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『組織の未来はエンゲージメントで決まる』(新居 佳英・松林 博文 著) 〜世界的企業が重要視する「エンゲージメント」を紐解く一冊〜

『組織の未来はエンゲージメントで決まる』(新居 佳英・松林 博文 著)


【どんな内容の本?】社員がいきいきと力を発揮する組織づくりの一つのヒント

現場でなかなかチーム力が出せない、組織として方向性を見いだせてないと感じていた時に、「ティール組織」と言うワードとともに「エンゲージメント」というキーワードにいきあたり「モチベーション」とは違うアプローチとして興味が湧き、チーム作りの一つのヒントになればと読んでみた一冊。

著者の一人、新居 佳英氏はインテリジェンス(現パーソルキャリア)出身の方で、現在は求人メディアである「Green」やビジネスマッチングアプリ「yenta」を運営する株式会社アトラエの代表。組織におけるエンゲージメントの重要性を社内に展開する一方、それを定量的に可視化する「wevox」というSaaSツールを提供しています。
もうひとりの松林 博文氏はグロービス経営大学院の講師で、個の創造性発揮や次世代型組織デザイン開発をライフワークとし、マーケティングやクリエイティブシンキングに関する著書を多数執筆されている方です。

【目次】

序章 チームや組織にとって、いちばん大切なもの
第1章 エンゲージメントとは何か
第2章 なぜエンゲージメントが重要なのか
第3章 日本はエンゲージメント後進国?
第4章 エンゲージメントを高める9つのキードライバー
第5章 実践! エンゲージメント経営
第6章 エンゲージメントで組織はこう育つ――アトラエでの取り組み
第7章 これからの組織とエンゲージメント

前半1〜4章では「エンゲージメント」の定義やモチベーション・ロイヤリティとの違い、そして日本企業における「エンゲージメント」の低さと世界進出企業との違いからその重要性を説いています。
後半5章以降は日本企業でも実践している企業の例を参考に出しながら、経営課題として捉えるべき指標であり、マネジメントのあり方が従来と変わってきていることに言及しています。

【読んでみて刺さった言葉】

・エンゲージメントとは主体的・意欲的に取り組んでいる状態=相互の対等な関係に基づくもの
これは刺さったというのとは少し違いますが、これまで企業の指標とされていたワードと比較して定義されていた内容。従来の指標と比較することで「エンゲージメント」という慣れないワードの示す内容がつかめるのではないでしょうか。引用して列記しておきます。

従業員満足度:環境・給与・福利厚生などへの満足度 組織が与えるもの
モチベーション:行動動機 個人が感じるもの
ロイヤルティ:組織に対する帰属意識・忠誠心 上下関係が生み出すもの
エンゲージメント:主体的・意欲的に取り組んでいる状態 相互の対等な関係に基づくもの


・社員が自ら声を上げること、声を上げるカルチャーを作ること
エンゲージメントを高めるにはトップダウンではなく現場の社員からの意見やアイデアの声を上げられるカルチャーを育てることが大切だと書かれています。自由に発言できる空気やそれをないがしろにしない周りの姿勢がそれを生み、その風土こそが生産性に強く影響を与えると書かれています。

・いちばん大切なのは相手を知ること
その誰もが自由に意見を出せるカルチャーを生むのにいちばん大切なのが「相手を知ること」。どんな性格なのか、どんな理由で会社に入ったのか、どんな思いをもって仕事に取り組んでいるのか、なににやりがいを感じているのか。それを知ることこそが自由に声を出せる関係性を生み出す普遍的な視点だと筆者は語ります。唯一絶対の正解などはないけれど、まずは自分の身近な相手を知るところから始めること。そこで変化が生まれれば徐々に組織全体に広がっていくのではないか。そう説いています。


総評:実は昭和な企業は強かったのか?

正直もっとスキルやナレッジ的なヒントが有るかと思っていたのですが、根幹にあるのは「相手を知る」という現場だけにとどまらない人と人としての相互理解こそが、生産性や企業の成長につながるという内容になっています。会社内にとどまらないコミュニケーション。もしかしたら日本の高度成長期をささえたのは、仕事上がりの赤ちょうちんだったり、社員旅行や会社の運動会だったり、そんな相手に深く入り込んだ関係性を築く時間だったのかもしれませんね。まずは目の前のメンバーと食事したり、雑談でもいいから会話を増やしたり、そんなことから自分も行動を変えていきたいなと思います。人事やマネジメントされている方にはもちろんですが、新人のメンターになった方なんかにもオススメの一冊です。

『組織の未来はエンゲージメントで決まる』(新居 佳英・松林 博文 著)

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