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概念系

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概念系単発記事をこちらに格納。きちんとした定義は語らず日常感覚的です。なので厳密さはありません。そんなものがあるんだな、レベルのものです。
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タイル張り

縦と横が「2×1」または「1×2」の形のドミノをいくつか使って、図のような「8×8」の枠の中に升目に沿って隙間なく敷き詰めてみよう。 これは難なく敷き詰められるだろう。 では、この枠の1つの対角線にある角2つを取り除いた枠の中に、ドミノを隙間なく敷き詰めることはできるだろうか。 ドミノは面積が2だから敷き詰められるとしたら、面積が偶数でなければならない。そして上の例はもともと「8×8」の形をした枠であり、そこから角の2つを取り除き、面積は64-2=62で偶数である。

何かしらものの本質に近づくときは、「核心に迫る」という。余計なモノを取り払って大事な部分だけを残した先に真の姿が現れる。 今回の「核」は英語で「kernel」の方で、「柿の種」のような「中心」をもつようなものを絵としてイメージすることがある。中心に据えるということは、やはり「大事なもの」という心の表れであろう。 そのような、自然に大事であると意識にのぼるような対象を示す言葉が「核」というのであれば、今回定義しようとする準同型の核というものが、自然に意識の向かうべき重要な対

引き起こす

「あの人の笑顔が周りの人の笑顔を引き起こす」 「このお守りを持っていると、合格を引き起こす」 という風に、日常的な会話の中で、原因となるXが結果となるYを生み出すときに、「XがYを引き起こす」という表現がある。 そして数学の書籍でも「引き起こす」が議論している文脈の中で積極的に使われることがある。 また、XからYが引き起こされるときに、その引き起こし方が人工的なものではなく、とても単純な手続きであると思えるときは、「自然に引き起こす」という表現も使う。 「自然に」と

直積

2つの対象があると、これをまとめて、「組」という1つのものとして認識することがある。対象が2つ以上になっても同様に「組」が作られる。 珈琲を飲むときに砂糖とミルクもほしくて、  (珈琲,砂糖,ミルク) とセットにしたいときに、  「珈琲ありあり」 などと呼んで言葉にする。(実際の言い方は地方に依るかも?) そのような概念を一般的に集合を使って記述しよう。そして演算がある場合でも演算を導入しよう。 1.2つの集合の直積AとBを集合とする。Aの元aとBの元bの組  (a,b

関係の合成

1.知り合いの知り合いという関係3つのグループA,B,Cがあるとする。 AグループのaさんとBグループのbさんが知り合い関係であるとき、これを記号で  aθb と書くとしよう。 BグループのbさんとCグループのcさんについても同様に、互いに知り合い関係であるとき、  bψc と書くとしよう。 AグループのaさんとCグループのcさんはBグループのbさんを介して知り合った。すると、aとcさんの関係も「知り合い」になる。 こうして新しくAグループとCグループの上にも関係とい

素因数分解の一意性

自然数の素因数分解では、任意の自然数がいくつかの素数の積で表され、それは積の順序を除いてただ一通りである、という事実があった。 例えば、  220=2×2×5×11 という素因数分解である。同じ素数が重複して現れてもよい。 この「ただ一通りに」というのは、中学生でどこまで正確に習うだろう。ある程度具体的な計算をやっているうちに、素因数分解したら「当然」一通りの答えしかない、という感覚にならないだろうか。では、その当然と思われる分解はただ一通りであるということを証明できるの

同一視

中学校の生徒全員を集めたら、そこには1年生、2年生、3年生と学年ごとに分類できる。また、生徒の人数が多い学校だと、1年生でもさらに細かく1組、2組、・・・、n組と分類できる。分類の仕方だけでいえば、男子生徒と女子生徒の2分割も考えられる。 このように生徒全員から、いろいろな分類の仕方が考えられます。 例えば生徒全員を学年ごとに3つに分類するというのを考えると、生徒全員の集合をSとして、Sを3つの互いに交わりのない集合A,B,Cの和集合で書き表すことになります。ここでAは1

