見出し画像

名前にこめられるもの。想いとネーミングとパーパスと

人は、一生でいくつ名前を考えるのだろう。

愛犬や愛猫に授けた名前。
想いをこめた子どもの名前。
一生ものの名前もあれば、
ブログ名に動画名、レシピ名などなど
SNSによって日々の暮らしの中で、
名前を考える機会は増えていますよね。

僕自身コピーライターという職業柄
名前を考える機会は多いわけですが、
「ネーミング」の考え方を知っていると
何かと役立つと思うんです。

名前には、名付ける人の想いや願い、
メッセージをこめられます。
それでも、あれもこれも、
全部をこめることはできません。
落語『寿限無』のようには。。

寿限無 寿限無 五劫の擦り切れ 海砂利水魚の 水行末 雲来末 風来末 食う寝る処に住む処 藪ら柑子の藪柑子 パイポ パイポ パイポのシューリンガン シューリンガンのグーリンダイ グーリンダイのポンポコピーの ポンポコナーの 長久命の長助 

生まれてきた子どもに
長生きしてほしいと願う夫婦が
寺の和尚に名づけを依頼し、
候補となる縁起の良い言葉を
すべて繋げ世にも長い名前になった。。

『寿限無』は極端な噺だとしても、
想いが強すぎてキラキラしたり
凝りすぎて何を表す名前だったのか
わからなくなったりすることって、
身の回りでもいろいろとありますよね。

想いが強いことだって、
願いが多いことだって、
いいことですよね。本来は。
でも、それを名前に落とし込む、
というのは意外と難しいこと
なのかもしれません。

だってそれは、
我が子が一生を共にする名前だから。
もしくは、
良いところがたくさんある商品だから。
はたまた、
自分が一からつくりあげたモノだから。

想いが大きければ大きいほど、
視野がグッと狭くなりがちな時こそ
軸を明確に体系立てて考え、
俯瞰して見られるといいですよね。
そこで、ネーミングの考え方の出番です。


ネーミング開発のプロセス

だいたいこのように進めています。
図には基本的なことしか書いていませんが
最近大切だと感じる『パーパスの定義』など
それぞれ少し補足していきます。


1) ヒアリング

◆ブランド・商品誕生の背景
→ストーリー、背景
→開発者や担当者の想い
→ターゲット
→提供価値、強み
→目指したいポジション、ゴール 
 などなど

◆市場の状況、競合について
→企業、ブランドの市場シェア
→競合の特徴、他社商品の強み
→立ち位置、トレンド、傾向
 などなど

依頼してくださるご担当者から
商品やサービスについてお聞きします。
「ここがすごいんだよ!」とか
「この商品で世の中を
こう変えたいんだ」とか、
こんなことに苦労したなど。

大きな方向性はヒアリングの場で
つかむようにします。


2) フィールドワーク
スーパーで売っている商品なら、
スーパーに行って売場をじっくり見ます。
そして、手に取ってみたり、
買って食べたり、試してみたり。
ものによっては周りの人に
試してもらってインタビューしたり、
アンケートに目を通したり。

・競合にはどんな商品名があるのか
・商品群のトレンドは何か
・どんな人たちが買うのか
・どういう買い方をされているのか
・ロゴ、パッケージにした時のイメージ
・商品が店頭に並んだ時の印象
 などなど

商品が世に出た時を想定するための
情報を持つ、そしてこれから
考えるための材料を集めておきます。

PCの前にいるだけでは、
つかめないものがあります。
やっぱり体験、体感することに
勝るものはないですよね。


3) ブランド・商品のパーパス定義
ネーミングでパーパス(=存在意義)定義?
と思われるかもしれませんが、
( 実際ネーミングを考える上で
パーパスの定義は語られることは
あまりないかもしれません )
図でも太枠にしているように、
最近この定義がとても大切だと
感じます。

企業自身のパーパスはもちろん、
ブランド・商品においても
「なぜ、このブランド・商品が
新たに生まれる必要があるのか。
この商品が世に出ることで、
社会をどう変えるのか」

パーパスを定義することで
商品のあり方が見えてきます。


4) 軸・ゴールの設定
定義したパーパスにもとづき、
・アイデンティティは?
・獲得したいポジションは?
・目指す「ゴール」は?
・理想の未来は?

