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「デザイナー」と一言で言っても・・・


僕はよく「何をやっている人ですか?」と聞かれる。

それは多くの分野に精通しながら仕事をしてきたことによって、実績が多様なったからだと感じている。


僕は建築学科出身で、建築は時に「総合学習」と言われる分野だ。多くの分野の集積として成立することが多い。

例えば飲食店を設計する時に、椅子もテーブルも必要だし、料理用の什器の知識だっている。もっといえば看板などのグラフィックデザイン、時には接客の知識もあれば役に立つ。

そんな色々な分野との接点の多いの建築を学んだことで、当時(今から12、3年くらい前)感じていた「分野の融合時代の到来」によって、1つの分野を極めるというよりは、多くの分野を「解像度高く理解する」環境を作ることを目指してきた。


運良く建築に限らず、例えばグラフィックデザインや商品開発など日本でもトップの企業とお仕事をさせていただけたり、陶器などのプロダクトデザインでも世界で活躍されている方々と仕事ができ、自分が関わった分野に関しては自分では作れなくても「相手の感性を理解し提案できる」までにはなった。そして国際コンペや海外でも戦えるまでに成長できた。


そしてその知識や経験を活かして、多様な分野のプロフェッショナルが集まっているSHELFがスタートした。


SHELFがスタートして改めて感じていることがある。それは「デザイナー」という言葉が広義の意味を持ちすぎて、分野が少し違うだけですれ違いが起こってしまうことだ。

例えば建築デザインと空間デザインの違いをしっかり説明できる人はいるだろうか。

建築で学んでいる人からすると「同じでもあるし全く違うとも言える」と感じている人が多いのではないかと思う。

学生時代の僕の個人的な見解は、空間デザインは店舗などの商業的な設計を行う時に使われる言葉で、建築デザインは施設などを思想を重要視しながら設計を行う時に使われる言葉だと認識していた。しかし、大規模な建築仕事が減る中で、建築が小規模な商業に入り込んでくるとこの言葉の違いがより曖昧になった。

僕の母校ではプロダクトデザイン学科の学生が店舗の設計をし、建築学科はそれを冷ややかに見ていたのも記憶している。それだけ同じデザインでも相容れないところがあったのだ。

空間デザイナーは、商業的に美しく、使いやすくてクライアントやお客様が一目見て「良い!」と思うデザインが正解だと言いがちだし、建築家は、浅はかなデザインではなく、歴史を重んじながらも思想やオリジナリティ、世界観ある論理的思考から生み出されたデザインでなければならないと主張する。

両者がもし一緒に仕事をすれば大げんかもありえる。


このように「デザイン」と一言で言っても「当たり前」や「基礎知識」、「正解」も違ってくるのだ。しかもそれらは時代によっても変化する。


SHELFのように多様な分野のプロフェッショナルが集まるとその違いが大きな力にもなるし問題にもなる。

力になる時はいいが、問題になった時は1つの思いが強くなる。


同じ「デザイン」という言葉を背負っているのだから、相手を敬う言葉や気持ちを持って、一緒に前に進もうじゃないか。と


空間デザイナーと建築家が力を合わせて、使いやすく思考に深みのある、すぐに「良い!」と分かるデザインを目指すことが、これからの時代におけるデザイナーの役割りとすら感じている。


未来の正解は誰にも分からない。今、議論に勝ったとしてもその勝ちは未来の価値になるとは限らない。


これから「共創」という言葉が重要視され、デザインの共通言語やお互いををまとめるための仕組みが求められるのではないだろうか。


竹鼻良文/TAKEHANAKE

SHELF


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