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【コノハナノサクヤビメ】親元を離れた天孫ニニギが本性を現したことで天皇の寿命が神レベルではなくなった話【日本神話】

どーも、たかしーのです。

今回は、日本の神話に登場する『コノハナノサクヤビメ』について、書いていきたいと思います!

コノハナノサクヤビメ』がどんな神様であったかについては、ストーリーを読んでからのほうがわかりよいので、先に日本神話の中で活躍を紹介していきます。


コノハナノサクヤビメとイワナガヒメ

※今回も「古事記」をベースに書いていきます。

この話は、アマテラスの孫であるニニギが天降りをした「天孫降臨」神話の続きで描かれたお話になります。

↓「天孫降臨」神話はこちらから

ニニギ、コノハナノサクヤビメと出会う

葦原中国(地上界)に降臨したニニギは、笠沙(かささ)の岬(現在の鹿児島県薩摩半島の西南部)で、一人の美しい乙女と出会います。

この乙女に一目惚れをしたニニギは、静かに近づき、

ニニギ「キミ、だれの娘なん?」

と、ナンパすることにしました。(ついに本性を現したぞ!)

親元を離れ新天地でナンパをはじめた天孫ニニギ(wikipedia)

すると、その乙女は、オオヤマツミ(大山津見)の娘であり、名をカムアタツヒメ(神阿多都比売)、別の名をコノハナノサクヤビメ木花之佐久夜毘売)であると答えました。

実は、オオヤマツミは、これが初登場ではなく、すでに『古事記』では、その名は登場していました。

実は日本神話古参の神様であるオオヤマツミ

オオヤマツミは、最初に葦原中国に降り立ったイザナギとイザナミの子であり(神産みで生まれた)、スサノオがヤマタノオロチを倒して結婚したクシナダヒメの祖父でもある神様です。

↓「国産み・神産み」神話はこちらから

↓「ヤマタノオロチ討伐」神話はこちらから

オオヤマツミは、日本の山の神の総元締め(つまり、山の神で1番エライ神)とされており、全国に点在する大山祇神社(おおやまづみじんじゃ)をはじめ、数多くの神社で祀られています。

変わった神社でいうと、長崎県にある端島(通称、軍艦島)にあった端島神社でも、オオヤマツミが祀られていたそうです。

オオヤマツミを祀る軍艦島の端島神社 by エコ殿様(wikipedia)

ニニギ、即求婚する!

山の神の総元締めの娘であったことを知ったニニギは、なんか美人し、名前が可憐だし、いい花の香りがしそうと褒めちぎり、コノハナノサクヤビメに結婚を迫ります。(展開が早すぎる…)

しかし、急な申し出に困ったコノハナノサクヤビメは、この場ではすぐに返事はできないので、父であるオオヤマツミに聞いてほしいと答えます。(そりゃそうだ)

そうと聞いたニニギは、早速オオヤマツミのもとへ使者を遣わせ、コノハナノサクヤビメと結婚したい旨を伝えます。

これを聞いたオオヤマツミは、娘のコノハナノサクヤビメがアマテラスの孫であるニニギに見初められたことをたいそう喜び、結婚を承諾します。

最高神アマテラスの孫であるニニギと娘の結婚が決まり喜ぶオオヤマツミ

しかしながら、あまりに喜びすぎた結果、コノハナノサクヤビメだけでなく、サクヤビメの姉であるイワナガヒメ(石長比売)もセットで嫁がせようと考え、たくさんの献上品を持たせて、ニニギのもとへ嫁がせることにしました。(すごい父親だな…)

ニニギ、イワナガヒメを返却した結果…

当然ながら、嫁いできたのがコノハナノサクヤビメだと思ったら、セットで姉も付いてきたことに驚いたニニギは、イワナガヒメがどんな娘なのか、その顔を見てみると…

イワナガヒメ ※ちなみにあくまでニニギがそう思っているだけですので、あしからず。

ニニギ「これはアカン!めっちゃブ〇イクや!オオヤマツミのことにすぐ帰ってくれへんか?」

と、かわいそうなことに、ブ〇イクを理由に、イワナガヒメをオオヤマツミのもとへあっさりと送り返してしまいました…(ニニギ、お前ってやつは…)

そして、望んでいたとおり、コノハナノサクヤビメとだけ結婚したニニギでしたが、これに激怒したのが、父親であるオオヤマツミでした。

自分の娘をブ〇イク呼ばわりされ送り返されたことに激怒するオオヤマツミ

そして、オオヤマツミは、ニニギに送り返され、泣き崩れるイワナガヒメを慰めながら、なぜイワナガヒメをニニギのもとへ嫁がせたのか?を語り始めます。

オオヤマツミ「なぜワシがお前(イワナガヒメ)を遣わせたかというのはな、岩のように強固に続く永遠の命を願って遣わせたんや。コノハナノサクヤビメは花のような栄華を願って遣わせた。だが、ニニギノミコトがお前を返したということは、いずれニニギノミコトの寿命は花のようにはかなく散ってしまうことになるやろな。」

つまり、ニニギがコノハナノサクヤビメだけを娶ったことにより、天皇の祖神であるニニギの寿命は、天つ神ほど長いものではなくなったため、代々の天皇の寿命も神様レベルで長いことはないということが、ここでは語られています。(やってしまいましたなあ、ニニギ…)