これらを設定します。

そうすることで、
強く太い明確なネーミングの軸が
設定できます。


5) アイデア出し
ようやくアイデア出しスタートです。
軸に沿ってあらゆる角度から
案出しをしていきます。

→ダイレクトに表現するのか?
・想い、志
・商品特徴
・機能価値
・情緒価値
・パーパス などなど

→機能をイメージさせる表現にするのか?
・強み、提案性
・使うベネフィット
・商品がつくり出す「未来」 などなど

→世界観をあらわす表現にするのか?
・世界観、イメージ
・アイデンティティ
・ストーリー などなど

→ユニークさを重視した表現にするか?
・意外性
・個性的
・先進性、未来感
・語感、響き などなど

いろいろな可能性の中から
方向性をさだめたら、
どういう工夫をしていくのか。

★ネーミング技法
一例として
・組み合わせ
→事業領域+志、商品群+技術...
・意味+語呂合わせ

・混ぜる
・省略する
・頭につける
・語尾につける
・意外なものとくっつける
・オノマトペ

・方言にする
・外国語に変換
・外国語っぽくする
・繰り返す
・並べ替える
・韻を踏む
・擬人化
・メタファー
・ダジャレ
・逆から読む
・数字にする
・思い切り長くする
などなど

こうして様々なネーミング案を
検討していきます。


6) 商標の簡易検索
ようやく「これだ!」と思える
ネーミングを生み出せても
すでに商標登録されていたら・・
すべての水の泡ですから、
特許庁「特許情報プラットフォーム」で
登録したい分類で同じ名前がないか
チェックします。

7) プレゼン・決定
ネーミングへの反応が
ダイレクトに感じられる場です。
万全の準備をし、よく寝て、
自信を持ってプレゼン!
すんなり決まることもあれば、
紆余曲折することもあります。
信念を持って、粘り強く。


8) 商標登録
決定したネーミングを商標登録するために
分類を指定し弁理士に依頼をします。


9) ロゴ化
世の中にどういう印象で覚えてもらうのか。
生活者と共有したいイメージは何なのか。
アートディレクター、デザイナーに
ネーミングに込めた想い、狙いを伝え
一緒に世界観をつくりあげます。


10) タグライン開発
ネーミングだけでは伝わりきらない
想いや価値、パーパスを
一行のタグラインに込め、
価値観への共鳴、期待の醸成が
できるようにします。


11) コミュニケーション
商品・サービスの登場と
世の中の需要や期待とを結びつける。
世の中に広く波及させ
一人ひとりに深く刺さるための
戦略づくり、そしてクリエイティブ。
誕生から登場をサポートした後は、
成長のサポートをしていきます。

✎✎✎✎✎✎✎✎✎✎✎✎

と、このようにいくつもの
ステップを経て、世の中の
様々なネーミングは生まれます。


このnoteでお伝えしたかったことは、
名前を考える、検討する上で、

自分が大切にしたいものは何か、
優先順位をつける。

名前にすべてを背負わせない。
想いを一つに絞るなら何か。

名前の印象を俯瞰して見る。
世に出た時を想像する。

パーパスを定義する。

これらのことが大切なんじゃないか
ということです。

例えば、、

『MIRAI』 トヨタ自動車

「クルマの、地球の、そして子供たちの
未来のために」という思いが
込められた『MIRAI』。
未来の水素社会実現のために
挑むトヨタの姿勢。
HOPE~水素社会と、これからのエネルギーのはなし~
上記動画を見ると『MIRAI』のパーパスも
見えてきます。


■フーディソン

ITを活用して水産業界の
再構築に挑む「Foodison」は
Food<食>と発明家 Edison<エジソン>を
組み合わせて社名にしたそうです。
食の業界にイノベーションをおこす、
新たな価値を生み出すという
パーパスの表明にもなっています。


■「諸国良品」 良品計画

無印良品が展開する
産地直送サービス「諸国良品」
日本全国の生産者とお客さんを
ネットストアでつなぎ、
地域の食べ物、モノ、体験を
届けることで地域の価値を
掘り起こそうとする想いが見えます。

✎✎✎✎✎✎✎✎✎✎✎✎

上記の事例のように
いい商品をつくった上で、
パーパスにも共感してもらえれば
応援してもらえたり、
愛される商品・サービスに
なっていきます。
その大きな部分をしめる
ネーミングとパーパスの
つながりは大切だと感じるのです。

名前に込めた想いが、
名前と一緒に何度も呼ばれ
幸せなかたちで共有されますように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?