びょういん

薬のすすめ

気がついたら日高屋でからあげ定食のからあげを拭いていた。この店に入った記憶も、こんなものを頼んだ記憶も無い。完全にすっぽりと抜け落ちている。

普通のひとであれば「嗚呼、とうとう俺は頭がおかしくなったのか」と不安になるだろう。ただ僕は慌てない。なぜなら4,5年に一度ぐらいこういうことがあるのだ。

隣り町になぜか自分の自転車があったり、バックレたバイト先に戻ることになっていたり、「気がついたら」系の症状がたまに出る。知らないあいだにピンサロの看板を叩き割っていたこともある。

何かしらのバランスが崩れて一つの帰結として、おかしくなるみたいだ。


10年ほど前もそうだった。
その日僕は家を出て、すぐそこのコンビニまでも歩くことができなくなった。二日酔いでもなんでもなくて、気力が失われてしまっているのだ。

あのときはすぐに自分で診断を出した。「俺はうつか何かにかかっている。だからそこまで歩けないのだ」と。

僕は高校時代から薬学や精神医学の本をやたら読み漁っていた。これらはシンプルに好きなジャンルなのだ。この症状はまさに書かれているものだった。

僕はそのまま家の近くにある心療内科に突撃した。

精神系の病院に行くのはどうにも気がひける、というひとがいる。「どこの病院に行ってるんですか」などと書かれたDMまでもらうことがある。彼らは僕と一緒の病院に行けば安心する、とでも言うのだろうか。

気持ちは分からなくも無いが、歯医者や気取ったパンケーキ屋に行く方が、僕は気がひける。サクっと行けばいいではないか。痛いこともなければ、まわりがオシャレ猛者でもないのだから堂々と行こう。

待合スペースにいる患者さんたちは、それなりにパンチがあった。
ずっと息切れしているガイズや、ブルブル震えているおばさんなどが揃っていた。

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