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家庭用機器でお尻に電気刺激。脊髄損傷者の褥瘡予防に効果的かも

📖 文献情報 と 抄録和訳

12週間の臀部およびハムストリング電気刺激により、脊髄損傷者の血管構造および機能、肢容積、座圧が改善される。パイロット・フィージビリティ・スタディ

📕Barton, Thomas, et al. "Twelve-Week Daily Gluteal and Hamstring Electrical Stimulation Improves Vascular Structure and Function, Limb Volume, and Sitting Pressure in Spinal Cord Injury: A Pilot Feasibility Study." American Journal of Physical Medicine & Rehabilitation 101.10 (2022): 913-919. https://doi.org/10.1097/PHM.0000000000001929
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🔑 Key points
🔹脊髄損傷(spinal cord injury, SCI)は、微小血管の灌流不全と長時間の座圧により皮膚潰瘍のリスクを増加させる。
🔹急性電気刺激(electrical stimulation, ES)は微小血管の灌流を改善し、座圧を下げる。
🔹特殊な機器、施設、訓練を受けたスタッフがいるため、定期的なESの適用は現実的ではない。
🔹ウェアラブルデバイスを用いた12週間の家庭用低強度ESを検討した。
🔹電気刺激により総大腿動脈径と血流、臀部皮膚血流が増加した。
🔹ES後、坐骨ピーク圧と圧力勾配は減少し、大腿容積は増加した。
🔹これらの知見は、SCIにおける褥瘡や(微)血管合併症を改善するための臨床的意義がある。

[背景・目的] 家庭用ウェアラブル電気刺激装置による低強度電気刺激が(微)血管および座圧に及ぼす長期的影響について、試験的なフィージビリティスタディを行った。

[方法] デザイン:米国脊髄損傷協会A-C分類の慢性(1~24歳)脊髄損傷者である中年男性(n=8)および女性(n=1)9名に、12週間の自己管理による低強度の臀部およびハムストリング電気刺激(50Hz、6時間[30分電気刺激、15分休息])を実施し、コホート観察前後試験において、臀部およびハムストリング電気刺激による微小血管および座圧の長期的影響を検討した。総大腿動脈径と血流量を超音波で測定し、局所加温時の皮膚血管機能をLaser-Doppler flowmetryで評価し、大腿体積を脚囲と皮弁で推定し、座圧マッピングで界面座圧を測定した。

[結果] 安静時の総大腿動脈径は増大し(0.73 ± 0.20 から 0.79 ± 0.22 cm、P < 0.001)、ベースラインの総大腿動脈血流量は増加した(0.28 ± 0.12 から 0.40 ± 0.15 l/min、P < 0.002)。臀部皮膚血管コンダクタンスは、時間*温度相互作用(P = 0.01)を示し、12週間後には42℃でコンダクタンスが高くなった。坐骨ピーク圧は32±23mmHg減少し(P = 0.003)、圧力勾配は減少した(23±7から16±6mmHg、P = 0.007)大腿部体積は増加した(19%増、P = 0.01)

[結論] 12週間の在宅での臀部およびハムストリング電気刺激は、(微)血管および座圧の改善に実行可能かつ有効であり、電気刺激は脊髄損傷における褥瘡および(微)血管合併症を改善するための臨床的意義を有する可能性がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

脊髄損傷者にとって、『褥瘡』は非常に重要なキーワードだ。

  • 脊髄損傷者は、車いすユーザー (座りっぱなし) の生活を余儀なくされ、その結果、心理的および生理学的健康に深刻な影響を与える無数の合併症を引き起こす(📕Savic, 2018 >>> doi.)。

  • 褥瘡の(再)発生は、SCI 患者の間で最も頻繁に観察され、非常に懸念される合併症の 1 つで、脊髄損傷者の 85% が、人生のある段階で少なくとも 1 つの褥瘡を発症すると報告されている(📕Haisma, 2007 >>> doi.)。

その褥瘡の予防が、電気刺激で予防できるかもしれない。
しかも、この研究の秀逸なところが「家庭用の低周波治療器」を用いている点だ。
どんな精密で崇高な研究も、用いられなければ意味がない、現実は変わらない。
この研究は、現場での実施にかなり近いところに位置する研究だ。
脊髄損傷者や、関わるリハビリテーション職種にとっては、注目の研究である。

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