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オアシス (2002) ネタバレあり

基本情報

『オアシス』(原題:오아시스)は、2002年公開の韓国映画。監督・脚本はイ・チャンドン(李蒼東)、主演はソル・ギョング。社会に馴染めないまま30歳を目前に出所してきたある青年と、脳性麻痺で体の不自由な女性との特異ながら純粋な恋愛と、周囲に理解されないその行方を描く。
2002年韓国MBC映画賞で最優秀作品賞、監督賞、脚本・脚色賞、主演男優賞、主演女優賞、新人女優賞を獲得。同年の第59回ヴェネツィア国際映画祭において、監督賞、新人演技賞、国際批評家協会賞などを受賞するなど高く評価された。

ログライン

ひき逃げによる刑期を終えて出所したものの周りからつまはじきにされる主人公は周囲とうまく馴染めない。そんな中、障害を持つひき逃げの被害者の娘と恋を育んでいくが、周りからは理解されない。

ストーリー

シンプルだが、その分直球で訴えかけるストーリー。
しっかりと3幕構成に則っている。残念ながら、主人公は変われなかった(それが悪いことではなく、元々主人公の持つ空気が読めない、常識的な判断ができない、という部分はどうしても変えることができない)ので、悲劇になっている。同時に、彼らを取り巻く周りの大人たちも誰一人変わることがなかったことも、悲劇を引き起こしている。これがフォレストガンプなどのいわゆる「バカの勝利」の悲劇版とも言える。
シンプルだが、身体障碍者向けのアパートを親戚に取られてしまったヒロインや、実は主人公が兄のひき逃げの罪を被って服役していたことなど、物語の見えない部分が徐々に明かされていくのは素晴らしい。
また、この主人公のキャラクター造形も演技と相まって複雑である。一見救いようのない主人公だが、本人に一貫して悪気がないところが好意的に見えるところなのだろう。
最後まで観ていくと、主人公が起こした過去の事件も、本当に起きたことなのか、というのが疑問に思えてくるところで、主人公がどんどん被害者に見えてくるのもすごいところ。(ただし冒頭でヒロインをレイプしようとしているのでやはり強姦未遂はあったのかもしれない)
主人公が更生しない、警察署を抜け出す、などはグザビエ・ドランの「マミー」に似ているかも。

演技・演出

・演技がとても素晴らしい。主人公の憎めない、だが何をしでかすかわからない不安なキャラと、身体障害者とそうではない状態をシーン内で渡り歩くヒロインの演技が本当に存在していると思わせる。
・鏡の反射が鳩だったり蝶々になる、話の中で出てきたゾウや少年が実際に出てくるような、ちょっとしたファンタジー要素がよい。
・ずっと鼻をすすっているのが特徴があってよい。夏に服役して今が冬なので半袖が寒い、というしっかりとした裏付けがある。
・警察署で、ヒロインがうまく言葉を伝えられない、そして弁解しない主人公がもどかしく、伝わってくれー!という気持ちになってしまう。

撮影

・ドキュメンタリーのような手持ち中心のカメラワークがリアリティを生んでいる。

好きだったところ

・主人公たちが「姫」「将軍」と呼び合うところ
・豆が嫌い、とかヒロインが主人公にいろいろ聞いているところ。
・木を切る主人公に警察官が「どうせあと1本だ、せいぜい頑張れよ、切ったら降りてこい」というところ。

自分だったらどう撮るか/盗めるポイント

・誤解を解いてくれ!というところで伝わらないもどかしさ
・劇中でなる音楽と木の上の主人公というノスタルジックさ、緊迫感の中のファンタジー
・リアリティとファンタジーを1シーンで行き来する視線誘導

画像引用元:
https://movie.hix05.com/Asia-Aus/korea14.oasis.html


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