私がシャンプーをしていると、四歳息子が「おしっこ」と言い出した。
ママに「なんで、してこなかったの」と怒られる。
息子は「パパ、おしっこ」と私に救いを求めた。

もう一人でトイレもできる四歳。お風呂でジョーは禁止。
ただ正直……私と二人の際は「いいよ」と許していた。
いつしか息子の中でも、パパはジョーＯＫとなってしまった模様。

今夜は油断したのだろう。
――悪いのは分かってる、これはパパとの内緒、でも我慢できないよ。
そんな心の内が透けて見えた。

コンマ数秒逡巡し、聞こえなかったふりをする。
判断を委ね、シャワーでシャンプーを激しく泡立てるポーズをとった。
ママがその様子を見て「今回だけよ」と許す。
ほっとした息子は私の隣で放出をはじめた。

ジョーの飛沫を左足に感じるも、知らんぷりした手前甘んじて受けいれる。
薄目で確認したら、昔よく遊んだアヒルのおもちゃが床に転がり哀しい目で見上げていたので、そっと救出した。

洗い場に置いてけぼりの浮人形

（あらいばにおいてけぼりのうきにんぎょう）

【季語（夏）：　浮人形、浮いてこい】