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立ち上がりと膝関節角度


📖 文献情報 と 抄録和訳

座位から立位への移行における膝角度の生体力学的影響に関するマルチモーダル分析

📕O’Keeffe, Clodagh, et al. "Multimodal analysis of the biomechanical impact of knee angle on the Sit-to-Stand transition." Gait & Posture (2023). https://doi.org/10.1016/j.gaitpost.2023.07.283
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🔑 Key points
🔹膝の角度をより伸展位にすることで、立ち上がりの難易度が上がる。
🔹プロプリオセプティブ入力を減らすことで、膝の影響が複合的になる。
🔹側方圧力中心は課題の難易度とともに増加する。
🔹股関節伸展筋と足関節背屈筋は、膝関節角度が伸展位になるにつれて早期に活性化する。
🔹フェーズに基づいた分析により、治療介入のターゲットが明確になる。

[背景・目的] 座位から立位(The Sit-to-Stand, STS)への移行は、日常生活で最も使用される動作の一つであり、自立に不可欠である。機能的可動性や感覚フィードバックを損なう神経学的、身体的損傷は、しばしばリハビリテーションプログラムや治療的介入を必要とする。日常動作の生体力学的要素とこれらの要素間の相互作用を理解することは、リハビリテーションプロトコルに情報を与え、刺激プロトコルなどの標的介入を最適化するのに役立つ可能性がある。研究課題:座位から立位への動作中および動作後の下肢筋の活性化パターンとバランスに及ぼす、膝の初期角度の違い、腕のファシリテーション、固有受容入力の影響は何か?

[方法] 20名の健常被験者を対象に、座位から立位までの下肢4筋の筋電図、重心動揺の振幅と速度を記録した。膝の初期角度は様々な伸展レベル(80°、90°、100°)に設定し、表面の安定性と腕の促進はフォームマットや交差腕を用いて変化させた。データはSTS移行の3段階にわたって分析された。

[結果]
■ 膝関節角度と重心動揺との関連
・膝関節の角度がより伸展しているほど、各フェーズで側方動揺が大きくなり(p<0.01)、フェーズ1と3では前後方動揺に悪影響を及ぼした。

■ 膝関節角度と筋活動との関連
・EMGのデータから、膝の初期角度がより伸展位であるほど、第1相と第2相において前脛骨筋(p<0.001)と大腿二頭筋(p<0.02)のEMG活動も増加し、挙上と安定化を補助することが示唆された。

[結論] 本研究の結果は、STS移行の難易度において、相に応じた筋の関与と、プロプリオセプティブインプットと膝角度の減少が複合的に影響することを概説している。このような結果は、リハビリテーションプログラムや刺激制御システムを設計する際に、感覚や可動性の問題を考慮する必要性を強調している。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

ありそうでなかった研究である。
立ち上がり時の膝関節角度は、主に「難易度を下げる」ために使用していた。
つまり、膝関節を屈曲させることで立ち上がりを簡単にしていた。

この方法は、シンプルだが絶大なる効果を発揮する。
であれば、逆方向にも有効だ、という応用提案が本研究の考察でなされている。
バランス要素や、筋活動需要を高めるために、あえて膝関節角度を伸展位に近づける。

なるほど、要は用い方である。

人に時計をくれてやっても、その使い方を教えてやらねば何もならぬ
坂本竜馬

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