること知られています。

出典:国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構

脳の働きが原因なら、気の持ちようでどうにかすることはできないと思い、ようやく受診を決意した。このときには、はじめて症状が出てから約3年半が経過していた。

病院では初診だったのでじっくり問診してくれた。いろいろ話したあと、不安の程度を検査をするためのチェックシートに答えたら、出た数値が一番上のランクで、そのランクの基準値を10上回っていた。「不安が振り切ってる」と先生に言われたほどだった。

そういうわけで、現在『薬物治療中』だ。開始して3週間程経過したが、日常生活が不安や恐怖心に支配されていて、苦痛を感じ何もかもが嫌になっていた治療前と比べたら、落ち着いてきていると思う。

座っているときや動いているときも、何をするにもどんなことに対しても不安がつきまとって思い詰めていたのに、それがなくなってきているおかげで、日々を苦痛に思わなくなった。

本の文字や内容が頭に入ってこないのが改善されたり、不安で2年間できなかったことができたりもした。

あと「暇だなぁ」と思った瞬間があり、そのときその感覚がすごく久しぶりだと思った。ずっと不安や恐怖心に苛まれてぐるぐる思考していたので、暇を感じる余裕もなかったんだと思う。

日々に集中できるようになったからか、リベンジ夜ふかしをしなくなるという変化もあった。

強度と頻度は落ち着いてきているが、まだ不安になるときがあったり、中途覚醒することが気になる。でも、こんな感じで効果はちゃんと出ているので、このまま寛解を目指して治療していきたい。

1ヶ月後にはどんな変化があるのかなぁ。

いつか不安や恐怖心に苦しんでいた日々を懐かしめるといいなと思う。

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