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悪液質の診断基準

📖 文献情報 と 抄録和訳

アジアにおける悪液質の診断と転帰:アジア悪液質ワーキンググループのコンセンサス報告書

📕Arai, Hidenori, et al. "Diagnosis and outcomes of cachexia in Asia: Working Consensus Report from the Asian Working Group for Cachexia." Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle (2023). https://doi.org/10.1002/jcsm.13323
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✅ 前提知識:悪液質(Cachexia)とは?
・悪液質は、骨格筋や脂肪が減少する筋肉消耗症候群であり、様々な要因にもよるが、進行がん患者の最大80%に生じると推定されている。
・悪液質はがんに限らず,種々の慢性消耗性疾患における栄養不良の終末像であり,治療抵抗性で患者の予後や QOL を悪化させることが知られていた。

🌍 参考サイト1 >>> site., 🌍 参考サイト2 >>> site.

[背景・目的] 慢性疾患はしばしば代謝障害を引き起こし、同化抵抗性とエネルギー消費の増加を引き起こし、悪液質をもたらす。悪液質は、生活の質の低下、平均余命の短縮、医療費の増加など、臨床的に重大な結果をもたらす。既存の国際的な悪液質の診断基準は、欧米の集団に由来する閾値を採用しており、体組成が異なるアジア人には当てはまらない可能性がある。この問題に対処するため、アジア悪液質ワーキンググループ(AWGC)が発足した。AWGCは、アジア各国の悪液質研究と臨床の専門家で構成され、アジアにおける悪液質の診断基準と重要な臨床転帰に関するコンセンサスを得ることを目的としている。

[方法] AWGCは、アジア各国の悪液質研究と臨床の専門家で構成され、コンセンサスを得るために3回のデルファイ調査と5回の会議を行った。病因となる疾患、主観的・客観的症状やバイオマーカーを含む悪液質の必須診断項目、重要な臨床転帰などについて議論が行われた。

[結果]
■ 悪液質の診断基準
<必須条件>
(1) 基礎疾患(※後述)の有無
(2) 体重減少が2%以上/3~6ヵ月、またはBMIが低い(21kg/m2未満)
<1つ以上該当>
(1) 自覚症状:食欲不振
(2) 客観的測定:握力の低下 男性28kg未満、女性18kg未満
(3) バイオマーカー:CRP上昇 >5mg/L(0.5mg/dL)

■悪液質の基礎疾患
・がん
・慢性心不全
・慢性閉塞性肺疾患
・慢性腎臓病
・関節リウマチ
・その他の膠原病
・慢性呼吸不全
・慢性肝不全
・慢性感染症の進行性悪化またはコントロール不能

■ 悪液質の重要なアウトカム
・重要な臨床転帰は、死亡率、EQ-5Dや食欲不振/悪液質治療の機能評価などのツールで評価されるQOL、およびClinical Frailty ScaleやBarthel Indexで測定される機能的状態であり、患者報告による転帰が重視される。

[結論] AWGCのコンセンサスは、悪液質の包括的な定義と使いやすい診断基準を提供するものであり、特にアジア人の集団に合わせたものである。このコンセンサスは、今後の研究を刺激し、悪液質の管理に対する集学的アプローチを強化するものである。アジア人における悪液質の最適な治療、予防、ケアのためのさらなるガイドラインを開発する計画とともに、AWGCの基準は、アジアにおける慢性合併症とがんを横断する研究を推進し、将来の診断基準の改良につながることが期待される。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

同じように筋力トレーニングしても、良くなる(筋肥大、筋力など)人もいれば、良くならない人もいる。
これって、シンプルな疑問だけど、重要な疑問で、今でも解決しきれない疑問だ。
その答えの1つが、『悪液質』だと思っている。

基礎疾患に基づく、筋肉消耗。
その病態は基礎疾患によって違うのだろうけれど、最終共通路は、理学療法士にとって『なんで良くならない?』だ。
今回抄読した論文において、その悪液質のアジアにおける診断基準が示された。
これによって、悪液質を有する患者を「明らか」にできるようになった。

そして、これから探るべきは、
(1) それでも良くできる領域はどこなのか?、また効果的な介入方法とは何か?
(2) よくできない領域はどこなのか?、その場合に求められる介入方法とは何か?

この両輪をぐるぐると回しながら、漸進していきたい、もがきたい。

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