見出し画像

動的慣性モーメントバット。ウェイトバットより2.1%スイングスピードUP↑

📖 文献情報 と 抄録和訳

動的慣性モーメントバットによるウォーミングアップは、競技野球選手のバットスイング速度を向上させることができる

📕Castonguay, Tristan, Mary Roberts, and Geoff Dover. "Warming Up With a Dynamic Moment of Inertia Bat Can Increase Bat Swing Speed in Competitive Baseball Players." Journal of Sport Rehabilitation 32.1 (2022): 1-8. https://doi.org/10.1123/jsr.2021-0351
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> Connected Papers
※ Connected Papersとは? >>> note.

✅ 動的慣性モーメントバットとは?
・Hung ら(📕Hung, 2004 >>> goole scholar.)は,動的慣性モーメントを特徴とするバット(動的慣性モーメントバット)を設計した
・動的慣性モーメントバットのバレルはハンドルと同径のスライドレール上を可動する
・スライドレールには中空管状のスライドマスが巻き付けられており、バットを振るとバレル先端に向かってスライドし、バットの慣性モーメントを変化させることができる

📕Liu et al. The Journal of Strength & Conditioning Research 25.11 (2011): 2999-3005. >>> doi.

[背景・目的] 野球選手のウォームアップは、ウエイトバットやドーナツで行うことが多いが、バットが軽く感じても、ウォームアップ後はスイングスピードが低下することを示唆する証拠が存在する。しかし、動的慣性モーメントバットを用いたウォームアップは、スイングスピードを低下させないため、野球選手のパフォーマンスを向上させる可能性がある。このように、動的慣性モーメントバットは、重り付きバットで観察される運動錯覚の効果を否定する仮説がある。目的:動的慣性モーメントバットによるウォーミングアップとウェイトバットによるウォーミングアップのバットスイング速度の違いを測定する。

[方法] 39名の競技野球選手が研究に参加した。全選手に、動的慣性モーメントバットまたはウェイトバットのいずれかであるウォームアップ用具を無作為に割り当てた。ウォーミングアップ後,選手は通常のバットを振り,高速度カメラでバットスイング速度を計測した.スイングスピードの算出には、動作解析ソフトを使用し、ボールコンタクト前の最後の15フレームにおける直線変位を計測した。その後、各選手が両方のウォームアップ用バットを試す機会があるように、このプロセスを繰り返した。

[結果] 動的慣性モーメントバットを使用したウォームアップ後のスイングスピードは,ウェイトバットを使用したウォームアップと比較して,有意に速かった動的慣性モーメントバットを使用した場合、スイングスピードは0.56(0.78)m/s(1.26 [1.74] mph)増加し(P = .0001)、これはウェイトバットのウォームアップと比較して平均2.10%の増加であった。

[結論] 本研究の結果は、打席前に動的慣性モーメントバットを使用することで、ウェイトウォームアップと比較してスイングスピードを向上させることができることを示唆するものである。今後、リハビリの一環として動的慣性モーメントバットを使用することで、スイングスピードに着目した傷害後の競技復帰を促進できるかどうか、研究が必要である。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

以前、競技直前に過重量(もしくは過少重量)の器具を用いてウォーミングアップし、その後の実パフォーマンスに好影響を及ぼすことを明らかにした論文を抄読した。
このようなパフォーマンスの増大は『活動後のパフォーマンス向上(post-activation performance enhancement:PAPE)』と呼ばれる。

今回の論文は、野球のバットスイングのPAPEをさらに効果的にするツールとして『動的慣性モーメントバット』の威力を明らかにした。
この論文の中では、スイングスピードという『速度』に着眼しているが、僕はそれ以上に『加速度』に影響を及ぼすのではないかと思っている。
つまり、一定の速度に至るまでにも「どこで、どの程度加速するか」という自由度がある。
一連のスイングの中で、徐々に速度を上げていくのか、インパクトの瞬間に爆発的に速度を上げていくのか。
そこには、違った価値がある。

加速度の背後には、『力』の存在がある。
速度の背後には、『力』の存在は不可欠ではない。
たとえば、一定の速度で走る電車は、そんなに力を加えていない。
だが、発車直後の電車は、とても大きな力を加えている。
その加速のタイムポイントをどこに置くか。
個人的には、インパクトの瞬間に最大の加速を置くことが肝要かと思っている。
なぜなら、そこでボールに力を加えるから。
ボールが当たった瞬間、その背後に力がなければ、簡単に押し返されてしまうだろう。
だが、その背後に強大な力があれば、むしろ押し込む。

素振りでは、インパクトがないから、どうしてもその力の使い方を学習しにくい。
それを再現してくれるのが『動的慣性モーメントバット』と言えるだろう。
それは例えば、シャドーピッチングにおいて「なぜタオルを持つ必要があるか」という質問の答えと同じ役割をしてくれるものだ。
つまり、実パフォーマンスをシミュレートする反力を創造している。

静かに小さく輝き続ける冬の夜空より、一夜の瞬間的な花火に人は集まる。
人は多分、持続よりも爆発的加速に惹かれやすいのかもしれない。
マラソン的スイングではなく、スプリント的スイングを。
このバットスイングにおける加速度の変遷は、調査されるべきだと思う(勉強してみよう)。

⬇︎ 関連 note✨

○●━━━━━━━━━━━・・・‥ ‥ ‥ ‥
良質なリハ医学関連・英論文抄読『アリ:ARI』
こちらから♪
↓↓↓

‥ ‥ ‥ ‥・・・━━━━━━━━━━━●○
#️⃣ #理学療法 #臨床研究 #研究 #リハビリテーション #英論文 #文献抄読 #英文抄読 #エビデンス #サイエンス #毎日更新 #最近の学び

この記事が参加している募集

最近の学び

野球が好き