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Feature FUTURE

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PLANETS CLUB「 こども未来部」メンバーによるリレーマガジンです
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#子ども支援

花のない桜を、見上げたことはあるか。

花のない桜を、見上げたことはあるか。

 3月某日、午前8時30分。塾としては早い時間帯に、中3担当講師陣が校舎に待機する。この日は、公立高校入試の合格発表日である。スタッフ同士で雑談を交わしながらも、互いに緊張感を隠せずにいる。それも当然だ。積み上げてきた時間の結果が、この後数分で決着をつけられてしまうのだから。
 ほどなくして、塾の電話が立て続けになり始めた。自らの結果を確認した生徒たちからの電話である。祝福、ねぎらい、あるいはなぐ

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"bring-brung-brungen" ーふぞろいなものを学ぶということ

"bring-brung-brungen" ーふぞろいなものを学ぶということ

He often breaks a vase. 「彼はよく花瓶を壊す。」
He broke the vase. 「彼はその花瓶を壊した。」
The vase was broken by him. 「その花瓶は彼によって壊された。」

 中学生が英語を学ぶうえで現れる難関の一つが、上のような「動詞の不規則変化」だ。過去の時制で用いる過去形、特定の構文で用いる過去分詞は、規則通りの変化なら、通常動詞の

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教科の生徒に推しを習う ー学び合いのラポール形成

教科の生徒に推しを習う ー学び合いのラポール形成

「とにかく、本っ当に名作なんです。タイトルの意味だけじゃなくて、ちゃんと中身を調べてきてください!」
 呆気にとられた。こんなに声を張れる人だったんだ。受け持って半年、そんな一面は見たことがなかった。
 「事件」は春期講習の授業後に起こった。その日は英作文(お題は“What do you do in your free time?”)の添削答案を返却し、クラス全体に向けて解説をした。うち一人はアニ

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向学心の掛け算、支援者の無力 ー春を目指した冬のマラソン

向学心の掛け算、支援者の無力 ー春を目指した冬のマラソン

 想像に難くないだろうが、新年が明けてから桜前線が北上し始める頃までの期間は、塾業界にとって最多忙のハイシーズンである。「師走」が終わっても、こちらの「師」は3月まで走りっぱなしだ。もちろん独りではない。生徒(や保護者)と共に、春を目指して持久走を走り続ける。
 今回は、前回の記事では概念の紹介にとどめた「ゆらぎ」に焦点を当てるため、駆け出しの講師が初めて受験生を送り出した話を綴りたい。

1.直

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教育・子ども観の「コペルニクス的転回」 ー〈子ども支援学〉との出会い

教育・子ども観の「コペルニクス的転回」 ー〈子ども支援学〉との出会い

 「大人スタッフの皆さんにお願いがあります。ケガをするかもしれない、などの重大な危険がない限り、子どもたちには一切の指示や命令をしないでください。」
 私は一瞬耳を疑った。そんなこと、できるはずがない。子どもは田んぼの脇に生えている花や草の名前を知らないだろうし、アスレチックに設置されている遊具の使い方だって分からないだろう。混乱気味の私に、ボランティア団体のスタッフは笑顔でたたみかける。
 「だ

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