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ステップ時の非麻痺側への抵抗は、麻痺側への重心移動量を大きくする

📖 文献情報 と 抄録和訳

遊脚時に非麻痺側脚に拘束力を加えた地上歩行は、脳卒中後遺症患者の麻痺側への体重移動を改善する

📕Park, Seoung Hoon, et al. "Overground walking with a constraint force on the non-paretic leg during swing improves weight shift toward the paretic side in people post-stroke." Journal of Neurophysiology (2023). https://doi.org/10.1152/jn.00008.2023
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> Not applicable

🔑 Key points
🔹地上歩行中に非麻痺脚に拘束力を加えることで、麻痺脚側への体重移動が改善し、歩行中の麻痺脚の筋活動が亢進した。
🔹さらに、拘束力を用いた1回の地上歩行により、麻痺脚の推進力が増加し、自己選択による地上歩行速度が増加した。

[背景・目的] 運動練習中に麻痺側下肢の使用を強化することを目標とすることで、麻痺側下肢の運動機能が改善する可能性がある。本研究の目的は、慢性脳卒中患者において、地上歩行中に非麻痺脚に後方向への拘束力を加えることで、麻痺脚の使用が促進されるかどうかを検討することである。

[方法] 脳卒中後遺症者15名を2つの実験条件、すなわち、非麻痺脚に拘束力を加えた地上歩行と地上歩行のみに参加させた。それぞれの参加者は、拘束力ありまたは拘束力なしの地上歩行、計器付きスプリットベルト・トレッドミル歩行、地上歩行前後の感圧式歩行マット歩行からなる以下の手順で試験を受けた。

✅ 非麻痺側下肢への抵抗の詳細
・非麻痺側下肢-車椅子を繋ぐ装置
・下肢の振り出しに抵抗+
・定張力10~50N
・ケーブル長2m

[結果] 拘束力を用いた地上歩行練習では、無拘束条件と比較して、麻痺側への側方体重移動(P<0.01)、麻痺側股関節外転筋の筋活動(P=0.04)、麻痺側脚の推進力(P=0.05)がより増強した。拘束力を伴う地上歩行練習は、無拘束条件の効果と比較して、自己選択による地上歩行速度の増加をより大きく誘導する傾向があった(P = 0.06)。麻痺脚からの推進力の増加は、自己選択歩行速度の増加と正の相関があった(r = 0.6, P = 0.03)。

[結論] 歩行遊脚期に非麻痺側脚に拘束力を加える地上歩行は、麻痺側脚の使用を促進し、麻痺側への体重移動と麻痺側脚の推進力を改善し、結果として歩行速度を増加させる可能性がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

好きな研究者はいますか?

そう問われたときに即答できる人は、普段から相当論文を読んでいたり、アカデミアの領域に精通している人なのだろうと思う。
僕の場合には、そんな訳にはいかない。
だけど、そんな僕にも好きな研究者がいる。
それが、今回の研究グループ、Park先生たちだ。

前にも、Park先生たちの論文を抄読した。

そのときにも感じたことだが、彼らの研究の特徴は“圧倒的な実用性”、である。
彼らの研究は、ラボより圧倒的に現場に重心が置かれている。
今回の研究を見ていただきたい。
車椅子の足と患者の足を繋ぐ後方への抵抗。
これ、臨床において平行棒で患者さんが立った後に、セラバンドなどで簡単に再現可能だ。
つまり、すぐできる。

彼らのリサーチクエッションは、いつだって現場から出発しているのだろうと思う。
彼らのどの研究だって、切れば血が吹くような、切実な臨床体験に基づいている気がしてならない。
だからこそ、好きだし、尊敬してやまない。
目の前の臨床体験を、気づきを、可能性を、紙にしたい。

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