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日記 1/22~ ユートロニカのこちら側

1/22(日)

母が体調を崩す。37℃の微熱があり、朝に数回吐いたらしい。母はほとんど外出しないので、自分と父を差し置いてコロナに感染したとは考えにくい。晩に父が職場からノロ、コロナ、インフルの検査キットを持って帰ってくるが、母何も使わない。「苺が食べたい、りんごはフジが食べたい。」と言うので明日買いにいこう。

小川哲「ユートロニカのこちら側」を読み始める。ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作ということで大学一回生の頃に買った。もう5年ぐらい前になる。大学に入りたての頃はSFが特に好きで、貴志祐介「新世界より」、伊藤計劃「虐殺器官」「ハーモニー」、フィリップ・K・ディック「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」をよく読んでいた。だからこそ小川哲は自分の中でSF作家という認識のままでいたのだけれど、最近クイズ小説?を書いたり「地図と拳」で直木賞を受賞されたりしていて、どういう作家になられているのかすごく気になる。文学的な賞を受賞されているSF作家ってなんでこんなに魅力的なんだろう。円城塔もそうだ。理系に身を置きつつも文学的な世界に憧れを抱いてしまう自分にとって、小川哲や円城塔は一つの理想形なのだと思う。

午後、彼女とエキスポシティで合流する。昼食につじ田のつけ麺を食べた。日曜日だからフードコートは家族連れが多い。特につじ田はすごい行列で注文に20分かかった。つけ汁は熱々が良いのに上の方がちょっとぬるい。冷えた麺をつけるとさらにぬるくなった。けど大盛の量が本当に大盛りだったので満足。昼食後は、ユニクロでベージュのウルトラストレッチカラージーンズを買った。服にあまりお金を使わず暗くて地味な色を好む僕をオシャレにする計画が彼女の中で進行中。三ヶ月先の誕生日プレゼントに買ってもらったMarimekkoのサーモンピンクとブルーのストライプシャツに合わせられるようなパンツを選んだ。帰り際、彼女がコーヒーを飲みたくなりスタバの行列に並んでいる間、僕だけ本屋を散策する。小川哲「地図と拳」の実物を確認。今日は安部公房の命日だったので、安部公房の文庫本がある棚の前に行く。愛読書 「砂の女」の2代目を買いそうになった。1代目はもうボロボロでページを繰るたびに崩れていくから、近いうちに買い直したい。

1/23(月)

朝起きると携帯の充電が10%。充電ができなくなっていることに気づく。携帯が使えないとインターン実習に支障をきたすので、学校は休みリペアショップに行く。この店は家族ぐるみでお世話になっている。バッテリーを変えてもらったり、直近では母がトイレに落として水没させてしまった携帯を治してもらった。今回の修理は部品交換で済む。500円まけてもらい9000円かかる。原因は判明せず、ただ塵のようなものが挿し込み口に詰まっていたらしい。運動しているかどうか尋ねられたが、身に覚えがない。個人的には風呂場に携帯を持って入っていることが原因じゃないかと思っているので、もうやめることにする。風呂場で使えるスピーカーを買ってラジオなり音楽を流そう。

小川哲「ユートロニカのこちら側」の続きを読む。個人情報を切り売りすることで働かなくても生活できる社会が実現した未来のお話。人生には適度な負荷が必要だと思うから自分なら住まないかな?この小説を読んでいると、便利さを突き詰めていけば、想像力が豊かな人を劣等とみなす世界がくるのだろうかと少し怖くなる。

1/24(火)

インターン実習3日目。データセットの前処理と可視化を大方完了させる。14時から担当指導員Sさんとの打ち合わせがあり、実習2日目と今日午前での進捗を報告する。今後の方針を説明し終えたところで、データセットの不備について確認し合った。やはり認識の齟齬があったようで何度も説明するがうまく伝わらない。自分だけの責任ではなく、向こうにも非があることは確かなのだが、そんなことをバカ正直に指摘できない。Sさんはかなり地位の高いお方。優しそうな声をお持ちなのに真顔で、競争社会を勝ち抜くことで備わった冷たさを奥に秘めている。だからちょっと怖い。とにかく自分の非を謝る。ただ謙虚になりすぎて逆に神経を逆撫でするような謝り方になってしまった。社会人としての慣れない言葉遣いや礼儀作法などに雁字搦めにされてうまく自分を出せない。苦しいけどだからこそインターンを受けてよかったと言える。自分に足りない部分がハッキリする。

19時から大阪でバンド練習があったので、16時に実習を終え家を出る。西日が眩しく感じられるぐらいには晴れているが、京都の方面はだいぶ雲行きが怪しい。少し紫がかった色をしており不穏。母は「今日の練習はやめといた方がええよ。帰れんくなるで。」と何度も忠告してきたが、それを振り切って練習に行く。電車は遅延していなかったが、京都までの経路を半分過ぎたあたりで止まる。気づけば外は大吹雪。アナウンスで踏切内での自動車の脱輪、倒竹など次々と問題が発生していることが伝えられる。どうも今日の練習はたとえ行けたとしても帰ってこれなくなりそうだったので、LINEグループで休むことを報告。「京都はそんなに降ってるん?」と聞かれたので、雪国のように吹雪いている動画を送る。「大阪はエモい感じに降ってるで」とM先輩から動画が送られてくる。すごく平和な雪降りだった。ただ帰ると決めたはいいものの電車はなかなか動いてくれなかった。1時間ぐらい立ち往生してようやく扉が開き、違う路線の駅まで歩くことに。心が挫けそうな寒さだった。今日に限ってマフラーを忘れていたので、寒さが首元から入りコートの中を駆け巡る。寒さと飢えは気を滅入らせる。自宅には無事帰れた。

