「あの……主人のことなんですが」

依頼者を見た瞬間、容易に想像がついた。「旦那の件だな」と。

「隠れてレトルト食品を食べているみたいなんです。私の手料理はいつも『美味しい』って言って食べてくれてるのに……」
「なるほど。で、奥様としては、何がお望みで？」
「主人が、二度とレトルト食品を食べないって約束してくれれば……」

――数日後。

事務所には依頼人の奥さんと、その旦那さんがいた。

旦那さんは「めんどくさい」を前面に出しながら、「すみませんでした。二度とレトルト食品は食べません」と言った。

あまりの棒読みに、こっちまでムカついてくる。

「これで満足だろ？」
「ええ。さよなら」

――ズキューン。

事務所内に響き渡る銃声。

バッタリと倒れる旦那さん。

「グロックG34のコンバットマスターですか。良い銃だ」
「ジョン・ウィックが使ってた銃よ。あの映画、大好きなの」

奥さんは、まるで財布でもしまうかのように、銃をトートバッグにしまった。

「どこで銃の使い方を？」
「2年前、エルサルバドルで」

――こりゃマジだ。

今まで数えきれないくらいのヤバい奴を見てきたが、この人はダントツでキレてる。

「あとの処理をお願い」
「お任せを」
「あ、別の依頼があるの。また連絡するわね」

どんなヤバい依頼なのか。

ゾクゾクする。

（了）

たらはかにさんの企画「毎週ショートショートnote」、今週のお題は「レトルト三角関係」でした。

三角関係が入ってませんね…。
いくつか思い付いたんですが、他の人とネタが被っていたのでやめました。

先週のお題は「洞窟の奥はお子様ランチ」でした。