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生活保護の受給。終了するとこうなる

📖 文献情報 と 抄録和訳

日本の高齢者集団における生活保護の開始と終了による社会的関係の変化。JAGESパネル研究

Kino, Shiho, et al. "Changes in social relationships by the initiation and termination of public assistance in the older Japanese population: A JAGES panel study." Social Science & Medicine 293 (2022): 114661.

🔗 DOI, PubMed, Google Scholar

🔑 Key points
-生活保護をやめた人ほど、友人と会う頻度が高い。
-生活保護をやめると、友達の数が増える。
-生活保護をやめると、より頻繁に社会的なクラブに参加するようになる。
-生活保護を受け始めても、以前から持っていたものには影響がない。

[背景・目的] 日本の生活保護受給者は、社会福祉によって経済的な力を得ているが、同時に社会的なスティグマにもさらされている。そのため、生活保護受給の状況が変わると、社会生活の状況も変化する可能性が高い。そこで、生活保護を受けている高齢者の社会的関係が、生活保護の利用開始と利用終了のいずれかによって影響を受けるかどうかを検討した。

[方法] 本研究では、2013年から2016年までの日本老年学的評価研究パネルデータを用いた。社会的関係の測定には、「友人と会う頻度」「過去1か月に会った友人の数」「スポーツクラブへの参加頻度」「趣味のクラブへの参加頻度」の4つの指標を用いた。分析では、2013年から2016年までの社会関係の変化を研究成果として用いた。線形回帰分析を行い、交絡因子で調整しながら、生活保護開始前と終了後に社会的関係が変化したかどうかを検討した。

[結果] その結果、生活保護をやめた人は、生活保護を受け続けた人に比べて、友人と会う頻度(係数:0.56、95%CI:0.06、1.07)、友人の数(係数:0.60、95%CI:0.20、0.99)、スポーツクラブへの参加(係数:0.91、95%CI:0.46、1.39)、趣味サークルへの参加(係数:0.70、95%CI:0.26、1.13)などが増加することがわかった。一方、生活保護受給開始後も、測定された社会的関係性は変化しなかった。生活保護の受給を終了すると、インフォーマルな付き合いや社会参加が増えるが、生活保護を開始すると、既存の人間関係が中断されないということが主な発見であった。

[結論] これらの結果は、生活保護受給の終了と受給開始のいずれによっても、社会的関係が否定的に影響されないことを追加し、文献に貢献するものである。社会的つながりの促進を目標とすることで、低所得高齢者の健康状態を効果的に維持することができるだろう。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

必要は発明の母。
生きる上での社会的関係ということにおいても、例外ではないらしい。
生活保護を終了した人は、社会的関係が増加するという。
生きる必要があるから、生きるのだ。
生活保護の受給は、生きる必要の一部に日陰をつくっているのかもしれない。
自立の萌芽、その生長に必要不可欠な陽の光を遮って。
生命は、その障壁、阻害因子が取り除かれれば、勝手に生い茂るものだろう。
春〜夏、この時期の庭が、それを教えてくれる最良の先生だ。

Takerでなく、Giverであることが認知機能の低下を防ぐ

以前、受動的な社会的関係(Taker)与える社会的関係(Giver)について抄読した。

Takerをつくる要因は、本人内のみならず、社会的環境にもある。
生活保護などは、まさにそれかもしれない。
生活保護を終了すると、Giver(社会参加)に近づくのだから。
生活保護という仕組みが、Takerの温床になってしまう危険性もある。

守ること、自立すること。
両者の関係性は、とても微妙なバランスにある気がする。
とくに、自立と非自立の境目にいる人々にとっては。
その人たちにとっては、守られるほどに自立しにくくなるが、かといって全く守らなくてもいいほどに完全には自立はしていない。
そのボーダーラインにおいて、どのような関わり、どのような社会資源、どのようなリハビリテーションが最適解となるのか。
少なくも、過保護は障壁となり、保護の終了が外向きの矢印を生むことは刻もう。
あとは、勉強を続け、答えに近づけ。

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