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【オオクニヌシ】傷ついたウサギを助けた心優しい神様なのに兄弟からいじめられ2回もキルされた話【日本神話】

どーも、たかしーのです。

今回は日本の神話に登場する『オオクニヌシ』について、書いていきたいと思います!

かの有名な「因幡の白兎」のエピソードも、登場しますよ!


これまでのお話

おさらいも兼ねて、ざっとこれまでの話の流れを書いていきます。

天地開闢(てんちかいびゃく)

混沌としていた世界が天と地に別れ、神々が出現します。
その最後に出現したのが、夫婦神であるイザナギイザナミでした。

国産み

イザナギとイザナミは、天沼矛(あめのぬぼこ)を使って、海をかき混ぜ、国土を固めると、これが淤能碁呂島(おのごろじま)となり、国が産まれます。その後、この島に降り立った2柱は結婚し、今の本州、四国、九州を含む8つの島・大八島国(おおやしまのくに)を産むことになります。

神産み

国を産んだ次に、35柱もの神も産んだイザナミでしたが、火の神火之迦具土神(ひのかぐつち)を産んだ際、大やけどを負ってしまい、これがもとでイザナミは亡くなってしまいます。

これにショックを受けたイザナギは、イザナミを蘇生しようと、死者の世界である黄泉の国を訪れます。そこで、イザナミに会うことは成功しますが、そこでの約束を破ってしまい、結果、2人は永遠に離別することとなります。

ちなみに、最後にイザナミが「一日に千人ずつキルしたる!」と言い放ったあたりから、イザナミは名前を替え、黄泉津大神(ヨモツオオカミ)として黄泉の国を治めるようになったそうです。(まさに闇堕ち…)

黄泉の国から地上界である葦原中国(地上界)へと逃げ戻ったイザナギは、日向(現在の宮崎県)で、汚れた体を浄化するために禊をしたところ、左の眼からアマテラスが、右の眼からツクヨミが、鼻からスサノオが、それぞれ誕生します。この神々は三貴子と呼ばれるようになります。

これを喜んだイザナギは、アマテラスには高天原を、ツクヨミには夜の国を、スサノオには海原を治めるよう命じます。

しかし、泣いてばかりで、海原を全く治めようとしないスサノオは、イザナギによって、葦原中国から追放されてしまいます。スサノオが泣いていた理由は、母であるイザナミに会いたいということからでした(イザナギの鼻から産まれたのにどうして…??)

その後のイザナギは、晩年は近江国の多賀という地で過ごしたそうで、この伝承に基づき、滋賀県犬上郡多賀町にある多賀大社では、生命の親神様としてイザナギとイザナミを祀っています。
なお、この多賀大社の分社(分祀)である多賀神社は、全国に約250社もあるそうです。

多賀大社 社殿(wikipedia)

誓約(うけい)

追放されたスサノオは、イザナミに会いに行く前に、実の姉であるアマテラスに挨拶をしようと、高天原を訪れますが、これを高天原を奪いに来たと勘違いしたアマテラスは武装して、スサノオを出迎えます。

これを見たスサノオは、誓約による占い勝負をアマテラスに挑み、これに勝利。身の潔白を証明し、高天原に居座ることとなりました。

ですが、あまりにスサノオが高天原で乱暴狼藉を働くため、最初は実の弟としてかばっていたアマテラスも、とうとう耐えかねてしまい、天岩屋戸(あまのいわやど)に引きこもってしまいました。

天岩屋戸

太陽の神であるアマテラスが引きこもったことにより、世界は闇に包まれ、あらゆる災いがすべて起こるようになりました。

この一大事をどうにかするため、知恵の神であるオモヒカネを中心に、アマテラスを外におびき出す大作戦を考え、これを実行に移します。
この準備の際に、神々に命じて作らせたのが、三種の神器である八咫鏡(やたのかがみ)と八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)です。

作戦は大成功!
無事、アマテラスを外に出すと、天岩屋戸に注連縄(しめなわ)を張って封じ、世界に再び明かりが灯るようになりました。

八岐大蛇(やまたのおろち)

