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命日をジーマブルーに染めて。

このnoteを簡単に説明すると…

・netflixオリジナルアニメ「ラブ、デス&ロボット」の中の1篇「ジーマブルー」がとても素晴らしい内容だった。
・「ジーマブルー=原点」としたなら、私にとってのジーマブルーとは?
・原作もアニメと合わせて読んでみたい(洋書)


といったものです。アニメ作品を観た感想と私個人の体験(やや重い話)を織り交ぜた内容なので、「ラブ、デス&ロボット」への感想・解説とは趣きが少し異なります。

「ラブ、デス&ロボット」の解説はいくつかネットで読みましたが安曇野cocinemaさんのブログが個人的にオススメですので、解説を求めてここに辿り着いた方は是非。


さて、ここから本文。


Netflixオリジナルアニメ作品「ラブ、デス&ロボット」を観た。


1話完結・全18篇のオムニバス形式で、それぞれが異なる作風・世界観を持つ実験的なSF短編集。

表現規制がほぼされておらず、暴力・性表現が強烈なので観る人を選ぶが、それぞれの作品が自由な表現によって輝きを放つ素晴らしい内容だった。その中でもアレステア・レナルズのSF短編集「Zima Blue and Other Stories」原作の「ジーマブルー」が特に私の心に響いた。

世界中から注目を集める芸術家、ジーマ。最後の作品を公開する前に自ら語る、謎に満ちた過去と驚くべき歩みとは? -netflixより引用-

映像作品はまず観てもらうのがベストだが、netflix会員以外視聴する方法がない為、このnoteを書くのに必要な箇所以外のネタバレを避けて簡単に物語を説明すると…

謎の芸術家、ジーマ。彼の作品は「ジーマブルー」と呼ばれる特徴的な青が描かれていた。ジーマが自伝を書く為に招待した記者に対してジーマは自分の過去を語る。ジーマブルーとは彼の原点であり、最後の作品はジーマ自身が生涯を通して探求して辿り着いた原点回帰だった。

9分の短いアニメの中に芸術(現代芸術的描写)とSFを軸に静謐な哲学が描かれた快作だった。


作中の芸術家、ジーマが生涯を通じて描き求め辿り着いた「ジーマブルー」というものが「自分自身の原点」だと仮定し、物語と同様に自分の過去を独白すると私にとってのジーマブルーは11年前に起こった兄の事故死だろう。

努力家だった兄は幼稚園の頃に「ピアノの先生になる」という夢を持ち、ブレることなくそのまま音大へ進学・卒業し、音楽教師への道をまっすぐ貫いた。

"てんかん"持ちだった兄は日常生活の中で突然意識を失い倒れてしまうことがあった。幼少の頃から病院に通い続けて少しづつ症状は改善したものの、それが災いしてかなかなか学校への正式な配属が決まらず、臨時講師として様々な学校を回りながらアルバイトをしてやりくりしていた。

そんな生活を長年続けてついに地元の中学校への正式な配属が決まり、子供の頃からの夢を叶えたその数週間後、兄の"てんかん"は起きてはならないタイミングで起き、そのまま帰らぬ人となった。

現代芸術家クリスチャン・ボルタンスキー氏が日本での展覧会初日の講演会で、

アーティストにとってのクリエイションの瞬間は少ない。ほとんどのアーティストが1つのテーマを繰り返す。年齢によってそれは徐々に変化してゆくがテーマそのものは同じである。自分自身の問題、トラウマを受け入れて回復してゆくための旅のようなものだ。

と語っており、兄の事故死は強烈なトラウマとして私の中に宿り、ジーマブルーとして今なおもその色を求める旅を続けている理由になっている。

このnoteを書いている8月28日は兄の命日。あの日に私の中で芽吹いた死生観と共に道を歩み続けた10年だった。次の10年、20年後はなにをしているのかはわからないが、ジーマブルーは形やサイズを変えて私のキャンバスに存在し続けるのだろう。

私達はそれぞれ違うジーマブルーを持っていて、それとどう向き合い、歩み、答えを描くのか。正解はないが逃れることはできないだろう。最後の瞬間に見えるその景色の為になにができるのか、今一度考えて見るのも良いだろう。


冒頭にも書いたが「ジーマブルー」はアレステア・レナルズ(Alastair Reynolds) の短篇集「Zima Blue and Other Stories」を元にした作品だ。残念ながら日本語訳されたものは出版されていないようだ。私自身も履修できていないのでいずれ読みたい。

「Zima Blue (English Edition) 」
https://www.amazon.co.jp/Zima-Blue-English-Alastair-Reynolds-ebook/dp/B002VCR0CQ/

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