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田んぼに学び、新米を食べられるという幸せ

「明日は新米だぞ!」

そう義理の父が夕食時に家族全員に話した。

我が家は自給的米農家で、義父と義祖母が自分たち家族が1年間食べる分と親戚に配る分のコメを作っている。

私も移住してきてから毎年5月になると田植えの手伝いをするようになり、今年でもう6回目の田植えを終えていた。

札幌出身の私は、移住してくる前には何度か田植えや雑草取り、稲刈りの手伝いをしたことはあったものの、本格的に毎シーズン田植えをするようになるとは思ってもみなかった。

流石に6回目ともなると、田植えの時の作業(主に田植え機への苗の手渡しや、四隅の苗植えなど)もスムーズにできるようになるもんで、我が子たちも3歳を過ぎると「自分達が食べる分を植えようね」と、ちょっとだけでも手伝いをさせるようにしている。

3歳になる娘も今年からスタート 去年は汚れるのを嫌がって見学のみ

畔から届くところをやればいいよ~というんだけど、今年はなぜかすごく張り切っていろんなお手伝いをしてくれた。

レーキで田植え機が通って穴が開いたところをならす作業は、兄たちがやってるのを見て真似したがったけど、結局上手くいかず断念。でもこうやって色々覚えていくんだよね。

まだ戦力にはなってないけど、この後姿を見ると頼もしい。

足場が悪いところを重たい農具を持って歩く。暑いけど、蚊だけじゃなくヌカカ(糠蚊)という厄介な、そして刺されるとかなり痛い厄介な虫もいるので長袖は必要。ヒルもいる。

そんな中でも子供たちはたくましい。

手伝いしながらもカエルをつかまえてた長男。生き物が好き。
伯父さんに苗床を渡す長男。

7歳になる長男はもう十分な戦力に数えられていて、今年は特に力が必要な作業も率先してやってた。先ほどあげた3歳長女のように、最初の頃は田んぼにも入らず端っこに苗を植えこんでただけなのに、立派になったなぁと感心。

田植えの時は妻の弟夫婦もお子さんを連れて手伝いに来るので、子供たちは嬉しそうだった。

長女はちょっと苗を植えたら、1歳上のいとこのお姉ちゃんとあそんでた

こうやって毎年田植えをして、9月中旬にお米ができるまで田んぼの前を通って学校に通い、蛍を見て、虫取りをする。稲刈りが終わっても、この土地には落穂を拾いにマガンが毎年9月に飛来し、白鳥も越冬のためにシベリアからやってくる。

私たちの住む地は、日本に飛来するマガンの約8割がやってくる場所なのです。

田んぼは子供たちにとって、遊びの場所でもあり、学びの場所にもなっている。本当に考えられないほどいい環境で、こういう時に移住してきてよかったとものすごく実感する。

御年92歳になるばあちゃんは、現役農家。

お米だけじゃなくて、野菜でも果物でもなんでも子供のうちに自分が食べるものを自分で育てる(のを手伝う)というのはやっておくべき経験だなと常々思う。

そして9月23日、新米が届いた。

稲の刈り取り収穫は外部に依頼しているので、刈り取りの2日後くらいに精米前のお米が米袋にぎっしり詰まって届く。

義父さんの膝があまりよくないので、例年は私が納屋への運び込みを手伝うんだけど、今年は(なぜだか)早朝に届けられたために、寝坊した私の代わりに長男が手伝ってくれたらしい

アリガトウゴザイマス!

2023年の新米!!

そして9月25日。精米を終えた新米を食す。

普段は私か妻が子供たちの茶碗にご飯をよそうんだけど、この日は長男が弟、妹の分のごはんをよそってくれた。

「新米の匂いがする!」

「稲わらっぽい匂いもするね!!」

炊飯器を開けた長男が言った。私、ちょっとびっくり。 

長男は違いの分かる男に成長していた。新米の匂いが分かるのだ。笑

でも、あながち誇張でもなくて、実際に炊き上がりのお米の匂いは古米と違うし、お米の水分量も違うので炊き上がりのお米の触感もふっくらしている。水分量も新米用に調節している。

子供の舌っていうのは敏感で、ほんの少し味付けを変えただけでも感じ取る。新米の味や匂いがわかってもなんら不思議ではない。

でも、それは収穫したての新米をすぐに精米して食べたことがあるという経験があるから区別がつくわけで、新米も古米も何も知らずに食べていた都会育ちの私にとってはちょっとうらやましくもあった。

1993年の米騒動の時、当時10歳の私がタイ米を初めて口にした時にはさすがの私も「なんだこのお米!!!??」と味の違いにびっくりしたのを覚えているけど、妻がスパイス家庭料理をする人なので、我が子たちは新米も古米も、いうなればバスマティライスもジャスミンライスも食べているわけです。

そんな息子から出た「新米は稲わらの匂いもする」というセリフは、子供の頃の私よりもはるかにお米に対する感覚が豊かなんだろうなと。

長男ほど具体的な言葉にしないまでも、次男も長女も結構ご飯を残すことが多いのに、この日は二人ともお茶碗3杯も食べたのでちゃんと違いが分かっているのが傍目にもわかりました。

自然豊かな環境で、自然に学びながら育ってほしいなという移住当初の私の願いは、この長男のセリフと下の子たちの食べっぷりで、十分すぎるくらい叶っているんじゃないかなと思うのです。

田んぼ、、ありがとう!

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