一方、アマテラスが引きこもる原因となった実の弟スサノオは、当然ながら罰を与えられることとなり、高天原からも追放されることになりました。

追放されたスサノオがたどり着いたのは、葦原中国にある出雲国でした。
ここで、八岐大蛇の生贄に捧げられそうであったクシナダヒメを、自分の嫁にすること条件に助けて、八岐大蛇を討伐
ここで倒した八岐大蛇からドロップしたのが、3つ目の三種の神器である草薙剣(くさなぎのつるぎ)でした。
スサノオは、この剣を迷惑をかけてお詫びなのか、アマテラスに献上し、これで三種の神器が全て揃うことになります。

その後、八岐大蛇を討伐した出雲国が気に入ったスサノオは、この地に住むことを決め、クシナダヒメとめでたく結婚をして、子孫となる神様を産むことになります。

こうして、生まれた子孫がまた子供を産み…とつながり、今回の主人公である『オオクニヌシ』へと、古事記の物語のバトンが渡されることとなります。

そもそもオオクニヌシとは?

出雲神話の最高神

大国主(オオクニヌシ)は、地上界である葦原中国を開拓した「国造りの神」であり、地上に住む国つ神を代表する神として登場します。
一方で、出雲国(現在の島根県東部)の風土記である「出雲国風土記」には、創造神に近い存在として「天の下所造らしし大神」と書かれています。

また「古事記」の有名なエピソードである「国譲り」で、オオクニヌシが天津神に交換条件として要求して作らせたのが、出雲大社であり、ここで祭神として祀られています。

出雲大社

また、出雲大社以外にも、全国各地にオオクニヌシを祭神とする神社があります。

実はスサノオの子孫

前述のとおり、あのサイコパス神・スサノオの子孫でもあります。
※つまりは、オオクニヌシはイザナギの子孫でもあるのです。
ただ、この子孫という記述は「古事記」と、古事記の次に成立した歴史書である「日本書紀」とでは、少しニュアンスが異なっており、

  • 古事記:スサノオの6代の孫

  • 日本書紀:スサノオの息子

とされています。

ハンサムでモテモテだった縁結び・子授けの神様

オオクニヌシが縁結び・子授けの神様として知られていることからもわかる通り、「古事記」では、オオクニヌシは様々な女神たちとの間に多くの子供をもうけており、婚姻関係を結んだ女神の数は6柱、もうけた子供の数は180柱以上と記されています。

また、そもそもオオクニヌシの性格が優しく、顔立ちがハンサムであったことも、女神からモテモテであった理由とされており、実際、出雲大社にあるオオクニヌシの像も、

出雲大社にあるオオクニヌシの銅像

このようなイケメンにふさわしい顔立ちで、作られていました。(ぱっと見、ダルビッシュに似てるかも…)

因幡の白兎

※今回も「古事記」をベースに書いていきます。

スサノオの遠い孫にあたる『オオクニヌシ』ですが、最初はオオナムチ(大穴牟遅神)と名乗っていました。

オオナムチ、ウサギに出会う

オオナムチには、大勢の異母兄弟がいました。
この大勢の異母兄弟は、八十神(やそがみ)と呼ばれていました。
オオナムチはこの兄弟たちの末っ子であり、体も小さかったので、八十神たちからヒドイいじめを受けていました。(かわいそう…)

あるとき、八十神たちは因幡国(いなばのくに、現在の鳥取県東部)にいるヤガミヒメ(八上比売)を妻にしたく、因幡へと向かったのですが、オオナムチは大きな袋を持たされて、八十神たちから従者として扱われていました(ホントかわいそう…)

