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TRIPOD-SRMA。臨床予測モデルのシステマティックレビュー・メタアナリシスの報告ガイドライン


📖 文献情報 と 抄録和訳

個人の予後または診断に関する多変量予測モデルの透明性のある報告:システマティックレビューとメタアナリシスのためのチェックリスト(TRIPOD-SRMA)

📕Snell, Kym IE, et al. "Transparent reporting of multivariable prediction models for individual prognosis or diagnosis: checklist for systematic reviews and meta-analyses (TRIPOD-SRMA)." bmj 381 (2023). https://doi.org/10.1136/bmj-2022-073538
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✅ 前提知識:臨床予測モデル関連の報告ガイドラインなど一覧💡
■TRIPOD:https://www.tripod-statement.org/about/
■PROBAST:https://www.probast.org
■CHARMS:https://doi.org/10.1371/journal.pmed.1001744
■Cochrane PMG:https://methods.cochrane.org/prognosis/
■[NEW❗️] TRIPOD-SRMA:https://doi.org/10.1136/bmj-2022-073538

[TRIPOD-SRMA 概要] 予測モデル研究のシステマティックレビューとメタアナリシスのための最初の報告ガイドラインである。TRIPOD-SRMAには26の項目があり、これまでの報告ガイドライン(特にPRISMAとTRIPOD)をベースにしている。

■ TRIPOD-SRMAの26項目

■ TRIPOD-Abstractの12項目

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

TRIPOD-SRMAの注目ポイントについて考えてみたい。
最近、僕たちの研究グループが行ったSRはTRIPOD-SRMAの少なくとも『ある部分』を満たしていない。

それは、『統合方法 Synthesis (方法:12a, 12b, 12c;結果:18a, 18b, 18c)』である。
僕たちは、各モデルのバイアスリスクをPROBAST(🌱note.)を用いて評価したが、それらを満たしていないことをもって、極端にいえば『課題を有した、不十分なモデル』とみなしてしまっていた。
それは、確かにバイスリスクの一部においてそうなのかもしれないが、PROBASTを完全に満たすモデルなど、実際のところ、ほとんどない。
それを満たさないことをもって、課題を有した不十分なモデルと判断することは、適当ではないことのようにも思われる。

この部分にうまく対処したのが、Nayeらの研究である(📕Naye et al. >>> doi.)。
まず、彼らは方法において、以下のように述べている。

抽出されたデータを臨床的に解釈することは容易ではない。PROBASTはバイアスのリスクと適用可能性を評価するツールであるが、臨床実践にインパクトのあるツールを選択するための価値は限られている。また、パフォーマンス指標を解釈する方法や基準(ベンチマーク)がないため、臨床医がどの予後予測モデルを使用すべきかを判断することも困難である。

このようにPROBASTの限界を認めた上で、解決方法として以下のような方法を実践している。

この限界に対処するため、われわれは、どの予後モデルが理学療法の臨床家にとって臨床的に価値があると考えられるかを決定するための、構造化された5段階の方法を提案した。予後予測モデル開発に関する現在の文献に基づき、われわれは、モデルが臨床的価値を示すために満たすべき5つの基準を特定した。
1. 適用可能性に対する懸念が低いこと。
2. パフォーマンス指標が完全に報告されていること。
3. 校正性能測定値が許容できること、または良好であること(Hosmer-Lemeshow 検定: P>0.05、Calibration slope=1、calibration intercept=0、及び/又はcalibration plotが良好又は容認可能とみなされる)。
4. 判別性能測定値は、臨床医に役立つ可能性がある場合は0.61~0.75、明らかに役立つ場合は0.75以上でなければならない。
5. バイアスのリスクは、モデルへの影響が軽微でなければならない。例えば、適切でないデータソースは、結果の定義の一部である予測因子よりも有害である。

そして、これらの基準を満たしたモデルを6つ特定し、臨床的に価値があると捉えた。

各モデルは、それぞれ違っている個人のように感じられる。
一人一人は、もちろん完璧な人間でもないけれど、強みがないわけでもない。
少しでも欠けていたらその欠落部分に照準を合わせるような減点主義的な観点だけからではなく、個性というか、強みに光をあてる照善的な観点からも…。
その哲学的方向性に具体的な方法という形を与えたNayeらは、偉大だし、僕は好きだ。
次の僕たちも、そうでありたいと思った。

私は思うに、あなたには何かがある。
あるいは、何かが欠けておる。
どちらにしても同じようなもんですが。

村上春樹 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

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