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北欧の共生社会は、男女も国籍も障害も、敷居をなくして暮らすこと

今年のストックホルムはいつになく雪が積もっています。去年はまったく雪が降らなかったのですが、今年は年明けから雪を見ない日はほとんどありません。3月までは寒いストックホルムの冬はまだまだ続きます。

スウェーデンの暮らしで身についたことに、共生社会での暮らし方があります。スウェーデンは民主主義が徹底されていて、誰もが恩恵をうけるべく守られていて、高齢者や子ども、援助を必要とする人々が、できるだけ自立して暮らせるように、様々なサポートシステムが整っています。例えば障害を持つ人は、自立して暮らせるように国からの支援を受けます。子どもの人権も守られていて、虐待されていれば訴えられるよう支援されます。この国は、誰もが人として平等に生きるため土台ができているように思います。

「五体不満足」がベストセラーとなった乙武洋匡さんが、北欧を訪れた時の感想が北欧社会を物語っています。当時、乙武さんは特注の車椅子でさまざま国を訪れて、助けてもらったりやさしくしてもらったりしたそうです。その親切には感謝していましたが、でもどこか違うと思っていたようです。

「北欧諸国では特別視されている感覚を抱く場面がなかったんです」

「僕の姿に特に興味を示されることもなく、あくまで『いち日本人観光客』というような扱いなんです。かといって不親切というわけでもなく、サポートをお願いすれば、ごく自然に手伝ってくれる。これが本当の意味での共生社会なんだなと実感しました。」

ああ、北欧ってそうなんです。北欧の人は他人をあまり気にしないというか、他人に関わらないようにするというか、他人との距離感をすごく大切にするんです。

それは、時には近寄りがたいと感じることもありますが、どんな相手に対しても特別な興味を示さないという態度があります。

それが同じスウェーデン人に対しても、肌の色が違う人に対しても、障害を持つ人に対しても同じです。特別に興味を示されないことが、いつも特別視される人にとってどれだけ心地いいことか、その身にならないとわからないかもしれません。著名人を見かけても、プライベートでは騒がない大人の対応です。

日本にいると、ほとんど日本人に囲まれていて、自分と異なる見かけの人に出会う機会がほとんどありません。そのため、ちょっと変わった人を見かけると妙に気になり、気を揉んでしまったりします。私も日本にいたころはそんな感覚でした。

スウェーデンでは私は外国人です。明らかに肌の色や目の色が違います。でも、私が外国人として扱われた記憶はありません。普通にスウェーデン語で話しかけられました。外国人と分け隔てられない環境は、とても心地のいいものでした。

最近はトイレが男女共同になったところが増え、それはちょっとどうかと思うのですが、男女の区別がなくなってきています。男性が使った後のトイレに入るのはあまりいい気はしないのですが、男女平等というのはそういうことも含まれます。

トイレが男女共同になることで、どちらにも属さない人も迷うことなくトイレを利用できるという利点があります。

ここにはマイノリティも取りこぼさないという配慮があります。

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また、女性をか弱い存在と思わないスウェーデンには、レディーファーストという考え方がありません。誰かを大事に扱うのは、男女関係なくという考え方です。

つまり、男女平等は、女性にとってけっこうタフなことなんです。仕事も何もかも男性と同等にこなさなければならないということです。もちろんチャンスも同等に与えられるので、それをよしとする女性たちにとってはとても住みやすい国ですが、男性と肩を並べることに抵抗のある女性には厳しい国です。といって女性たちは肩肘を張っているわけではないことはお伝えしておきます。

そういえば、この国の女性はパンツ姿が一般的で、スカートを履いている女性は少数派です。フリルのある服やリボンのあるフェミニンな服は見たことがありません。保育園での教育もどんどんユニセックス化されてきて、今後男女という区別はますますなくなっていくのかもしれないと思います。服装もメンズ、ウーメンズという区別がなくなっていくようです。これは世界的にそういう方向に進んでいるようです。

スウェーデンに暮らしわかったことは、世の中にはさまざまな人がそれぞれの事情を抱えて生きていて、そのことに他人がとやかく言うことはできない、ということです。そのことが理解できると、他人の行動や見た目がまったく気にならなくなります。男女も国籍も障害も、敷居をなくして暮らす共生社会とは、他人の生き方をそのまま受け入れるということです。それは、関心が他人ではなく自分に向くことで、自分に興味を持つようになります。そしてそのことが、生きやすさにつながっているように思います。

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