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転倒のバミューダトライアングル。3つとも満たすと転倒4.3倍,骨折2.5倍!

📖 文献情報 と 抄録和訳

起立性低血圧、認知障害、移動能力の低下という「バミューダトライアングル」:The Irish Longitudinal Study on Ageingにおける転倒・骨折との前向きな関連性

📕Donnell, Desmond O., et al. "The ‘Bermuda Triangle’ of orthostatic hypotension, cognitive impairment and reduced mobility: prospective associations with falls and fractures in The Irish Longitudinal Study on Ageing." Age and ageing 52.2 (2023): afad005. https://doi.org/10.1093/ageing/afad005
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✅ 前提知識:バミューダトライアングルとは?
・別名:魔の三角海域
・マイアミ、バミューダ諸島、プエルトリコの3地点に囲まれた三角形の海域のことである。
・伝説では、多くの人や船舶や航空機がこの海域で忽然と姿を消したとされている

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[背景・目的] 起立性低血圧(orthostatic hypotension, OH)認知障害(cognitive impairment, CI)移動障害(mobility impairment, MI)は、転倒した高齢者にしばしば併発する。本研究では、65歳以上の地域生活者の大規模コホートにおいて、8年間の追跡調査により、これら3つの老年症候群のクラスター化を検討し、将来の転倒・骨折との関係を明らかにする。

[方法] OHは、収縮期血圧の20mmHg以上の低下(座位から立位まで)および/または起立性不安定を報告することと定義された。CIは、Mini Mental State Examination ≦ 24、および/または、自己申告による記憶力がまあまあ/悪いと定義された。三者間相互作用を含むロジスティック回帰モデルにより、将来の転倒(説明できるもの、できないもの)および骨折との縦断的関連性を評価した。

[結果] 参加者のほぼ10%(88/2,108人)が3つのバミューダ症候群をすべて持っていた。参加者の5分の1が追跡調査中に原因不明の転倒を経験し、1/10が骨折を経験した。バミューダ症候群の数が増えるにつれて、原因不明の転倒や骨折の発生との間に段階的な関係が見られた。完全調整モデルでは、OH、CI、MIのクラスターは、原因不明の転倒(オッズ比(OR) 4.33(2.59-7.24);P < 0.001)および骨折(OR 2.51(1.26-4.98);P = 0.045) と最も強く関連していた。原因不明の転倒と有意に関連する他のクラスターは、OH、CIとMI、MIとOH、CIとOHであった。その他のクラスターは、骨折と関連していなかった。

[考察] OH、CI、MIの「バミューダトライアングル」は、地域在住高齢者の将来の原因不明の転倒や骨折と独立して関連していた。このシンプルなリスク識別スキームは、地域在住高齢者の多面的な転倒予防戦略の理想的なターゲットとなる可能性がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

「転んだけど、怪我をしなかった」

退院後の患者さんと話をすると、以上のように話される方が多い。
転倒することと、骨折することは、地続きのようでいて、一種質の違うことなのだろうと漠然と感じていた。
そして、今回の論文を抄読して、ぼんやりした感じが輪郭を持ってきた。

結果の図を見てみると、転倒はバミューダ三角を満たすほど増加するという線形の関係性を持っていたが、骨折は三角をすべて満たした時にドカっと骨折リスクが増すような非線形の関係性を示した。
これは、以下のようなことを示しているのではないか?

例①:移動障害だけ有しているが、起立性低血圧と認知機能障害を有さない
→転倒したとしても、用心しているから意識的防御を伴ったゆっくりとした転倒になる

例②:認知機能障害を有しているが、移動障害と起立性低血圧は有さない
→危険認識が乏しく転倒しやすいが、移動能力は保たれているのでステップ反応や防御反応などの衝撃回避動作を取れる

つまり、バミューダ三角すべてを満たすと、「強大な衝撃力」を伴う転倒をしやすいのではないか。
最近の担当患者の中で、このバミューダ三角すべてを満たす患者が何人かいるが、確かに彼らは転ぶとすれば大きな衝撃力を伴い、防御反応が少ない転び方をするだろうと思う。
転倒のバミューダ三角…、『魔の機能領域』だ。

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