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中国の政策レベルでのロボットの動きは2025に向けて加速する?

このnoteでも何度が中国のロボット動向について書いたことがあります。

業界の人と話すと定期的にこの中国のロボットの勢いについて話題にのぼることがそれなりの頻度であります。結論は、「どう考えてもスゴイっ!!」ということになるのですが、その背景にあるのは、これもnoteで書いたイノベーションに対する量とか投資とかに関する考え方の差があるのではないかと思っています。

今回のnoteではもうちょっとロボットに限定した形でこの10年くらい中国の国レベルで何が起きているのか、公開資料から読み取れる範囲で見てみたいと思います!

中国の国レベルでの動き

2015年頃の中国の政策をNTT経営研究所がまとめたのが以下です。

引用:https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H30FY/000695.pdf(2019年NTTデータ経営研究所)
引用:https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H30FY/000695.pdf(2019年NTTデータ経営研究所)

「中国製造2025」というのが明らかに変化点になっていることはわかります。一部報道による製造2025は現地ではあまり触れられなくなっているというようなこともあるようですが、日本に身を置いている立場では、かなりの頻度で「中国製造2025」という言葉は聞きます。

2015年に中国政府より発表された「中国製造2025」は、国家戦略レベルで製造業の戦略目標を確立し、2025、35、45年という3段階で製造強国を実現することを目標としています。ちなみに、25年は「世界製造強い国入り」というのが目標で、9つの戦略的課題と10つの重点領域が設定されています。

重点領域の中で、ロボットは産業用ロボット、特殊ロボット、サービスロボットと全方位的に強化していくとされ、国としてもロボットの標準化、ロボット技術の研究開発、市場応用の拡大を促進すると宣言し、確かに愚直なまでに実現してきています。

個人的によく考えているなぁと思うのでは、当時のボトルネックをしっかりと特定し、ロボット本体だけではなく、減速機やサーボモータ、センサなどの重要な要素部品とそれらを統合するシステムインテグレーションを強化していくことまで考えられている点でした。

引用:https://www.nedo.go.jp/content/100920459.pdf(NEDO資料)

さらに、製造2025が発表された翌年の2016年に発表された「ロボット産業発展計画(2016-2020)」の中では、以下のような目標も設定されています。
2020年までに
・中国自主ブランドの産業用ロボットの年間生産量を10万台に達成
・6軸以上の産業用ロボットの年間生産量を5万台以上
・サービスロボットは年間売上高は300億元以上
・高齢者・障害者支援、医療リハビリ分野において小規模生産応用を実現
3つ以上の国際競争力のある企業を育成し、5つ以上の産業クラスターを支援

引用:https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H30FY/000695.pdf(2019年NTTデータ経営研究所)
引用:https://www.nedo.go.jp/content/100920459.pdf(NEDO資料)

もちろん、すべてが順調に進んでいるわけではなく、NEDO報告書によると、「2015~17年頃ロボット産業に対する購入補助金 などが充実し、投資資金も集まったことから、ロボットメーカーへの参入が相次ぐ。ただし1000 社程度のロボットメーカーが存在するが、実際に 自社でロボットを製造するのは100社程度とされ、技術力のない小規模メーカーの乱立が課題」となったりしたようですが、国がロボット企業に求められる技術力の要件を設定し、認証を取得した企業を国側が集中的に支援する、などの取り組みも入れ込みながら、着実に成長させていっています。

正確な数字はわかりませんが、上図の目標の多くは、概ね達成されているというような状態になっている気がします。
※細かい経緯や内容は、引用させてもらったNTTデータ経営研究所NEDOのレポートを読むとよくわかりますので、ご興味ある方は是非。もしくは、最新のNEDO調査(PwC)が今後公開されたりすると、ある程度信頼性のある情報がわかるかもしれません。

そして、最近の状況はというと、22年には「十四五」とも言われる「『第14次五カ年計画』ロボット産業発展計画」が発表され、23年には「『ロボット+』応用行動実施案」などが発表されています。

