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歩行に対するプラセボ効果

📖 文献情報 と 抄録和訳

歩行に対するプラセボ効果:高齢者のデュアルタスク・コストを軽減する方法

📕Villa-Sánchez, Bernardo, et al. "Placebo effect on gait: a way to reduce the dual-task cost in older adults." Experimental Brain Research 241.6 (2023): 1501-1511. https://doi.org/10.1007/s00221-023-06620-x
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[背景・目的] 2つの作業を同時にこなす能力は、日常生活に不可欠である。高齢者では、この能力が著しく低下していることが、歩行における二重課題コストによって証明されている。予備的な証拠から、二重課題コストは様々な種類の操作によって影響を受ける可能性があることが示されている。ここでは、プラセボ効果(プラセボ効果とは、効果があると思われる不活性な器具を投与すると、ポジティブな結果が得られるという心理生物学的現象)に基づいて、二重課題コストを低減させる新しいアプローチの有効性を検討した。

[方法] 35人の健康な高齢者に、センサー付きカーペットの上を歩くこと(シングルタスク条件)と、逆算しながら歩くこと(デュアルタスク条件)を2回(プレテストとポストテスト)行ってもらった。無作為に選ばれたプラセボ群には、セッションの合間に眼窩上部に偽の経頭蓋直流電流刺激が行われ、集中力と注意力に対するプラスの効果についての情報も提供された。対照群は、セッション間に介入を受けなかった。

✅ プラセボ群の定義
・生理食塩水に浸したスポンジにあらかじめ挿入した2つのtDCS電極を、額(陽極-左眉、陰極-右眉)に5分間置いた。
・tDCS装置は偽モードになっていた
・最初の30秒間は1mAでオンになり、残りの時間はオフになった。
・この偽プロトコルは、皮質の興奮性を変化させることなく、刺激されている感覚を誘発する(📕Gandiga et al. 2006 >>> doi.)
・偽TDCSはプラセボ効果を誘発する適切な不活性治療であることが報告(📕Turi et al. 2018 >>> doi.)

[結果] プラセボ群では、いくつかの歩行パラメータについて、試験前と比較して試験後のセッションでデュアルタスクコストが有意に減少した(Cohen's d > 1.43)。試験後のセッションでも、プラセボ群では対照群よりも二重課題コストが低かった(d>0.73)。認知的変数(引き算の回数とエラーの数)と主観的変数(精神的疲労感の自覚)は、セッションをまたいでも安定していた。

[結論] プラセボ群における二重課題コストの減少は、課題間の注意資源の配分を再確立する能力を示している可能性がある。これらの知見は、高齢者の運動制御を高めるためにポジティブな期待を活用する認知戦略の開発に貢献する可能性がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

ぼくは結構、プラセボ効果という心理学的効果が好きだ。
リハ関連のプラセボ効果研究の多くは、“疼痛”をアウトカムとしたものだった。
その中で、今回抄読した研究は“歩行”をアウトカムとしたプラセボ効果の論文。
興味×興味、大変興味深い論文だった。

この論文を通じて僕が感じたことは、「機器を使うことの威力はデカそう」である。
言葉によるプラセボ効果もあるだろう。
だが、しっかりと機器やツールを用いてカタチとして残すことは、影響力を増すのではないか。
例えば、眉間に何の変哲もないシールを貼って、
「このシールは特殊な磁器が出ていて、あなたの注意力や集中力を高めるのですよ」
といえば、今回の研究の効果が少なからず得られるのではないか。

・・・。
良い効果、という目的に収束すれば嘘も方便、と信じたい。

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