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腰痛者の筋シナジー

📖 文献情報 と 抄録和訳

慢性腰痛患者における調整戦略の変化としての筋シナジーパターン:横断的研究

📕Saito, H., Yokoyama, H., Sasaki, A. et al. Muscle synergy patterns as altered coordination strategies in individuals with chronic low back pain: a cross-sectional study. J NeuroEngineering Rehabil 20, 69 (2023). https://doi.org/10.1186/s12984-023-01190-z
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[背景・目的] 慢性腰痛症(chronic low back pain, CLBP)は、非常に一般的な疾患であるが、その根本的なメカニズムは十分に解明されていない。特に、特定の体幹タスクに対応する体幹筋の協調性の変化については、まだほとんど知られていない。

[方法] 健常者(女性8名、男性7名、年齢21. 3 (20.1-22.8) ± 0.6歳)とCLBP15名(女性8名、男性7名、年齢20. 9 (20.2-22.6) ± 0.7歳)を対象に、背部および腹部12筋(片側6筋)の表面筋電図活動を記録し、11の体幹運動・安定性タスクにおける筋シナジーを調査したものである。筋シナジーを抽出するために、非負行列因数分解を実施した。

[結果] 両群で5-6つの体幹筋シナジーと時間的パターンが見出された。

両群の体幹シナジーと時間的パターンの高い類似性から、両群は体幹の調整戦略という共通の特徴を有していることが示唆された。また、腰部脊柱起立筋に関連する体幹シナジーは、CLBP群では変動が小さいことがわかった。これは、CLBPの固定構造において、体幹シナジーを再形成する背筋が低下していることを反映していると考えられる。

さらに、CLBP群の体幹安定課題で活性化された広背筋や外斜筋などの他の筋領域における体幹シナジーの高い変動性は、体幹課題が高負荷である場合に、より個人的な運動戦略を表していると考えられた。

[結論] 本研究は、持続性CLBPの存在下で、体幹シナジーと時間パターンの全体構造を維持しながら、個人のモジュール編成が微調整されることを初めて実証するものである。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

積み木でつくられた城と、1個1個のブロックのランダムな集合は違う。
1曲を奏でることと、一本一本の腱板をランダムに叩くことは違う。
歩くことと、膝伸展だけを意識的に行うことは違う。

近年、筋シナジー関連の研究が急増しており、文献抄読でもいくつか扱った(⬇︎ 関連 note✨参照)。
筋シナジーとは多数の筋の活動に見られる協調構造を意味しており、端的に言えば複数の筋の同時活動のことである。
つまり、複数筋に指令が共同入力された運動、と言える。

この論文では、非腰痛者と腰痛者の筋シナジーを明らかにし、両者が似ていること、腰痛者では脊柱起立筋の変動が少ないことを明らかにした。
僕は、この後者に注目したい。
腰痛者は、姿勢変動を引き起こすのが苦手な印象がある。
先行研究においても、慢性腰痛のある人は、痛みのない人に比べて、より静的な座り方をする傾向が見られた(📕Bontrup, 2019 >>> doi.)。
例えば、猫背(他動的聴力)、中間位から伸展位(自動的張力)での支持機構を切り替えることが難しくなっている方が多いと感じる。

今回の変動が少ないことは、その側面を反映した結果といえるのではないか。
理学療法士としては、姿勢変動が存在すること、それを切り替えることで負荷を分散できる可能性をしっかり指導していこうと思う。

⬇︎ 関連 note✨

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