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初めての模擬刀購入「歌仙兼定」

 きっとその日僕が竹光を買ったのは、起きてすぐに、山田五郎が時計について造詣深く語っている動画を見たことで、僕のコレクター魂が刺激されたからに違いない。


  • 「竹光」:竹(樫)を削ったものを刀身にして刀のように見せかけたもの。

  • 「模造刀」:「銃砲刀剣類所持等取締法施行規則」第17条の4に規定する「刀又はあいくちに著しく類似する形態を有するもの」。

  • 「模擬刀」:日本刀の模造品。


 以前、僕はドイツ軍用拳銃モーゼルC96のモデルガンを買ったとnoteに書いた。5万円弱と、なかなかのお買い物だが、今も気に入って飾っている。

 何かのnoteで書いた気がするが、実は僕は剣道を少ししていた。資格で言えば剣道一級を持っている。
 一般に「剣道三倍段」という言葉が流布しているが、これは剣道と互角に戦うには、他の武道は三倍の有段者でなければならない、という考え方とか。

無手(徒手)の者が太刀をもった者に勝つためには3倍の段差が必要という意味。また「太刀をもった者が薙刀に勝つためには2倍の段差が必要」とされる

Wikipedia「異種試合」剣道三倍段

 その真偽は置いておくとして、一級とはいえ、精神的には僕は剣道家よりで、ガンマンではない。なので、竹刀だけでなく、竹光を所有したいという思いはずっとあった。
 それを拒んでいたのは、ひとつには金額であり、そしてもうひとつは史学を学びながらも、名刀に疎いという自身の知識的弱点のためである。

 だが、冒頭に述べたように、定期的に欲しくなってはいろいろと探した結果、「細川家の刀はあるだろうか」と思い至る。
 元総理大臣・細川護熙を現当主とする、細川家は戦国時代には存在している。コレクション自慢のnoteなので、ついでにこれも触れるが、細川護熙氏のサインも僕は持っている。

 細川と名刀とくれば、刀剣が流行して久しいのでお分かりの方も案外多いのでは。タイトルにも書いた「歌仙かせん兼定かねさだ」である。

 本物は細川家で伝来しているだけでなく、室町時代につくられたとされているから、僕の専門とする時代だ。
 和歌も好きなので、歌仙という名称も素晴らしい。刀が武器であると同時に芸術品であることを感じさせる響き。
 細川と和歌、といえば細川幽斎の「古今伝授」が思い浮かぶ。古今和歌集の秘伝を伝える重要な人物で、誰でも知ることのできるものではない。

歌仙兼定の名前の由来は、肥後熊本藩主であった細川忠利の施政がはがどらないのは側近たちが不忠であるからとして、隠居していた忠利の父である細川忠興が36人(一説では6人とも)をこの刀で手打ちしたことを三十六歌仙になぞらえたて名付けたという伝承に由来している。

Wikipedia「歌仙兼定」名前の由来

 細川忠興の妻は、クリスチャンの細川ガラシャ。宗教・キリスト教文化に関心も強い僕には、これほど関係性の見いだせる刀はあるまい。むしろなぜまだ買っていなかったのだ。
 ちなみに、Googleで歌仙兼定と画像検索すれば、紫髪のイケメンしかほぼ出てこないものの、僕は刀剣を擬人化させた「刀剣乱舞」などの諸作品には触れたことがない。

 いろいろ見ていく中で、軍刀もいいなと感じたけれど、そこはお財布事情を鑑みてまた今度に。
 話が近代に入ったので、細川と、趣味の関わりをもう一つ。大正期の細川護立は、「白樺」のメンバーとの交流深く、美術上、重要な人物であった。僕の好きな文豪は武者小路実篤。雑誌「白樺」の代表格のひとり。

 直接は関係なくとも、モノの周辺の文化・歴史、そして自身の趣味嗜好を、モノを通して説明する試みこそ、博物館の原型・貴族の珍宝室「ヴンダーカンマー」なのである。

※細川忠興と「歌仙」の関わりについての史料例
長屋重名 著『肥後金工録』(出版:明35.10/リンク先該当ページ)


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