「十四五」の中では、「産業用ロボットの分野で、中国はこれから自動車、宇宙航空、鉄道交通などの分野に向けた溶接ロボット、半導体産業に向けた真空(洗浄)ロボットなどの開発を重点的に進める。サービスロボットの分野では、農業ロボット、鉱業用ロボット、建設ロボット、医療・リハビリロボット、介護・介助ロボット、家事支援ロボット、公共サービスロボットの開発に重点を置く。特殊ロボットの分野では、水中ロボット、セキュリティロボット、危険作業ロボット、衛生・防疫対策ロボットの開発に重点を置く」ともされており、これまであまり中国がリソースを割いていないように見える農業ロボットなど新しい領域にもチャレンジしていくことが読み取れます。

そのうえで、ロボット産業の売上高の年平均増加率が「20%」を超えることを目指すということなので、16年から20年にかけての平均約「15%」成長を超えるスピードで伸ばしていこうというのがわかります。

※「世界の先進レベルと比べると、中国のロボット産業にはまだ一定の開きがある。たとえば技術の蓄積が足りず、オリジナルの研究、理論の研究、フォワードデザインの能力が不足している。産業の基礎が脆弱で、キーパーツの品質の安定性と信頼性は高性能の完成機が必要とするレベルには達していない。高速、高精度、積載量が大きいといった高性能の完成機製品の供給が不足している」という発言もあるようで、冷静さも失っていませんね。

また、「『ロボット+』応用行動実施案」の中では、
・2025年に製造業におけるロボット密度を20年の2倍に上げる
・サービスロボットと特殊ロボットの業界応用の深さと広さを大きく向上させ、ロボットにより経済・社会の質の高い発展を促進する能力を大幅に高める
・10の応用重点分野に焦点を当て、100以上のロボットの革新的な応用技術及びソリューションのブレイクスルーを達成する
・200以上の技術水準が高く、イノベーション応用モデルと顕著な応用効果を持つロボットの典型的な応用シーンを革新する
・業界一流レベルのロボットのリーディング企業10社を創出する
・複数の応用体験センターと実証実験センターを建設する
ロボット関連産業の規模1千億元(1元は約20円)を達成する
とさらに野心的な目標設定がなされていますので、ますます目が離せない状況ですね。

ちなみに、「ロボット密度を20年の倍に上げる」というのは、既に中国は20年に製造業ロボット密度は人口1万人あたり246台というところに来ていますので、その倍となると、492台となり、日本やドイツなども抜き、数でも圧倒的な存在になります。

引用:ロボット密度データ IFR World Robotics 2021

中国から日本へ来るロボット

このような勢い、動きの中で、中国のロボットが日本にどんどん入ってくることは避けられないでしょう。

サービスロボットでは、すかいらーくグループに3000台大量投入されたPuduのネコ型配膳ロボットを筆頭に、掃除、物流、配送など業務用の分野で当方が知っている限りでもユーザー側も前向きに導入の検討をしたり、フラットな目で日本メーカ製のロボットと比較をしているように感じます。

また、産業用ロボットに関しても、大手日系メーカーの方がまだ地力の差があるように感じますが、前述したようにロボット本体だけでなく、減速機など要素部品まで中国側が力を入れている状況であり、今後日本の中でもアプリケーションによっては競争の激化は進んでいくでしょう。

実際に中国大手の産ロボメーカであるJAKAは、名古屋に工場?拠点を作ったこともニュースになっていたので、愛知県の大手日系企業に導入しようと動いているんだと思われます。

日本から中国へ行くロボット

では、一方的に、中国から日本にロボットが流れてくるだけかというとそうではなく、産業用ロボットにおいては、まだまだ中国での中国メーカシェアも3割程度とみられており、日本メーカーも現地では大いに存在感はある状態かと思います。

また、ユニークな最近のニュースとしては、かわいいコミュニケーションロボットLOVOTを製造販売するGROOVE Xが、中国へ進出すると発表しました。

個人的にはとても注目しているニュースで、このような日本のかわいいとか感性的な価値を有するロボットが中国という地でどのように評価されるのか?、導入されるのか?、はたまた現地で類似的なプロダクトが発表されるのか?などなど、今後の動きが楽しみですっ!!



というわけで色々書きはしましたが、正直ネットだけではよくわからないというのが本音です。私自身は、コロナ以降は中国には全く行けておらず、最新の状態を自分の目では確認できておりません。

「今年は是非とも行きたいっ!!自分の目で見て、色々と学び、考えたい!!」と思っているのですが、ロボット関係でおススメの場所や規模の大きな展示会などありましたら、教えてください~~!

では、また来週~!!
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安藤健(@takecando)
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