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過呼吸になったら?紙袋は危険らしいよ?

過呼吸。医学的には過換気症候群。
なったことがある人は分かるだろうが、いざなってみると結構しんどい。
落ち着いている時には分かるよ、ゆっくり呼吸をすればよいと。
でも発作が起きている時、もう苦しくて苦しくてパニック状態。
病院に行っても、「ゆっくり呼吸してね」と言われて、落ち着くまでベッドで寝かされるだけなのもわかるけれど、それでも救急車を呼んでしまう気持ちも分かる。

治すには?

結論、ゆっくりと呼吸するしかない。
でもこれが難しい。
誰かが隣にいて、落ち着くように声をかけてくれる状況ならまだしも。
周りに人がいなくて、1人の場合は特に難しい。
なので、もし呼吸が早くなってきたら、我慢せずに助けをよぶことが大事。

過呼吸を治す方法として、『ペーパーバッグ法』というものを聞いたことがある人もいるだろう。過呼吸の問題は酸素を吸いすぎて二酸化炭素が少なくなっていることにあるので、紙袋を口に当て一旦吐いた息を再度吸わせることで、血液中の二酸化炭素濃度を上昇させる方法がある。手軽に行えること、自分一人で出来ることから、以前は過呼吸の改善に勧められていた。漫画などで読んだことがある人もいるだろう。
しかし、このペーパーバッグ法、実は低酸素血症を助長し、生命の危険もあるということが分かってきた。

過呼吸からの回復してくる時に、低換気となることが報告されており、この低換気が急激に起こって無呼吸となる場合がある。これを過換気後無呼吸(Posthyperventilation Apnea:PHA)と呼ぶが、このPHAにより低酸素状態に陥ってしまうことがあるのだ。また、ペーパーバッグ法そのものが低酸素状態を誘発したり、ペーパーバッグ法によって高まった二酸化炭素濃度を是正するために再度過呼吸が誘発される負のループに陥ることもある(1)。

もしどうしてもペーパーバッグ法を行うとしたら、酸素の値などを測定できる病院で、医師や看護師が見ているときが望ましい。

パニックに陥ったとき、何かいい薬はないの?

落ち着いて呼吸をしろ、と言われても無理なものは無理である。
なので、一番はストレスをためず、不安な気持ちを少しでも減らして予防することである。もし過呼吸を繰り返すようならパニック障害などの病気が隠れていることもあるため、精神科を受診して、不安に対する薬を処方してもらうのがよいだろう。

ではどのような薬が処方されるか?
下記の参考文献(2)に記載されていた処方内容を紹介する。

<突然不安が襲ってきた場合> 

アルプラゾラム(ソラナックス®、コンスタン®)
:ベンゾジアゼピン系抗不安薬である。1回0.4mgを1日3回まで内服できる。ただし、連続して内服するなら、30分間を空ける必要がある。 

<日常的に不安を感じている場合>

①ロフラゼプ酸エチル(メイラックス®)、1回1~2mgを夕食後に内服。
②パロキセチン10~30mg+モサプリド5mgを夕食後に内服。  
*投与は1回10mgより開始し、原則として1週ごとに10mg/日ずつ増量。
③セルトラリン25~100mg+ガスモチン5mgを夕食後に内服。
*投与は1回25mgより開始し、原則として1週ごとに25mg/日ずつ増量。
④エスシタロプラム10~20mg+ガスモチン5mgを夕食後に内服。
*投与は1回10mgより開始する。

過呼吸で救急外来を受診したらどうなる?

もし周りに助けを求められる人がおらず、救急外来を受診したらどうなるのだろうか?

初めに、意外と多いパターンを紹介しよう。
それは、「診察の順番になる頃には過呼吸が治っている」である。救急車を呼んだ場合、救急車が到着する頃にはだいぶ落ち着いていたという話もよく聞く。病院が近くにあるなら、受診しなくても病院に来た、という安心感で治まることもあるので、行ってみるのもアリかもしれない。

病院ついても過呼吸が続いている場合、医者や看護師から「ゆっくり呼吸してね」と言われるだろう。15分ほど様子を見ても改善しない場合、注射が行われる。具体的にはジアゼパムを2.5~5mg(筋注もしくは静注)、ヒドロキシジン塩酸塩(アタラックスP®)を12.5~25mg(筋注もしくは静注)が行われることが多い。

ちなみに、「そんな様子を見てないで、とりあえず注射してくれよ」と思う人もいるだろうが、どんな薬にも副作用があるので、使わなくてもいい人には使いたくないのだ。

参考文献

1)黒木崇子氏ら、水泳中の自発的な過換気が無呼吸を誘発したと考えられた一例、水と健康医学研究会誌23巻1号、P.77-80

2)井上真一郎氏、しくじりから学ぶ精神科薬の使い方 パニック発作、レジデントノート23巻16号、Page2743-2750



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