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脳卒中者への早期離床。意識障害を改善する可能性

📖 文献情報 と 抄録和訳

脳卒中と重度の意識障害を有する患者における早期移動の効果。レトロスペクティブスタディ

📕Tsuboi, Hiroyuki, et al. "Effect of early mobilization in patients with stroke and severe disturbance of consciousness: Retrospective study." Journal of Stroke and Cerebrovascular Diseases 31.10 (2022): 106698. https://doi.org/10.1016/j.jstrokecerebrovasdis.2022.106698
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[背景・目的] 本研究は、脳卒中で重度の意識障害(disturbance of consciousness, DoC)を有する患者に対して、理学療法士と登録療法士によるリハビリテーション(physiatrist and registered therapist Operating rehabilitation, PROr)を用いた早期移動の有効性と安全性を検討することを目的としたものである。

[方法] 2015年1月から2021年6月までに当院に入院した脳卒中患者の記録をレトロスペクティブにスクリーニングした。対象となる重度のDoCの患者を、標準的なリハビリテーションを受けた患者(対照群)とPROrを受けた患者(PROr群)の2群に分類した。入院中のJapan Coma Scale(JCS)を用いた意識レベルの経時的変化を調査し、院内死亡率、呼吸器合併症の発生率、退院時のmodified Rankin Scaleを両群間で比較した。

[結果] 対象患者2191人のうち、PROr群16人、対照群12人であった。PROr群では、リハ開始までの日数が早く、1日あたりリハ実施量が著名に大きかった(57.6分 vs. 20分)。PROr群では対照群に比べ早期離床がより促進されたが、院内死亡率、呼吸器合併症の発生率、退院時のmodified Rankin Scaleには両群間で有意差はなかった。入院中に生存した患者では,脳卒中発症2週間後のJCSスコアと退院時のJCSスコアがリハビリテーション開始時よりPROr群で有意に改善したが,対照群では改善しなかった.

[結論] PROrプログラムによる早期移動は安全な治療法であり,脳卒中急性期および重症DoC患者の意識レベルの改善に寄与する可能性がある.

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

以前、脳卒中者への超早期離床(< 発症から24時間)は『非』である、という趣旨で文献抄読をした。

今回の論文は、早期離床なのだが、リハ開始までの日数が早期離床群、対照群ともに1を超えており、24時間以降の話かと思われる(「1」の定義が当日なのか、24時間以降のことなのかを読み取ることができなかったが…)。
その点で、以前の抄読におけるハイリスクな時期後の早期離床、ということだろうと解釈した。

その上で、どうしてこの効果が出たか。
僕が注目したのは、『Does(量)』である。
PROr群では、1日3単位(57.6分間)、対照群では1日1単位(20分間)。
介入量が全く異なっており、それは効果も変わるだろうと感じた。
そして、本文のFull textの図を見るとわかるのだが、この介入にはPT、看護師が2人以上というマンパワーを要する。
費用対効果、に関しても今後問われていくことだろう。

そして、この研究のLimitationにも記載してあるが、n数が小さすぎる、というのは限界の1つだろう。
「早期離床の是非」、はリハビリテーション実施の方向性と患者の予後に大きな影響を与える議題なので、結論は慎重に下されるべきだ。
ただ、超早期から安全を保った上で患者を離床させていこうという、そのチャレンジは本当に尊いもので、結果が出ていることは、なお素晴らしいことだと感じた。
この領域の研究には、今後も注目していきたい。

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