八十神たちのあとから向かう途中で、オオナムチは、気多の前(けたのさき)という岬で、毛皮を剝ぎ取られて丸裸になったウサギが泣きながら倒れているのを発見します。

オオナムチは、ウサギに話しかけ、

オオナムチ「どうして、泣いているんや??」

と問いかけます。すると、ウサギは、なぜこうなったのかを語ります。

ウサギ、泣いている理由を語る

「因幡の白兎」の舞台とされている白兎海岸の空撮写真(ニッポン旅マガジン

実は、ここにやってくる前は、隠岐の島(おきのしま、淤岐の島とも)にいたウサギは、気多の前まで渡りたく、ある作戦を思いつきます。

それは、海を泳ぐサメの背中をぴょんぴょんと渡って、気多の前まで向かうというものでした。
ちなみに「古事記」では、サメのことを「和邇(ワニ)」と記述されていますが、中国地方の山間部では、サメのことをワニと呼んでいたことから、ウサギが背中に飛び乗ったのはサメであると考えられています。

しかしながら、海をおよぐサメを背中を渡るのは困難なため、ウサギはサメにこう話しを持ち掛けます。

ウサギ「なあなあ、サメはん?サメとウサギ、どっちが多いか、比べてみーひんかぁ??

サメ「ええで~」

こうして、ウサギはサメをだまし、気多の前まで渡れるよう、サメを海に並ばせて、ぴょんぴょんと背中を渡り、サメの数を数え始めました。

そして、いよいよ気多の前まであと少しというところで…

ウサギ「へへっ、アンタらはワイに騙されたんやで!ほな、さいなら~」

と、思わずウサギはその本性を言葉として出てしまいます。

これに、ブチギレしたサメは…

サメ「この・・・・・クソウサギめ!!!!!!!!!!!!!!」

とウサギを襲い、毛皮を全部剥がされてしまった、というわけだったのです。(サメもサメだけど、ウサギもウサギだな…)

まだまだ続く、ウサギの不幸

しかし、話はそれだけでは終わりませんでした。

こうして丸裸になったウサギをはじめに発見したのは、オオナムチではなく、いじめっ子集団である八十神たちでした。

八十神たちは、丸裸のまま泣くウサギに対して、

八十神A「そんなモン、海水に浸かって、風によく当たれば治るで!」
八十神B「効果バツグンやで!」
八十神C「せやせや!」

といった超適当なアドバイスをしたのです。

結果は、ご想像通り。
ウサギの皮膚はひび割れ、より悪化してしまったのです。(まさに傷口に塩を塗るとはこのこと…)

オオナムチ「こうしたら治るで!」

このことを聞いたオオナムチは、いじめっ子とはいえ異母兄弟がやった行いを申し訳なく思い、ウサギに治療法を伝授します。

オオナムチが伝授した方法は、以下の通りです。

  • 河口の真水で身体を洗う

  • ガマの穂を撒いて、そこに寝転がる

これを実践したウサギは、みるみるうちに回復して、元通りの白いウサギに戻りました。(マジかよ!)

ちなみに、これが記録に残る日本で初めての医術とされており、オオクニヌシは医療の神としても祀られることとなります。

ヤガミヒメ「オオナムチと結婚します!」

すると、助けてもらったウサギは、オオナムチにこう話します。

ウサギ「八十神がヤガミヒメを妻にすることは絶対にあり得まへん!ヤガミヒメはオオナムチはんを選びます!

このウサギの予言は、この後、現実のものとなります。
八十神たちの後から大きな袋を背負ってやって来た、末っ子のオオナムチをヤガミヒメは選んだのです。

八十神の迫害

八十神「オオナムチ、ぶっ殺す!」

これにブチキレたのは、プライドを傷つけられた八十神たちでした。
そして、八十神たちはオオナムチをぶっ殺す計画を立て、それを実行に移します。(ひえええ)

八十神たちは、オオナムチを因幡国と接する伯岐国(ほうきのくに、現在の鳥取県中部・西部あたり)に呼び出し、山のふもとに向かわせると、そこで上のほうで待ち構えていた八十神たちが…

八十神たち「おい、この山にいる赤いイノシシを捕まえたいから、俺たちが上から追い落とすで!お前は下で待って、捕まえてな!ミスったらぶっ殺す!」

と叫び、下でオオナムチを待たせることにしました。

実は、この赤いイノシシを大嘘で、本当は真っ赤になるまで熱々に熱したイノシシに似た大きな岩でした。(ひええええええ)

