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小説のヒントは小5の作文にあった 僕のコバルト小説執筆・奮闘記〈後編〉

前回の記事で、小説に必要なのはもう一人の自分(俯瞰した視点)だと気づきました。

前回の記事

でも、どうやって書いたらいい?自分は平凡でこそあれ物事をフラットに見る目は乏しい。

自分は向いていないんじゃないか。

そんな時に、昔から温めていたプランが力になってくれました。

それは、作文でした。小学5年生の文集に書いた作文です。タイトルは「地球調査日記」

地球調査日記
         5年2組 ⊿⁂(小田切 拓)

 これで5回目、いいかげんいやになってきた。「たくちゃん!」「ヒェーッ。」僕の名前は⊿⁂、◉🔳星から来た・・・、おっとぼくらの声は特殊だから人(?)や地名は訳せないよ。話を戻して◉🔳星では11歳になると同じ地球の11歳の人間の良い所を探したら帰れるのだけど、ぼくが担当することになった拓って人がどうしようもなくて、初日だけで5回もしかられている。同じ11歳だということが信じられない。それに、道はゴミだらけでそう音のうるさい地球をぼくは好きになれなかった。そして、にげるようにその場をはなれた。

 それから10日後、拓のいる竹園西小の五年が9月に音楽会に出ることになり2組の担任で音楽専門の落合先生の元、5年はもう特訓が始まった。まさにもう特訓とよぶのにふさわしい練習、1日何時間も歌い続けた。学校でも、かえり道でも、家でも、そして土日や夏休みも・・・。こうしてあっという間に時は過ぎ、音楽会の日になった。

 ぼくは今日だけでもみんなと歌いたくなってとうめい人間になって紛れこんだ。みんなきんちょうしていて、もうすぐぶ台に立つというのに落ちつけない。このままじゃどうなってしまうのかとハラハラしていたら、ついにぼくらの番になった。するとみんなきゅうにピシッとなり、ぶ台に上がると今までで一番美しい歌声になった。そして、最後はあふれんばかりのはく手がなりひびいた。ぼくはよろこぶみんなを見とどけて去った。ぼくには人間の良い所が少し分かったような気がした。ありがとう、そしてさようならみんな。

最後にぼくの名前が訳せたから教えるよ。ぼくの名前は「タク。」

「主題決め小説風に」例文(もう一人の自分)

実物はこちら

小学5年生の文集に書いた作文「地球調査日記」

要約すると

①宇宙人の11歳が宿題で、同じ11歳の地球人(筆者)の良いところを探しに行くが、全然見つからない

②地球人の小学生たちが学年を挙げて音楽会の練習に励む

③見事に歌った彼らを見て安心、元の星に帰る

④宇宙人の名前が、観察していた筆者と同じ「タク」だと明かして終わる

漫画『バクマン。』でも、主人公の真城最高(サイコー)が子供の頃に描いた漫画を引っ張りだして、その設定を原作担当の相棒・高木秋人(シュージン)と相談し連載まで持ち込むシーンがありますね。

そもそも、サイコーとシュージンが最初に描いた漫画「ふたつの地球」と、僕が描いた作文はほぼ同じ設定です。

作文が2003年、『バクマン。』連載が2008年〜12年なので、こちらが先に書いていたことになります。

漫画を読んでいてちょっと誇らしくなると同時に「割とありがちな設定なんだな……」とも思いました。実際にこうした設定のSFを調べたら、よくあることがわかりました。

それでも「ふたつの地球」が参考になってくれた部分もあると思います。

このアイディアをいつか膨らませて、ちゃんとした長さの小説にしよう。
そして実際に2015年頃に第一稿を書き上げました。しかし、あまりに粗い上に、ラストに納得いかなかったためお蔵入り。

そこで、当時の作文と小説もどきを読み返してみました。

すると分かったのは、自分が自分を観察することによってこの設定は成り立っているということ。

もともと、作文のテーマが「もう一人の自分」だとは分かっていました。ただ、自由に楽しく書けたなあ、としか思っていなかったのです。

でも、むしろ周到に読者を意識して第三者視点を持ち込んでいたのです。

ダサい自分にここまでツッコミを入れながら書いているということは、自分のズレた部分にあきれている自分もまたいるということです。

むしろ、ここまで自分の情けなさをしっかり書いているということは、そういう自分をセルフプロデュースしていたということです。ちょっと嫌な子供ですね笑。

これだ!と思いました。文字通りそのまんまのもう一人の自分に徹底してツッコミをいれよう。

そうしてできたのが『地球留学記~パーフェクトフェイスは面倒の連続~』というわけです。宇宙SFラブコメのライトノベルです。

もちろん、その後に読んできた小説を思い出したり、メインで活動している短歌で著名な歌人の好きな一首を引用してみたり試行錯誤しました。

『バクマン。』以外の作品の影響も受けました。

ゴダール監督の映画『アルファヴィル』、人気漫画『SPY×FAMILY』、米津玄師が菅田将暉に提供したJポップ『まちがいさがし』など設定の似ているパラレルワールド系の作品も参考にしたつもりです。

11歳が今からちょうど20年前なので、構想20年。いろいろなことに気付き、知識やその後の流行りの漫画、映画、Jポップなどを咀嚼した上で「もう一人の自分」を自覚して、ようやく書けたということになります。

未熟な作品ですが、僕にとっては宝物のような作品です。今回は体験談でしたが、伝えたいのは小説に大切なことは、

①もう一人の自分(俯瞰した視点)を持つ

②自分がありふれていることを自覚して、どう演出するか

ということです。「小説家は嘘つきの天才」とよく聞きますが、あながち間違っていないのかもしれないですね!

この項はこれで終わります!作文でもこのテクニックは使えるので、おいおい書いていきたいと思います!


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