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売り手のコストに価値はない

「これだけ頑張ったんだから、高値で買ってもらわないと」といった言葉を時折耳にする。自分たちは、これまでに投じたコスト(時間、技術、資金など)に応じて、お客様がより高い金額を支払うものと考えがち。けれどもそれはあくまで自分たちの目線であって、お客様の目線ではない。

 例えば鍵を開ける開錠のプロがいたとしよう。彼は10年という長い年月をかけ、どんな鍵でも開けられる技術を習得。過去の努力を補填するため、彼はどんな鍵でも開けるサービスを一回あたり10万円で提供することに。

 その結果として何が起こるか。誰も依頼をしてくれなくなる。もしかすると、鍵がかかった宝箱があって、その中には100万円を超える価値あるものが入っていて、それを他の誰も開けないなら話は別だけれども。

 残念ながら、お客様が「鍵を開けたい」という感情を叶えるために支払うことができるお金には上限がある。時間、技術、資金をかけて準備されたかどうかは全く関係がない。

 例えば、ある起業家がX線で扉をスキャンし、3Dプリンターで鍵を自動生成するサービスを、鍵一つにつき1,000円で提供し始めた場合どうなるだろう?もちろん大人気を博し、10年かけて研鑽を積んだ職人さんの商売は大きく影響を受ける。

 この起業家が用いたX線や3Dプリンターの技術は既に存在していることから、もちろん事業開始に10年もの準備期間は必要ない。けれどもお客様が課題に対して支払える金額に応じたサービスを提供でき、結果として見事にビジネスが成立する。

 お客様はコストに対してお金を払うのではなく、課題を解決するためにお金を払う。製品やサービスがどうやって生み出されたのか、これまでどれだけコストをかけられたのは特に気にしない。気にすることは、自分たちの願い事が叶うのか、困り事が消え去るのか、という観点だと忘れずに。アイデアをカタチにしたい皆様のお役に立てれば幸いです。


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