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距骨骨折と3つの雑学

📖 文献情報 と 抄録和訳

距骨骨折の治療の歴史:ダリウス王の崩御からガリバルディの銃弾まで、そして最も初期の手術戦略から現在の手術戦略まで

📕Biz, Carlo, et al. "History of the management of talar fractures: from the fall of king Darius to Garibaldi’s bullet and from the earliest to current operative strategies." International Orthopaedics (2023): 1-10. https://doi.org/10.1007/s00264-023-05766-1
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[背景・目的] この歴史的レビューは、古代における距骨の重要な役割を明らかにし、歴史上における距骨骨折の管理に関する複数の試みを要約することを目的としている。

[方法] 考古学的、宗教的、芸術的、文学的、歴史的、科学的な記録から、さまざまな時代の距骨骨折とその治療法についての記述を探し、現在に至るまでの外傷治療の進化を徹底的に分析する。

[結果]
■雑学①:名前の由来
・ラテン語で「距骨」という名称は、ギリシャやローマでは、四面体の形をした「ナックルボーン」や「アンクルボーン」がゲームのダイスとして使われていたことから、「足首の骨」と「ダイス」の意味を同時に持つ。
・ラテン語文献では、距骨という言葉はプラウトゥスの「Miles Gloriosus」で初めて記録されており、足首の一部とゲームのサイコロという二重の意味で使われている。
・モンゴル人などは動物の距骨をサイコロとして占いに使っていたらしい。

■雑学②:初めて記述された距骨骨折
・ダリウス1世の怪我:ギリシャの歴史家は、ペルシャの王ダリウス1世(紀元前6年)の物語を語っている。狩りの最中、ダリウス王は乱暴に馬から降り、足首をひどく捻挫してアストラガルスの距骨の脱臼骨折をした。
・宮廷にいた賢明で有名なエジプトの医師は、7日7晩眠れないほどの射るような痛みを治すことができなかったので、ダリウスの宮廷にいた奴隷だったギリシャ人の医師デモケデスは、王のためにギリシャ人の治療を提案した
・その後、足の捻転運動は臨床状態を悪化させ、痛みを増大させ、ダリウス王の眠りを奪い、結果として彼らに死の宣告をすることになった。

■雑学③:魔術師シモンと使徒ペテロとの衝突
・聖書に登場する人物である。
・サマリアの魔術師で、通称「魔術師シモン」Simon Magus。魔術を行ってサマリアの人々を驚かせ、「彼は神の力だ。大能とよばれる神の力だ」といわれていた。
・シモンは魔術を披露していたが、自分が神であることを証明するために、空中に浮き上がったのである。使徒ペテロが神に祈り、その飛行を止めたところ、シモンは空中で停止して落下し、「距骨」(タルス)を骨折したと報告されている

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

距骨。
人体の中でもたった1つの骨なのに、なぜかこんなにも注目されている。
僕も大学時代に、距骨に関していくつかのエピソードを持っている。

まず、大学時代に、授業中、先生からとある骨を手渡された。
「それは、オオカミの距骨です」
みんな、「おお!」となっていたが、今思えば、なぜに距骨なのだろう?
おそらく、その先生はモンゴルに精通していた先生なので、雑学①であったようにサイコロとしてお土産で売っていたりしたのかもしれない。

そして、もう1つは実習中。
バイザーから「足関節背屈の制限因子は何だと思う」と聞かれ、
「下腿三頭筋です」と、僕は答えた。
それに対して、「半分正解、半分不正解」と言われた。
その先生は、「距骨の形状(距骨滑車)と脛腓関節について考えてみて」といった。
距骨滑車は、前方が広く、後方が狭い。
それに対して、遠位脛腓関節は“ほぞ継ぎ状”の形態をしている。
そのため、背屈しようとすると脛腓関節が押し広げられようとするため、止まると。
・・・。
嵐の後に、光明が差したような感覚だった。

今回の論文によって、距骨は歴史上様々に注目されてきた骨であることを知った。
感じたのは、やはり知ることは、そのこと自体が面白いということ。
距骨には、ロマンがある。

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