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Web制作において、着手金をもらわずに制作を進めることのリスクについて、もう一度考えなおしてみよう。【交渉のポイントと失敗談あり】

新型コロナの影響で、Web制作案件が頓挫してしまい、請求すらできなくなってしまった、などという話をSNSなどで見かけることが増えてきました。

ちょうど3月と4月は、展覧会やイベントなどに向けて、Webサイトの準備などをしてきたところで、中止になってしまったようなケースは多いと思います。

コロナ関係なく、案件が頓挫して請求しても制作費が支払われない、という話は制作業界にはよくあるのですが、こういう状況を機に、改めて制作におけるリスク回避について見直すべきなのかと思います。

制作費未払いなどの話が出てくると、「きちんと契約を結んでいないのがいけないんだ!」などと言う方が多いですが、契約とか発注って平気で無視する人もいるんです。

契約や発注は、ないよりはましですが、頓挫したりトラブった案件の制作費を回収するのは、なかなか骨が折れます。
私も経験あるのですが、弁護士に相談といっても、先方も支払えない理由を提示してきたりすると、やり取りがかなり大変なんです。
弁護士費用もかかりますし・・

もちろん良心的な企業は、きちんと制作した分の費用は払っていただけますが、個人だったり零細企業を相手にしていると、しれっと未入金だったりするケースも多々あるのです。

色々なリスクを回避するのに、契約も発注も大切ですが、私が一番大切だと思うのは着手金です。
未払いとか、請求後の値引き要求などについては、リスク軽減策として「着手金の先払い」が一番効果があると思います。

私はただのWeb制作会社の役員ですが、10年以上色々な企業様と制作案件を進めてきて、着手金をいただくことが一番大切だということを肌身に沁みて感じました。

今回は、この制作における着手金において、その大切さと交渉の仕方について個人的な失敗談も兼ねて書いてみたいと思います。
特に、制作会社の経営者やディレクターの方のお役に立てばと思います。

なぜ、制作業界では制作着手金の請求をしないのか?

家を建てる場合には、着工するのに着工金がかかります。

他の業界では工期が長い場合、何回かに分けて費用を請求するのが当たり前なのに、制作業界では着手金という文化は、あまり浸透していないように感じます。

もちろん、着手金を請求する制作会社もありますが、たいていは発注書くらいで作業を進めてしまう制作会社が多いように見受けられます。
(中には発注書すら貰わない、出さない会社もあるようですが・・)
今まで私が所属したWeb制作会社でも、着手金を請求する会社は一社もありませんでした。

ではなぜ、制作業界では着手金を請求しない会社が多いのでしょうか?

理由は、制作ビジネスが企業を相手にすることが多いという点と、制作業界特有の仕事の進め方が背景にあるのではないかと思います。

Web制作は、基本的には納品・検収が完了して初めて請求を立てられることが多いです。クライアントの要望やニーズを最優先し、すぐに制作に動き出すことフットワークの良さが求められる傾向もあり、納品物が出来ていない状況で先払いで請求を立てるということがあまりないのです。

これはWeb制作だけでなく、執筆など、その他制作の仕事に関してほぼ当てはまるのではないかと思います。

企業によっては、着手金を支払うということが認められていないケースもあり、交渉したとしても、イレギュラーな支払いを、担当者が社内で申請するのを面倒くさがることもあります。

こういった背景より、制作業界では着手金を支払ってもらう、支払うという慣習が他の業界より根付いていないのかと思います。

とはいえ、制作の仕事こそ着手金がないと、本当は制作会社にとってはリスクが大きいのです。

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