そうとは知らずに、八十神たちが山の上から転がし落とした岩をイノシシだと思い、キャッチしようとしたオオナムチは、当然ながら、大やけどを負ってしまい、死んでしまったのです…(オオナムチ…)

ちなみに、オオナムチがキャッチしようとして落命した岩ですが、なんと鳥取県南部町にある赤猪岩神社という神社に祀られています。(名前がそのまますぎる…)

境内にはオオナムチが抱いて落命したとされる大岩が封印されている(南部町役場

また、狙って書いた可能性はありますが、「古事記」の最初に、火の神ヒノカグツチを出産したことで大やけどを負って亡くなったイザナミが葬られた場所も、この伯岐国だったりします。
※比婆の山という場所に葬られたそうです。

カミムスビ「おおオオナムチよ、しんでしまうとはなにごとだ!」

こんな死に方をしたオオナムチを悲痛に思った母親サシクニワカヒメ(刺国若比売)は、高天原に上って「息子を生き返らせて〜」と訴えます。

それを聞いたカミムスビは、キサガイヒメ(𧏛貝比売)とウムギヒメ(蛤貝比売)を遣わせ、貝を粉にして水で溶いて、オオナムチの身体に塗って、治療を行います。
これによって、なんとオオナムチは生き返ったのです!(神の力ってスゲー!)

ちなみに、このカミムスビは、天地開闢のあとに出現した別格の神様・別天津神(ことあまつかみ)の1柱で、スサノオが殺害した穀物・養蚕の神オオゲツヒメの遺体を葦原中国に蒔いた神様でもあります。

八十神「オオナムチ、またぶっ殺す!」

しかし、これをよく思わなかったのは、やはり八十神たちでした。
次は、別の方法で、オオナムチをぶっ殺す計画を立てたのです。(もうオオナムチ絶対殺すマンになってる…)

今度は、八十神たちは、大木を切り倒して、そこに(くさび)を打って割れ目を作って、トラップを作りました。
※割り箸を広げたままキープした状態のものを、大木で作ったとイメージしてみてください。

割り箸を広げたままキープした状態(grape

この大木の中に、何も知らないオオナムチを呼んで、立たせます。
そして、立たせるやいなや、楔を外して、オオナムチを挟み殺してしまったのです…(これはヒドイ…)

サシクニワカヒメ「オオナムチ、新しいイノチよーーー!」

このことを知った母親であるサシクニワカヒメは、悲しみに暮れるのですが、オオナムチが挟まれた大木を見つけるやいなや、すぐに大木を裂いてから、オオナムチの身体を取り出し、今度はカミムスビの力は借りずに、自身の力で生き返らせることに成功します!(自分でも生き返らせられるんかーーーーーーーい!)

ここは私の想像ですが、また同じような描写を書くのが、面倒だったんだから、省略したんだと思います…。

そして、再び生き返ったオオナムチにこう告げます。

サシクニワカヒメ「このままでいつかホンマに死んでまうから、木国(きのくに)のオオヤビコ(大屋毘古)のところへ逃げなさい!」

木国とは、紀伊国のことで、現在の和歌山県、三重県南部の地域のことを指します。

また、オオヤビコは、イザナギとイザナミが神産みで産んだ35神の1柱で、家宅を表す神様(家宅六神)とされています。
おそらくイザナギ様の力を借りなさいといったことだと思われます。(神様が神頼みしてる…)

おわりに

今回は「古事記」上巻に記述されている『オオクニヌシ』の話の中から、「因幡の白兎」「八十神の迫害」について書いていきました。

『オオクニヌシ』についての話はまだまだ続き(というかここからが本番ですが)、次回はなんと、あのサイコパス神・スサノオが再登場します!!

他にも、歴史上の人物神話などをベースに、記事を書いていく予定ですので、是非フォローなどしてもらえるとありがたいです!

それでは!


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