見出し画像

“臨床マンネリ化”の実態。3年目までに64%のPT/OTのEBPが低下

📖 文献情報 と 抄録和訳

作業療法士と理学療法士のエビデンスに基づく実践が時間の経過とともに進化するかどうか、またどのように進化するかを探求する: 縦断的な混合法の国内研究

📕Iqbal, Muhammad Zafar, et al. "Exploring if and how evidence-based practice of occupational and physical therapists evolves over time: A longitudinal mixed methods national study." Plos one 18.3 (2023): e0283860. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0283860
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> Connected Papers
※ Connected Papersとは? >>> note.

[背景・目的] 作業療法士(occupational therapists, OT)および理学療法士(physiotherapists, PT)は、障害を持つ人々にエビデンスに基づいたサービスを提供することが期待されています。専門職の入門課程や専門機関がエビデンスに基づく実践(EBP)を重視しているにもかかわらず、入職時や経年変化における彼らのEBP能力、あるいはEBPの使用に影響を与える要因についてはほとんど知られていない。本研究の目的は、カナダのOTとPTの卒業後3年間のEBPの推移を測定し、理解すること、および個人と組織の要因がEBPの継続的使用にどのように影響するかを理解することである。

[方法] 縦断的、混合法逐次説明型研究である。6つのEBP構成要素(知識、態度、自信、資源、EBPの利用、根拠に基づく活動)を測定する調査票を毎年実施し、その後、調査参加者のサブセットとフォーカスグループディスカッションを実施した。さらに、EBPの経時的な軌跡を明らかにするために、グループベースの軌跡モデリングと、理論的ドメインフレームワークに基づく質的データの内容分析を実施した。

[結果] 2016-2017年の卒業生1700人のうち、ベースライン(T0)(=卒業時)に257人(回答率=15%)が回答し、タイムポイント1(T1:実践1年)、タイムポイント2(T2:実践2年)、タイムポイント3(T3:実践3年)にそれぞれ83(定着率=32%)、75(定着率=29%)、74(定着率=29%)が参加した。

■ 定量的データ
・グループベースの軌跡モデリングにより、EBPの使用に関する4つのユニークなグループ軌跡が示された。
64%以上の参加者(2つの軌跡;Group1, 3)は、時間の経過とともにEBPの使用が減少していることが示された。
EBP を高度に使用するための最も強力な方法は、EBP に対して非常に積極的な態度を取ることだったが、それだけでは時間の経過とともに EBP の使用が減少するのを避けるのに十分ではないようだった。

■ 定性的データ
・15人の実務家(OT7人、PT8人)が、フォーカスグループのディスカッションに参加した。
個人的な経験、同僚との経験、クライアントのニーズと期待、資源の利用可能性がEBPに最も影響を与えると認識されていた。

[結論] EBPの減少は懸念されるが、この減少が臨床的に意味があるのかどうか、専門的な知識によってこのような減少を相殺できるのかどうかは不明である。教育、実践、政策においてEBPを推進するという共通の目標に向けた利害関係者の取り組みが必要である。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

「経験年数重ねたやつは、殻破ろうと意志的に努力をしなければならんぞ」

自戒を込めて、経験年数3-10年目くらいのスタッフとよく話すことだ。
基礎代謝の獲得までは、人は勉強すると思っている。
臨床という大海原に出た新人は、以下のようなプロセスを辿ることが多い。

①未知との遭遇期
・状況:職務が求める基準に、知識/能力が遥かに至らない
・行動:一生懸命に勉強する
②マンネリ進行期
・状況:職務が求める基準に知識/能力が足りない状態が続くが、不足は小さくなる
・行動:ある程度勉強する
③マンネリ完成期
・状況:職務が求める基準に知識/能力が満ちる
・行動:勉強する必要性低下→勉強しなくなる

これは、悲しいことだ。
臨床で疑問を発見→勉強や練習→生長→患者貢献→新たな疑問の発見→…。
この臨床生長ループを回しながら、自分も患者も生長する、お互いに生き生きと輝く。
そんな姿を思い抱いて、理学療法士・作業療法士になった、その夢を叶えたのに。
だが、ここで感じることは、『そうならない人間もいる』ということ。
今回の研究の結果においても、勉強し続ける人間(Group4)が16.2%はいる。

その違いは何か?
今回の研究において示唆されたのは、『EBP使用に対する意欲』が大切であるということ。
ここからは、完全に僕の考察になる。
仕事は、Labor、Job/Work、Playに3分類できる。

そして、マンネリ化への道に入るかどうかの境界線は、PlayとJob/Workの間にあると思っている。
その大きな違いは、Playにおいてのみ、目的と行動が一致していること & 外的基準は関係ないことだ。
目的と行動が一致しているとは、つまり「理学療法をやりたいから、理学療法をやる」ということ。
Job/Workは、「お金のためにトントンな理学療法をやる」。
Laborは、「お金のために最低限度の理学療法をやる」。
臨床をPlayする人間は、サッカー少年がいつまでもボールを蹴ることに没頭し止めようとしないように、理学療法を追求することに没頭するだろう。
Job~Laborする人間は、対価が得られなければ理学療法をせず、対価と相応の理学療法しかしないだろう。
自然、Playする人間は外的基準と関係なく発展し続け、Job~Laborする人間は外的基準が求めるもの以上の発展は見込めない。
結論、臨床をPlayできる人間はマンネリ化せず、臨床をJob/Work/Laborとする人間はマンネリ化する。

新人の皆さん。ベテランの皆さん。
あなたにとっての理学療法・作業療法とは、何ですか?
それは、何か他のものを得るための手段ですか?
それとも、それ自体に没頭し、それ自体を深めることが楽しい天職ですか?
僕たちは、理学療法士、作業療法士に「なり」ました。
夢を叶えたわけです。
なのに、なぜそんなにうつろな目をしているのですか?
思い描いた仕事像と、今、目の前の現実にギャップがあるのはなぜですか?
ギャップがあり続けているのに、それについて真剣に考えないのは、なぜですか?

「相応の対価」、という言葉が僕は好きではない。
対価は、仕事を仕事以上のものにすることを、しばしば阻むからだ。
最低限の生活が担保された後は、生命を謳歌することに向かおうではないか!
その尺度は、もちろん、金銭ではないであろう。

なぜあなたは書くのか?
→書きたいから

ジョンアッシュベリー

はじめて人前で歌ったとき
とても楽しかったです
賞金とかご褒美とか
そういうのではないんです
歌うのが好きだったから
自分のために歌っただけです
歌えるだけで幸せだったんです

テレサテン

●“勝手に学ぶ人”→非マンネリ化、“期待されて学ぶ人”→マンネリ化

勝手に学ぶ人、期待されて学ぶ人。
このNamingは秀逸すぎる。
おそらく、臨床マンネリ化と重要な関わりを示す概念だと思う。

⬇︎ 𝕏での投稿✨

○●━━━━━━━━━━━・・・‥ ‥ ‥ ‥
良質なリハ医学関連・英論文抄読『アリ:ARI』
こちらから♪
↓↓↓

‥ ‥ ‥ ‥・・・━━━━━━━━━━━●○
#️⃣ #理学療法 #臨床研究 #研究 #リハビリテーション #英論文 #文献抄読 #英文抄読 #エビデンス #サイエンス #毎日更新 #最近の学び

この記事が参加している募集

最近の学び