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[こくまろごった煮カレー]を10年越しで好きになった話。

「今日の夕飯はまたこくまろか…」
部活から帰ってくると部屋中にカレー臭が漂っていることは我が家ではよくあった。たぶん週一は作っていたと思う。


高頻度で作ると言ってもこだわりのカレーというわけではない。

玉ねぎ、にんじん、豚肉、ニンニク3かけを一気に鍋にぶち込んで水煮にする。じゃがいもに火が通ったらルーを入れてかき混ぜるだけの本当に簡単なものだ。
ルーも決まってこくまろの中辛。

母曰く「これがいっちばん簡単なのよ」だそうだ。


3人兄弟の私たちを育てながらパートを掛け持ちしていた母はいつも忙しそうだった。家事と仕事のバランスを取るために編み出した苦肉のレシピが「ごったにこくまろカレー」だったのだと思う。

ただそんな母の努力虚しく、高校生から10年近く自分はカレーが嫌いだった。
ドロッとした食感。辛いとも甘いともいえないルーの味。
食べ終わると同時に急いで夜のパートに出る母の背中。

カレーのせいだけではなかったと思うけどカレーは当時の慌ただしい実家の様子と絡み合って、いつのまにか嫌いになってしまっていた。
(実際週1のカレーが出過ぎだったせいだとも思う)


カレーを好きになったのは、社会人になって、実家を出て、彼と二人暮らしをするようになってから。

彼がカレーが好きだというので、実家で作っていたこくまろカレーをそのまま作って出したらガツガツと美味しそうに食べていて、「なんでこんなのをそんなに美味しそうに食べてるんだ?」と呆気に取られてしまった。

嘘だろという疑いの念をかけながら、10年ぶりにおそるおそる食べてみたカレーは、なぜかおいしかった。
[こくまろごった煮カレー]は実家で食べていたのと同じ味なのに、不思議だった。

その出来事がきっかけで、今では仕事が忙しくなるとカレーを作っている。(母とは違うから肉とたまねぎはちゃんと炒めてから水を入れているけどね)

一方で兄弟全員が大人になった実家では、カレーを作る頻度がぐんと減ったよう。今度実家に帰ったら作ってあげようかな。

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