順序

通常よくあるように、会社の組織体制としてピラミッド構造している状況を考えよう。そこにはいわゆる上司・部下の関係(上下関係)がある。よってこの組織には順序の構造ある。この順序では同じ会社員だが、部署が違えば上下の比較ができないものもある。一方で社長さんと比べればどの社員よりも上に位置している。この会社の社員全員と、その間の上下関係を併せて考えるということは、そこにある順序の構造を意識している。 もう少し単純な順序の例では、「実数の世界」には大小の関係があるのもそうだ。2つの大

零元

まずは群のところでも述べたことを思い出そう。 操作Aのあと操作Bをするときの操作をA・Bあるいは単にABと書き、操作全体の集合Xに乗法が定義された。そして「何もしない」というのも一つの操作であると考え、これを△で書くことにすれば、△はこの乗法による単位元の働きをするのだった。さらに、操作Aについて、AA’=△となるような操作A’がある場合をAの右逆元、A’A=△となる操作A’をAの左逆元と呼び、右逆元でもあり左逆元でもある場合を、Aの逆元と呼んだ。また、逆元の存在するような

ある操作をして誤ったとき、もとに戻すことができればその失敗はなかったことにできる。しかし、もとの状態に戻れせることは日常の中でいつもあるとは限らない。戻せるものもあれば、もう戻せないものもある。これらの性質を可逆性、不可逆性といわれる。 過ぎ去った時はもう過去に戻れない(不可逆) パソコンの操作は大抵は元に戻せる(可逆) 将棋の「歩」は前しか行けず、もとの位置へバックできない(不可逆) しかし「と金」に成ればもとの位置に戻れる(可逆) さて、今、注目している対象をひとつ固

命題

「命の題」と書くと何やら胸を打つ熱い題のように感じるかもしれまんせが、数学で命題(めいだい)というのは、何かを記述する、あるいは言明するのに最も基本的なものです。高校の教科書では、例えば数研出版では「正しいか正しくないかがはっきり定まる文や式を命題という」となっています。 例えば、文「1+1=2である。」は正しい。文「1+2=0である」は正しくない。これらは命題である。 一方、「彼は背が高い」、「カレーは辛い」というのは正しいか正しくないかは明確な判断基準がなく、したがっ

関係

「A君とB君は友達の仲である」とか、「実数aをa+1に対応させる」など、2つの対象の間に何かしら関係を見出すことがあります。函数(写像)よりも広い概念になります。函数はインプットからアウトプットへの方向性がありますが、一般の関係の場合はそれを考えません。 さて、注目している2対象の集合をそれぞれXとYとしよう。特にX=Yであってもよい。この2対象の間にある関係という状況を形式的に表してみよう。 集合Xの元xと、集合Yの元yについて、”xはyと関係Rがある”という主張を x

代入

数の世界を拡張して変数という文字を導入して「文字式」というものを考えるのは計算の上で便利な発明品です。例えば中学生の頃に 「x = -1のとき、x^2 + 2x + 1を求めよ」 という問題を、直接この式に代入して (-1)×(-1) + 2×(-1) + 1 = 1 - 2 + 1 = 0 と計算するより x^2 + 2x + 1 = (x + 1)^2 と因数分解してx = -1を代入すれば0とすぐ計算できるよ、と習ってきました。 文字式に代入してから計算するのと、文字

抽象

物事を観察していると、いくつかのものの中にある共通する性質を持っていることに気付くことがある。次に逆にその性質をもつような対象について考察し、その性質から帰結する定理が得られていく。 こうして共通する性質Pを糸口に、その性質Pが引き起こす他の性質Qもまた、もとの性質Pを持つものにも同様に性質Qを持つことがわかる。 性質Pを見出すことを抽象するという。 数学ではこのような考察の方針がまずあって、いくつかの具体的な例を頼りに何らかの性質を見出し、新しい定理を導き、これを繰り