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【遅考術】考える、を取り戻す

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆☆


〜遅く考えた方が良い〜

結論を急かされたり、即答出来ないと批判や皮肉を言われたりする昨今。
「結論をすぐに出せる人=頭の回転が早い=頭の良い人」というイメージが強いような気がする昨今。
人々は何でもかんでも結論を早く知りたがり、「ファスト教養」なんていう言葉も生まれてしまった昨今。

もともとじっくり考えるのが好きな僕がこういう世の中に嫌気がさしていた頃に、この「遅考術(ちこうじゅつ)」というタイトルは僕の胸に突き刺さった。この言葉を生み出した編集者の方は素晴らしい。

遅くじっくり考えた方が良いよね、という僕の考えに応えてくれた一冊だ(という僕も、本書で書かれている「確証バイアス」にとらわれているのかもしれないが…(笑))。


〜システム2に切り替える訓練〜

さて、本書の内容は、端的に言えば「ファスト&スロー」で語られていた脳の「システム2」の機能を呼び覚ます訓練を推奨するものである。

「システム1」は脳の「オートモード」とも言われ、いわゆる直観や感性がこれにあたる。
対して「システム2」は「マニュアルモード」とも言われ、複雑な思考や冷静な判断をする際に用いられる。

人は生きていく上で、脳を使いすぎないように普段の生活の中では「システム1」を主に使っているが、「システム1」はエラー、すなわち間違いを起こしやすい。
本書では「システム1」が起こしがちなエラーを列挙し、そのエラーを自覚した上で「システム2」に切り替える訓練を問題を交えながら解説してくれる。

要するに、人が間違いを起こしやすいケースを知ることで、その事態に直面した時に「システム2」に切り替えられるようになるための訓練である。

正直なところ、認知科学や行動経済学、脳科学関連の本をいくつか読んでいる僕からすれば、他の本と内容の被るところが多かったのだが、そういった本の中から「実践として使えるところ」をまとめた本と考えれば、素晴らしい一冊だと思う。
自分の考え方や思考に自信のない方は、この本が大きな助けとなるだろう。


〜他人が遅く考えることも許容しよう〜

遅くじっくりと熟慮した方が間違いが無い、ということがわかれば、他人に対してもゆっくり考えることを許容できるようになる。

回答が遅い、返信が遅い、しばらく黙っている。
目の前の相手がこういう時には、「今この人はじっくりと考えているんだ」と思えるようになるだろう。

一方で、こちらが考えている時に「ねぇ、まだなの?」「早く答えてよ!」なんて急かしてくる人は、「ああ、この人は『考える』ってことがわからないんだな」と冷めた目で焦らずに対応できるようになる(強いメンタルも必要になるが…)。

なにかと「早さ」を求められる時代だけど、僕らはこの本からもう一度「考える」ことの大切さを取り戻せるかもしれない。

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