火の中の出産

ニニギ、またやらかす…

寿命が縮まったとはいえ、めでたくコノハナノサクヤビメと結婚できたニニギでしたが、その後もどエライことを仕出かします。

しばらくたったある日、コノハナノサクヤビメは、ニニギの前で

コノハナノサクヤビメ「私のお腹に子どもを身ごもりました。もうすぐアナタさまの子どもが生まれてくる予定です。」

と報告します。

しかし、この報告を受けたニニギは、あろうことか…

ニニギ「いやいや、ワンナイトしたヤってないのに、身ごもるとかおかしくない?たぶんワシの子やないで。どこかの国つ神の子とちゃうか?」

と、身重のコノハナノサクヤビメに対して、衝撃のセリフを吐いてしまったのです。(最低だぞ、ニニギ…)

これを聞いて、ショックを受けたコノハナノサクヤビメは、ニニギのもとを立ち去り、すぐさま産屋(うぶや/出産のための小屋)を作らせて、こう言いました。

コノハナノサクヤビメ「もしも、私のお腹の子が、天つ神であるニニギノミコトの本当の子であるなら、何があっても無事に産まれてくるはずです。国つ神の子であったなら、無事に産まれてくることはないでしょう。」

と言い残して、産屋に戻ると、その産屋に火を放ちました

コノハナノサクヤビメの運命は…?

さて、その後、どうなったかというと、コノハナノサクヤビメは、燃え盛る産屋の中で、無事三柱の御子を産みました。つまり、子供は正真正銘、天つ神であるニニギの子だったということになります。

産まれた三柱は、それぞれ

  • 火が盛んに燃える時に産まれてきた神:火照命(ホデリ)

  • 火が燃え進んでいる時に産まれてきた神:火須勢理命(ホスセリ)

  • 火の勢いが弱まった時に産まれてきた神:火遠理命(ホオリ)

と名付けられました。

ちなみに、ここで誕生したホオリは、のちに初代天皇となる神武天皇の祖父にあたります。

ホオリ(wikipedia)

↓ 長男ホデリと三男ホオリが登場する話はこちらから。

コノハナノサクヤビメとはどんな神様?

さて、このようなお話からコノハナノサクヤビメは、今でもご利益のある神様として、さまざまな神社で祀られています。

火中で出産した安産・子育ての神様

燃え盛る産屋の中で無事に子どもを産んだお話から、安産・子育ての神様として信仰されるようになりました。

東京都八王子市をはじめ、日本に数十の社がある子安神社(こやすじんじゃ)では、祭神としてコノハナノサクヤビメが祀られています。

ちなみに、神社によっては、スサノオの妻であるクシナダヒメを祀る神社もあるそうです。そういえば、クシナダヒメもオオヤマツミの孫にあたる神様でしたね。

富士山の神様と同一視されるようになった火難の神様

また、コノハナノサクヤビメは、あの富士山の神様である浅間大神と同一視され、富士山を神体山とする富士山本宮浅間大社(静岡県富士宮市)と、配下の日本国内約1300社の浅間神社に祀られています。

富士山本宮浅間大社大鳥居(wikipedia)

なぜ、コノハナノサクヤビメと同一視されたかについては、諸説ありますが、一説には、後世における神話解釈により、

  • 三島神社の祭神はオオヤマツミ

  • 三島と富士は父子関係にあるとする伝承がある

  • コノハナノサクヤビメはオオヤマツミの子

⇒つまり、富士山の祭神はコノハナノサクヤビメである!

と、江戸時代初期の朱子学者林羅山が唱え始めたことがきっかけとされています。

また、火中で無事に出産を終えたため、火難除けの神様でもあるコノハナノサクヤビメを、富士山の神様として祀る、つまり、浅間大神と同一視させて祀ることで噴火を鎮めてもらうといったことも、理由かもしれません。

そういえばイワナガヒメはどうなった?

今でも健康・長寿の神様として祀られている

ニニギに送り返された悲劇の神様となったイワナガヒメですが、今でも神話にもあった通り、健康長寿の神様として祀られています。

例えば、瀬戸内海に浮かぶ大三島にある大山祇神社(おおやまつみじんじゃ)には、父のオオヤマツミが祭神として祀られていますが、その境外摂社(けいがいせっしゃ/祭神と縁故の深い神を祀った境外にある神社)である阿奈波神社(あなばじんじゃ)には、オオヤマツミの娘であるイワナガヒメが祀られています。(良かったネ!)

イワナガヒメを祀る阿奈波神社(wikipedia)

おわりに

今回は、日本の神話に登場する『コノハナノサクヤビメ』について、書いていきました。

個人的には、今回の神話が天孫ニニギのゲスエピソードという落差が大きすぎる話で、大変面白かったですね。
あと、とても人間らしいエピソードかなとも思ったので、だんだんと神様から人間へとじわじわバトンパスをしているような、その話として捉えることもできました。

他にも、歴史上の人物神話などをベースに、記事を書いていく予定ですので、是非フォローなどしてもらえるとありがたいです!

それでは!

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