1/25(水)

昨日の大雪で最寄りの路線は運転見合わせ。今日は学校に行かないことにした。どうせ無理だろうなと昨日の夜から予感していたため、いつもより遅めの起床。朝早く起きれるかどうかは寝る前の心構えによって決まるものだ。ニュースによるとJR京都線では、電車に9時間閉じ込められるという事態が起こっていたらしい。昨日あのままバンド練習をしに大阪へ向かっていたら確実に帰ってこれなかった。引き返して本当によかった。大いなる存在に感謝。

今日は家でぬくぬくと明日の勉強会で議論するグラフマイニングの論文を読む。スロベニアの方が書いた英語論文だから文法や構成が独特で少し読みづらかった。息抜きに小川哲「ユートロニカのこちら側」の続きを読んだ。

「責任を取ることは、人間に残された美点の最後の砦だからな。」
小川哲「ユートロニカのこちら側」

もし責任を取れるAIができたとすれば、それはどんなAIだろうと考える。今は説明可能なAI (XAI)という技術が活発に研究されているが、これはブラックボックスなAIが下した判断の根拠を人間にも理解できるようにする技術であって、この技術の延長線上に責任を取れるAIがあるとは思えない。個人的に責任を取れるAIというのは、そのAI自身に生活があり人生があるようなAIだと思う。つまりは何か失うものを持っているということ。人間においても失うものがない者に責任を取ることはできない。けどそんなAIができてしまえば、それは一つの完成形と言ってもよいかもしれない。

1/26(木)

雪解けの通学路を歩く。いつもの風景も雪があるだけでまるで別の場所のように感じる。どこを見渡しても写真に収めたくなる景色にする雪ってすごい。

午前10時から勉強会。今日議論するグラフマイニングの論文を読みきれなかったので、自分は発表せず他の人の発表を見る。自分的には難しい内容だったのだけれど、D1のN先輩が「これはちょっと簡単だったかな」と言っていてショックを受けた。周りと比べて自分の学力は低いのだから、人一倍努力しなければと肝に銘じる。

1月からS研究室で活動をするようになって、またタバコを吸うようになった。S研で吸う人はSさんただ一人。普段学校で吸わないから知らなかったけれど、キャンパス内にあるコンビニにはどこにもタバコが売っていない。その事実を了解するまで無駄に歩いてしまった。今日は18000歩、距離にして14kmほど歩いた。タバコは結局学外のローソンで買った。ハイライトメンソールを買う。爽快感はあるが好みじゃない臭いがいつまでも残って不快。ほんのりとラム酒香るレギュラーがやはり好き。

1/27(金)

インターン実習4日目。元データから3次元テンソルの作成、タイムゾーンの変更、欠損値の処理など前処理を完了させ、参考になりそうな論文の手法を適用させることに成功。なんとか結果を出すことができたがその解釈は一旦保留。とりあえずは手法の根幹技術である「崩壊型ギブスサンプリング」を理解するために、基本的な確率分布のおさらいした。ベルヌーイ分布やベータ分布、カテゴリ分布やディリクレ分布について簡単に振り返った。

インターン後は漫画を読み漁る。ワンパンマン、超人X、チルドレン、少年のアビス。最近あまりビビッとくる漫画に出会えていない。今の自分が心の底から続きを楽しみにしている漫画はワンピースとメイドインアビスぐらい。メイドインアビスは去年6月に最新話を更新してから音沙汰なし。不定期更新にも限度があると思う。

つい先日携帯を故障させたので、風呂場に携帯を持ち込まないようになった。その代わり、入浴中に俳句を作ろうと思い立つ。できた句がこれ。

正直これが俳句と呼べるものなのかよくわかっていない。人情よりも自然を詠んだ句だから一応俳句としている。

1/28(土)

AI・データサイエンス概論講座2日目。先週1日目を受けた率直な感想は「もう受けなくてもいいかな?」だったのに、今日の講義はじっくりと聴けばすごく面白くて学びのある講義だった。CNN(畳み込みニューラルネットワーク)や物体検出の発展的な内容を扱ったものだったため、知らないことが多く自学自習をする上で良い情報もたくさん知れた。1日目を受けてあまり価値が感じられないとか思って本当にごめんなさい。どんな授業であろうと受ける側の態度が一番大事だということを反省した。来週の講義ではGAN(敵対的生成ネットワーク)などを扱うらしく、それもすごく楽しみだ。今日の講義は6時間あったが、肩より少し下ぐらいの高さのテレビ台にPCをおき、経ちながら受けた。足がだるくなって何度か座ったりもしたが、立ちながらの作業は集中力が永遠と続く。スタンディングディスクの購入を検討したくなった。

小川哲「ユートロニカのこちら側」読了。ちょうど一週間で読み切ることができた。初めはアニメPSYCHO-PASSと似たような設定にがっかりしてしまう部分があったが、読み進めていくほどにこの小説ならではのテーマが浮き彫りになってきて面白かった。正義と悪、自由と不自由、意識と無意識、ディストピアとユートピアといった二項対立が不毛なもののように感じられる、哲学的な内容を扱ったSF作品。次はゲームの王国でも読もうかな。小川哲さんのミステリアスな趣のある顔が好き。

風呂場のシャワーの取手が取れるようになる。何度も付け直しては水圧に押されイルカショーのように飛び跳ねる。そしてけたたましい音とともに床を転がる。ムカつく。諦めて取れたままで体を流す。今日も湯船に浸かりながら一句考えた。


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