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片親のカタチ

今まで何度も書いてきましたが、私はシングルマザーです。
ここフロリダ、タンパに来てからは、ご近所さんを含め日常の生活の中で日本人に出くわすことがあまりありません。
アメリカに住んで18年以上ですが、当たり前のように出くわすご近所さんや知人を通じてシングルマザーに対しての印象や考え方が日本とは大きく異なるのを感じます。

彼等1人1人が今まで私に真剣に語ってくれた話を紹介します。

<パート先の同僚の言葉>

息子が学校に行き始めて、平日の朝4時間だけうちから徒歩5分で行けるコンビニでパートしていた時、仲良くなったドイツ人(旦那さんは軍人)の同僚は私にある日突然私に言いました。

『Sue? あなた誰かデートしてる相手とかBoyfriendとかいないの?』

私はとっさに
『毎日子育てとパート、家事で寝る時間も十分に取れないぐらい忙しいから難しいかなぁ..。
 息子の父親と別れる時に私は一生1人で息子を育てていく覚悟したしね。』
と彼女に伝えました。

そうすると彼女の表情は両目を見開き、開いた口が塞がらず、驚きの表情を私に見せて言いました。

『REALLY?! WHY? それじゃあ、あなたこれから一生1人で生きていくつもりなの?! That’s crazy…(イカれてる…)』

私は『まだ息子も小さいし、障害だってあるし。そもそも私の国(日本)では子持ちで離婚歴のある女性が男と付き合うという事に対して社会があまり良い印象を持たないしね..』と言いました。

そしてまた彼女は呆れた顔をして私に言いました。

『So, what!? SUE!
    今アメリカにいるじゃん!
    誰かれ構わず男と遊び歩けって言ってるわけじゃないじゃん!
 きちんとあなたを愛してくれるいい人と出会うことの何が悪いの?
    あなたは女性としてリレーションシップを楽しむ権利がある。
    Everybody needs somebody!』

と私に熱弁してきました。
そして
ー 変な男には気をつけろ
ー 夜のバーやクラブみたいな場所で出会いを探すと悪いのに当たる
ー 男を探している時はいい出会いに恵まれないから今のままの日常を過ごしながら昼間に出会える男にしろ
ー 息子に彼氏を合わせるまではしっかり時間をかけて男を見極めろ

と言った彼女なりの策略を云々と私に伝えてきたのです。笑

実は彼女のアメリカ人の旦那さんは彼女と結婚する前に一度ご結婚されていて、前妻との間に3人の子供がいるのです。

その前妻と子供たちはノースキャロライナ州に住んでいて、彼のティーンネイジャーの息子の1人は頻繁にフロリダに父親を訪ねて会いに来るそうなのです。
この会話をして数週間後、彼女は
『今日は私のステップサンが来るからディナーの後に食べるケーキを3種類焼くのよ。
買い出しも行かなきゃ!』


と笑顔で張り切って職場を後にしていきました。

<前カノの子供3人の子育てをしていた男性の話>

彼もまたパート先に来る業者さんです。
よく世間話をする人です。
彼の元カノは3人の子持ちのシングルマザーだったそうです。
出会った頃はその3人は4歳、6歳、8歳で彼女が仕事に行き始めてからは彼が子供たちの学校の送迎、お風呂、夕飯の世話をしていたと言います。
彼女との交際は3年半続いたというので、とても長い期間、彼は子供たちの育児に関わっていたと言えます。

そのため、毎日私が息子の話をしながらいつも
『眠い…、疲れた…』
と言っている気持ちはよくわかるよと言ってくれてました。

私は感心して
『へぇー..。そりゃすごいわぁ..。
3人の子供のシングルマザーと付き合うときって何の抵抗もなかったの?』
と聞くと彼はとっさに
『ないね。全く。
 それが付き合うときの基準には全くならない。
 僕のお母さんもシングルマザーで僕と兄を連れて再婚した。
 僕にはステップファザーとステップブラザー(腹違いの父親と弟)いるし。
 本当の父親には数週間に一回今でも会ってるよ。』

と躊躇なく答えたのです。

長年アメリカに住んでいるにも関わらず、私は
(片親の恋愛や再婚の文化の違いは日本とアメリカでは比べものにならない ほど大きい)
と感心しました。

<犬の散歩友達、近所のミスリンダ>

我が家にはごまじろうという11歳の中型犬がいます。
週末は息子と犬とみんなでお散歩に行きますが、平日は息子が学校に行ってからすぐにゴマの散歩に行きます。
うちから1ブロック離れた一軒家に住むミスリンダは、ご自身の犬のチワワ、娘さんの犬のマルチーズ2匹を連れてほぼ毎日私と同じ時間帯に犬の散歩をしている”犬とも”です。
彼女も過去2度の離婚を経験した人生の先輩でもあります。
彼女は2度目のご結婚で娘さんを授かり、離婚を経験し定年退職を機にうちのご近所の家を購入したと教えてくださいました。

