語尾の話ー「〜しちゃった」と「〜してやった」が実は表裏一体の心理だということ

〜しちゃった。

自分の些細な行動のあらゆることをどこか後ろめたく思ってるのか、私は、ツイッターや話してるときなど語尾に「〜しちゃった」ってつけ「ちゃう」。

口癖、もしくは書き癖に気付いた時はめっちゃショックだった。自覚なかったけどなんかこれすごい後ろ向きな根暗みたいじゃん!!!
くそ〜っ、今度から、そんな外部的不可抗力に負けて行動していつも後悔してる人間みたいな語尾はやめて、自発的意志によって行動していて、なんにも後悔してないんだからな!みたいな人間になってやる!

なってやる!と意気込んだ所で、
さてどんな語尾が良いだろう?
「〜しちゃった」から「〜した」に変えるとあまりに味気なさすぎる。食べた。寝た。起きた。死んだ。
つまんねーー!!これならまだ食べちゃった、寝ちゃった、起きちゃった、死んじゃった、の方がマシである。
じゃあちょっと長くして「〜してきた」は?
食べてきた。寝てきた。起きてきた。死んできた。凄くウザい。なんか、じゃあお前は今どこにいるんだよ!?とキレたくなる。
〜してきた、ではその人が場所を移動してるんだなという動詞的な情報が余計に含まれてしまって、一番重要な、食べた、寝た、起きた、死んだという核心の動詞部分と被って鬱陶しい。こんな奴がいたら私は即ミュートする、かもしれない。

ではこれしかない!「〜しちゃった」のニュアンスをあまり消さず、かつ自由意志で自分の生活や行動を我が物にしてるみたいな印象を与える語尾!
それは、

「〜してやった」

である!

食べてやった。寝てやった。起きてやった。死んでやった。
なんて偉そうな台詞だろうか!
自由意志で生きてる感じがバリバリ伝わってくる。
確かにちょっと鬱陶しいけど、これは「キモカワ」や「ダサカワ」と同じように可愛らしささえ感じさせる!
命名するなら「エラカワ」である。

余談だが、この「エラカワ」の精神は内田百閒の随筆なんかにも近しいように思う。ちなみに私は内田百閒先生が好きだ。可愛いから。まだ随筆集『タンタルス』を途中まで読んだだけだけど。

話を元に戻して、この「〜しちゃった」と「〜してやった」が表裏一体だという話をしたい。
と言っても簡単な話だ。この語尾を使う人間は、どちらも自分の一個一個の行動に目を向けすぎって話である。

本来、人生なんていうのは何をしようが何をしなかろうがどうだっていいのだ。人1人が何かをなすなんてのには、世界は広すぎるし時間軸は長すぎるし人口は多すぎる。いやマジで人が多い、今新宿にいるんだけどこのウゴウゴ沢山いる人間達全員に感情とか記憶があるの怖すぎる。超怖い!
まあ兎に角そんなかんじで自分という億千万の中の1人が何をしようがしなかろうが世の中大して変わんないわけである。大統領になるとか起業するとか超売れる小説を書くとか木のお箸を節約するとか、確かにたった1人の人間がちょっとは世の中に関わることすることあるかもしんないけど、まあ食べたの寝たの起きたの死んだのというのは、後悔してもしなくてもまあ、あんまそんな変わんない。つまりそこに重点をおき注目する必要ナシなのである。
なのになぜ、「〜しちゃった」だの「〜してやった」だの、余計な修飾を付けようとするか。

こんな余計な修飾を付ける人間は、そこになんらかの意味を見出したいのである。
自分のちっちゃな人生になんらかの意味を見出したいのである。
「〜してやった」がどこか可愛らしく感じられるのは、そうした3歳の男の子が喧嘩して自分の力を自慢したがってるみたいなしょーもなさを読み手に感じさせるからだ。
これがもうちょっと年齢が上がって「夜露死苦」とかになってくると、これを可愛らしいと感じてくれる人は少し減る。
ちなみに私はこれも可愛らしいと思うタイプである。…………いや、「嫌いじゃない」くらいに留めておこう。

内田百閒先生は「〜してやった」の人だが、裏っかわに「〜しちゃった」と微量の後悔が見え透けるため愛嬌がある。
「タンタルス」はギリシャ神話の飢渇の亡者、タルタロスのことであり、大酒飲みの自身をタンタロスに例えて自虐・諧謔しているのが表題の所以だ。
なんかこう、ちっぽけでも生きてて良いじゃんねって思わせてくれるのが内田百閒先生である。
文章の、人間への圧倒的肯定、最高!!

最後になるが、散々「〜しちゃった」を否定しといてなんだが、「〜しちゃった」には後ろめたさだけでなく、「後ろめたいけど……やっちゃう」みたいな甘美なニュアンスも含まれていて、実は結構好きである。

「〜してやった」って語尾、誰か使わない?

by. 水無月透子

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