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野球のバッティングにおける3つのグリップタイプ(握り方)

▼ 文献情報 と 抄録和訳

大学野球選手におけるスイングタイプとバッティンググリップが鉤状突起のピーク圧力に影響すること

Flynn, Lindsay S., et al. "Swing Type and Batting Grip Affect Peak Pressures on the Hook of Hamate in Collegiate Baseball Players." Orthopaedic Journal of Sports Medicine 9.12 (2021): 23259671211060807.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景・目的] 野球選手の有鉤骨骨折は、バットスイングとグリップタイプに起因している可能性がある。目的は、大学野球選手において、スイングの種類とバッティンググリップが有鉤骨の圧力と圧力の増加率に及ぼす影響を比較検討すること。

[方法] 研究デザインは、全米大学体育協会第一部野球選手(N = 14;年齢、19.6 ± 1.1 歳[平均±SD])におけるバットグリップとスイングの違いに関する実験的準ランダム化研究であった。参加者全員が6つの組み合わせのもとでスイングを行った。3種類のグリップタイプ(すべての指をバットシャフトにつける[AO],バットシャフトから指を1本離す[OF],チョークアップ[CU])と2種類のスイングタイプ(フルスイング,チェックスイング)である.素手の掌に装着した圧力センサーにより、有鉤骨部におけるピーク圧力と圧力発生率を評価した。手首の角速度および橈骨尺側偏位は3次元動作解析により求めた。

スクリーンショット 2021-12-29 7.35.12

✅ 図. バットのグリップ。(A)すべての指をバットシャフトにつける[AO]。(B)バットシャフトから指を1本離した状態[OF]。(C)チョークアップ[CU]

[結果] OF-チェックスイングの組み合わせは、AO-フルスイング(1.36 ± 0.73 kg/cm2)、OF-フルスイング(1.68 ± 1.17 kg/cm2)、CU-フルスイング(1.18 ± 0.96 kg/cm2; すべてP < .05)に対して最も高くハンマート上に圧力をもたらした(3.72 ± 2.64 kg/cm2).圧力発生率には、6つの条件にわたって条件の有意な影響があった(P = 0.023)。手首の最大角速度は、すべてのチェックスイング条件において、対応するフルスイング条件よりも44%低かった(P < 0.0001)。最大手首角速度を達成するまでの時間は、AO-フルスイングで最も長く、CU-チェックスイングで最も短かった(スイングサイクルの100.1% vs 7.9%; P = .014)。

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✅ 図. バットスイングの6つの実験条件における有鉤骨への平均圧力。

[結論] OF-checkスイング条件では、有鉤骨の鉤部で最も高い総圧力が得られた。また、チェックスイング条件は、フルスイング条件と比較して、圧力の上昇速度が最も急であった。臨床的な関連性頻繁にスイングをチェックし、OFまたはAOグリップを使用している打者は、有鉤骨へのストレスを軽減するためにバットの修正やグリップの調整が有効であるかもしれない。アスレチックトレーナーやチームドクターは、これらの要因を認識し、過去または現在進行中の手の怪我に関連したカウンセリングを選手に行う必要がある。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

スポーツ現場では、「またこの主訴か、結構あるよね。だけど、エビデンスがあまりんないんだよ」ということが多い。
バッドスイング時の手掌下尺側の痛みは、まさにそれだ。
とくに冬季トレーニングにおいて、この訴えが起こりやすい印象がある。

それに対し、関節可動域や筋力、ハイスピードカメラでバッドスイングをとって・・・。
理論上、・・・、と考えられるから、・・・。
というような対応をすることになる。
だが、これらの対応は理論上正しいことであって、、実験的な正しさではない
つまり、効果の大きさや介入の優先順位が補償されない介入である(下記note「So What?」参照)。

そして、スポーツ現場で求められるのは、本よりも絆創膏である。
即、効果。まず、効果。効果が出せるということが信用の大前提。
だから、確信をもった技術もっていないと、信用されない。

「知行合一」という言葉がある。
行動につながらない知識は無意味、知識に基づかない行動は暴力。
この2つ、両輪のように世界を前に押し進める。
どっちが欠けてもいけない。
だが、これにも優先順位(プライオリティ)がある。
まず行動(介入)による「効果」が示されること、これが大事。

マジシャンなのだ、現場で信用されるのは。
タネを長々と説明されたら、むしろ心が離れる。
それより、タネが分からずとも一発の凄み・不思議を、見たい。
今回の研究は、そのタネを提供してくれるものだ。

✅ 本研究結果を選手との対応に使用した例
選手:「先生、バット振るとここ(例の部位)が痛いんです」
Super Human:「ふーん。バット、どうやって握ってる?」
選手:「こうです」(シャフトから指1本離す[OF]握り)
Super Human:「ほう。じゃ、シャフトから指一本短く(CU)握って振ってみて。」
選手:「はい。」(ぶん)「あれ、痛くない!!!」
Super Human:「だろうね・・・。」(CUがOFの半分の圧になることを知っている)。「あと、チェックスイングやめといて。むしろ負荷強まるから」

これが、現場で信用されるセラピスト像だと思う。
知行合一、ただし、行→知の順番を間違えないようにしたい。

兵馬の精強なくして一般の正義なく、独立なく、自尊なし。
河井継之助

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