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おじいちゃんのお野菜市。(1093文字)



近所の鍼灸院軒先の週一野菜市。
ここに欠かさず通っている。

春ならブロッコリー、蕪、スナップエンドウ、新玉ねぎ
夏ならきゅうり、トマト、じゃがいも、かぼちゃ
いまなら秋ナス。


どの野菜もこれまでの概念が
かわるほど美味しい。
瑞々しくって、プリっとしていて皮がうすい。
どうしたら同じ種から野菜になるまで、
ここまで違いがでるのか、さっぱりわからない。
けれど、そこのお野菜はどれも味が濃く、
えぐみもない。


ただ蒸す、焼く、生で。
調味料は少なくても、十分料理として成立する。
自分の料理の腕前が上がったのかと
錯覚するほど、手を加えなくても野菜自体が美味しい。

息子も私も普段なら食べない野菜も
ここのならなんでも食べられる。
好きになる。
鍼灸院のわんちゃんも
こちらの野菜はもりもり食べるそう。


このお野菜達は鍼灸院の先生の叔父さんが
お一人で育てている。
一度お姿を拝見したことがあるのだけれど、
85歳のおじいちゃん。



我が家の献立は
おじいちゃんのお野菜を中心に回っている。
まずは足がはやい野菜から使い、
保存のきくものは後から。
量があるものは最初から。
次の販売日まで大事に大事に使う。


ご近所さんなのを良いことに、
毎回肩が外れそうなほど
たくさん買って帰る。
それでも野菜室のストックは一週間もたない。

同じように楽しみにしている方が
たくさんいるのだろう、
少し出遅れると一瞬で品薄になる。
どうしてもその時間にいけないときは
鍼灸院の先生にお願いし、お取り置きしてもらうこともある。


美味しい
近い
新鮮
良心価格
安心

3拍子どころか5拍子そろったお野菜を
作ってくれているおじいちゃん。

秋ナスがなくなったら終わろうかな
そろそろ休みたい

引退宣言を鍼灸院の先生から聞く。


そうなると叔父も
やることなくなっちゃって
ぼーっとしちゃうんじゃないかと心配なんですけどね~


寂しい!悲しい!残念!

でもそりゃそうや。
寒い日も暑い日も、休日も雨風も関係なく
野菜たちのお世話は休みなし。
85歳には、いや何歳にだって
農家の仕事は体力仕事。

お疲れさまでした!!
と、大人になり
素直に事実を受け止めた。


これまで美味しいお野菜をありがとうございました。
毎週美味しくいただいていました。
どうぞゆっくりされてください。


感謝の気持ちを手紙にしていたら
息子が「ぼくも書いていい?」

マグロの佃煮、沖縄の塩飴とお手紙2通を
先生を通し渡してもらった。



後日
「叔父がよろこんで大根の種を蒔き始めた」と
先生のうれしい顔とともに報告があった。

意図していなかったとはいえ、
まだもう少しおじいさんのお野菜がいただけると思うと
うれしい。

もう少し美味しい旬のお野菜とともに、
季節の移ろいを感じさせていただこう。


いただいたご厚意は、今後の執筆の原動力にさせていただきます。 これからも楽しんでいただける記事を執筆できるよう 精進していきます。 今後とも応援宜しくお願い申し上げます。