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RICE処置の殻を破る。PEACE & CARE

📖 文献情報 と 抄録和訳

軽度の軟部組織損傷は急性期にPEACEが必要だが、中等度や重度の損傷にはCAREが必要である

Fousekis, Konstantinos, et al. "Minor Soft Tissue Injuries may need PEACE in the Acute Phase, but Moderate and Severe Injuries Require CARE." Journal of Sports Science and Medicine 20.4 (2021): 799-800.

🔗 DOI, PubMed, Google Scholar

✅ 前提知識:RICE, PEACE, CARE
- RICE:rest, ice, compression and elevation
- PEACE:protection, elevation, avoid, compression and education
- CARE(図):cryotherapy and compression, avoid, rehabilitation and elevation

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[Letter概要]

▶︎視点①:アイシングの是非
- 過去30年間、筋骨格系損傷の急性期治療については、理想的なアプローチを実証する十分で質の高い研究がないため、相反する混乱した理論があふれている。
- 主な論争点は、アイシングの使用に関するものである。
- アイシングを避けるという提案は、氷が好中球やマクロファージの浸潤を遅らせ、組織修復を損なうことによって治癒過程に悪影響を及ぼすという仮説に基づいている。さらに、アイシングは炎症を抑えたり遅らせたりするものの、治癒プロセスや回復時間には影響を与えないという結論を出している(📕Ramos et al, 2016 >>> doi.)。
▶︎視点②:RICE一辺倒は重症度を考慮していない
- また、傷害の急性期における凍結療法の使用を避けるという提案では、リハビリテーション治療の選択に影響を与える本質的な要因である傷害の重症度が考慮されていない
- 軽傷の場合、腫れは一般的に小さいが、中程度から重度の傷害では、著しい水腫が形成され、組織や神経の圧迫、動きの制限、機能性の低下につながる(📕Scott et al, 2004 >>> doi.)。
- また、著しい関節の腫脹は、関節原性筋の抑制や関節機能の低下と関連している(📕Rice et al, 2009 >>> doi.)。
▶︎視点③:軽症にはPEACE、中等度〜重度にはCARE
- 腫脹の少ない軽度の軟部組織損傷の治療にPEACEアプローチ(📕Dubois and Esculier, 2020 >>> doi.)を用いることを提案する。
- 第二に、組織損傷と腫脹が著しい中等度から重度の損傷に対する新しい急性期治療法として、凍結療法と圧迫、回避、リハビリテーション、挙上(CARE)アプローチを提案する。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

今回のレターにおいて、特に重要なことは、「重症度によって、アイシングをする、しないを使い分けた方が良くないですか?」ということ。確かにそうだと思った。
それにしても、画一化。標準化。統制化。(まとめて標準化と呼び進める)
これは、混沌とした世の中に安心、実施内容の正当性の補償、思考力の温存、質の底上げ、などの利得を提供する。
たとえば、RICE処置という「正しい行動」が定義されているから、スポーツ現場において「いいね。」がつき、機械的に行動すればよく、叱られず、素人同然でもRICE処置はできる、という状態をつくり出せる。
一方で、標準化は一種の権威となり行動の萌芽を抑制する、ララバイエフェクト(思考力の動員低下)、ひいては学術体系の質の向上・成長の抑制を生む。
たとえば、RICE処置という「正しい行動」が定義されているから、その行動を取らない、もしくはそれ以外の行動を取ることが怪しまれ、新規事項を考える機会が奪われるリスクがある。
標準化のリスクを防いだ状態で、利得だけを享受するためには、どうしたらいいだろう?

科学は、仕組みとしてそれを有している。
だからこそ、今回のような脱皮の気配が現れる。
その仕組みの1つは、『FINER』(詳細は以下note参照)を通過したものだけが、研究され、publishされることにあると思う。

✅ FINER
- Feasible(実施可能性)
- Interesting(科学的興味深さ)
- Novel(新規性)
- Ethical(倫理性)
- Relevant(必要性)

特に、Novelに注目したい。
すなわち、既存の標準化事項を改良したり修正したりできた論文だけが、出版され、アカデミックキャリアの実績となる
Stayは、なんの利得も生まない。
これが、人を駆り立てる。
成長しないことではなく、成長することに。
前に進まないことには何もおかず、前に進むことだけにインセンティブを置く。
それだけで、物事は面白いように勝手に進む、はずだ。
これまでの科学の歴史が、それを証明している。
それは、植物の葉が光の方向を向く位、自然で、生命の仕組みに根ざした、当たり前のことだ。

そしてこの仕組みは、学術体系だけの占有物ではなく、組織の標準化にも使えると思った。
たとえば、組織改善の意見を常時募集しておき、投稿された意見をFINERに照らして、合格ならポイント付与する。そのポイントのカットオフ値を決めて、人事考課とリンクさせれば、前進だけが利得を生むシステムとなる。
科学という、大成功事業の仕組みを、集団の力学に応用していく。
これは、いずれ年輪でしっかりまとめ、自らが所属する集団内での実用化を図ろうと思う。

とにかく!
改良や成長、脱皮を前提としない標準化ほど、危険なものはない。
だから、それを仕組み化した状態で、標準化をはじめなければ・・。
殻を破ることを前提に、卵をつくれ。
さもないと、その殻の中身は、気づかないうちに腐っているかもしれない。

永遠に生き生きと、永遠に前へ前へ
Forever alive, forever forward

Whitman

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