ミスリンダは私が娘さんと同じ年でシングルマザーであることを知った時、彼女は真剣に言いました。

『あなたは女性として、その前に1人の人間として幸せになる権利がある。
たとえルーカス(私の息子)に障害があったとしても、彼には彼の人生があるように、あなたにはあなたの人生があるということを忘れてはいけない。
心からあなたがこの先好きと言える男性に出会ったら、あなたはその時間を楽しむべき。
ただ焦っちゃいけない!
出会いを見つけるのも、出会った後も..。
今までいろんな経験をしてきたからこそ、じっくり時間をかけて育めるものがある。』

そして、笑いながら
『もしあなたに彼氏ができてルーカスが父親のうちにお泊まりに行く時は、ゴマはうちで預かるわよ。
遠慮なく言ってね。』
とウインクをしてきました。

笑顔で私は”ありがとう”と伝えましたが、現実は週に一度の息子のお泊りの日はただひたすらにゆっくりして眠るか、自分の将来のキャリアのために時間を使うのが今の現状です。


どうでしょうか..?
このようなテーマで文章を書いたからといって、私が交際相手を探しているという訳ではありません。
もし、”出会うべき人に出会うべきタイミングで出会えたとしたら” 私は彼らの言葉をきっと思い浮かべるだろうと思うのです。

ここタンパに住む数少ない日本人の知人にこの話をしたら、彼女の日本の出身地(都市部ではなく地方)で起こったことを話してきました。

とあるシングルマザーに交際相手ができ、彼が彼女の自宅に行き来するのを見た近所の人がそのことを地元の市議会委員に伝えたらしいのです。
その後、彼女に支給されていたシングルマザーが受給できるすべての公的手当が打ち切られたと…。
もちろんそのシングルマザーが虐待をしていたわけでも、育児放棄をしていたわけでもありません。

それを聞いて私は数秒言葉を失ってしまいました…。

私はその地域に住んでいるわけではないし、そのシングルマザーのご家庭がどのような環境なのかも全く知りません。
日本の細かい公的手当のルールも分かりません。
もし彼女の自宅に交際相手が出入りしただけが理由であるとしたら、一体どこの誰が、法律的に公的手当を打ち切れる権利を持っているのでしょうか?

シングルマザーが恋愛をしていたら公的手当を受給する権利がないと本気で思っている風潮があるのでしょうか?

この話は昔の日本の話ではありません。

世の中のニュースではシングルマザーと交際相手が子供を虐待して死なせてしまうというニュースも流れます。
日本だけではなくここアメリカでもステップファザーからの性的虐待や暴力を受けてしまうといった事件はたくさん、現実に存在します。

本当に子供を持つ親としては心が痛いです。

だけど今の私が言えるのは、そこまで男性に自分の居場所を追い求め、依存してしまう程の彼女達の育児の環境はとても過酷なものだったはずです。

その原因は彼女達だけのせいだと言えますか?

ご近所さんや親族、彼女を取り巻くコミュニティ全てが彼女たちに少しでも手を差し伸べていたらもっと状況は違ったと思うのは私だけでしょうか?

このような事件がニュースで流れたとして、世界中のシングルマザーたち全員が新しい交際相手ができた途端に子育てをおろそかにするのでしょうか?

私はそうは思いません。

本当に彼女たちや彼女の子供たちに正しい愛情を向けてくれるパートナーと出会った時、シングルマザーたちはきっと今まで以上に笑顔を取り戻しパートナーに大切にされた分、子供達にも愛情を注げるようになっていけると私は思うのです。
そんな出会いを見つけるのは本当に難しいと私自身が毎日生活をしていて実感するし、やはり子供がいる分きちんと理性を失うことなく相手を選ばなきゃいけないだろなと思います。

アメリカを含め西洋では離婚率が高いことは日本ではよく知られていますが、私が実際にアメリカに住んで感じることは、その分アメリカ人は何度でも新しい恋愛を楽しみ、再婚をする人が多いということ。
ミスリンダは2回ですが、3回、4回と離婚と再婚を繰り返す人も結構いますし、それが恥ずかしいことだとは本人達は思っていません。
ご高齢になったとしても、パートナーがいない高齢者は恋愛を楽しむ人が多いです。
離婚した後の子供達の父親は子供が成人しても、ずっと関係を絶たず定期的に会い続ける人たちが日本より遥かに多いです。

どんな離婚の原因があったとしてもです。
それが浮気だったり、金銭トラブルだったり、色んな原因だとしても。
子供が親に会いたいという選択を、本人に委ねる風潮があります。

人それぞれ生まれ育った環境や価値観、住んでいる環境、文化で色んな意見があるし、その分だけ色々な選択、幸せの形があります。

私を含め世界中全てのシングルマザー、又はファザーたちが過去よりもっと幸せな人生をこれから子供達と一緒に生きていけることを信じています。

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