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たからばこ

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#コンテンツ会議

米津玄師、 刹那に宿る光を見つめて

一つずつ集まったピースがいつのまにか新しいパズルの絵を描くみたいに。バラバラに散らばる人生の断片を、音楽が結び目となって引き寄せるときがある。 過去、現在、未来は地続きであり、ひっくるめて人生と呼ぶが、時折それらが交差する瞬間に出会う。 米津玄師の歌声を聴いていると、何かに似た胸の痛みを伴うと気付いた。その感覚を追いかけてみたら、夏終わりの空気だった。 冷たい夜風がふと腕肌に触れたときに、遠い過去へ押し込んだ記憶が声を上げるような鈍い痛みだ。 彼が楽曲の中で描く「人を想う

トトロに学ぶ、子供を大事にする方法

娘が絶賛、「となりのトトロ」大ブームである。 なぜかわからないが、アニメ映画を観たことがなかったはずの段階からずっと、「おうち、トトロ、いた」と両親に報告し、毎晩小さいトトロが我が家に遊びに来て、ダイニングテーブルの下でビールを飲んでいた、という荒唐無稽な話を繰り返している。 おそらく保育園でトトロの存在を知り、まぁ幼児によくある妄想をしていたのだろうが、金曜ロードショーで映画を観てからは、文字通りトリコで、ほとんど毎日その世界に浸っている。 母である私も、この2か月は

「私なら、絶対に人を殺さない」のだろうか。

「私なら、絶対に人を殺さない」 喫茶店でニュースを聞きながらそう話す彼女の目には、大きな正義への期待が詰まっていた。 もういつだったのかは正確に思い出せない。多分その時殺人事件があって、テレビでは連日犯人の生い立ちや性格、最近の生活などがあれやこれやと大きな声で話されていた。そんな時に、彼女はニュースを聞いて思い出したように事件の犯人の話をし始めたのだ。 正直、耳に聞こえのいい言葉ではなかった。 でも私は彼女とそこまで仲が良かったわけではないし、犯人に肩入れをするほどニュ

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「天気の子」は「転機」そのものだった【ネタバレなし】

 大ヒット上映中の「天気の子」を観た?ぼくは観たよ。内緒にしておいてほしいんだけど、2回も。「君の名は。」は3回劇場に足を運んだから、「天気の子」でも少なくともあと2回は観に行くだろうな。つまりはすごくよかったんだ。もちろん、内容には触れないよ。ネタバレは無粋で、ぼくは粋だからね。  ぼくは、実は新海誠監督の作品が大好きなんだ。距離の美学、切なさを受容するかのような、あるいはそれすらも美しいと捉えるかのような描写。もしくは審美眼。ポエティックなセリフ。青く、脆く、刹那的で、

CSO(チーフ・ストーリーテラー)という役割

2006年、佐藤可士和さんがユニクロの根幹に関わってイメージを刷新させ、「アートディレクター」という仕事が確立されました。 2017年頃から、noteを爆進させる深津貴之さんのような「CXO」という仕事が注目を集めています。 こうして「クリエイターが経営者と共に歩む」という事例は沢山生まれている……のですが、企業のストーリーをしっかり組み立てていくような役割は、案外まだまだ弱いのかも。いや、その役割は今も確かに存在しているのですが、「高度な専門職」として、認識されにくいの

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贈り物本屋『Hotaru』 の、名前が決まるまでの話。

はじめまして。 贈り物本屋『Hotaru』の名付け親で、MOSHPITという会社の代表をしている薫と申します。 今日は、贈り物本屋『Hotaru』が、Hotaruという名前に決まるまでの思考の道筋を振り返ってみようと思います。 単なる記録ではなく、お店やプロダクトの名前など、何かに名前をつける人の思考の一助になればいいなと思います。 まず、僕がこの企画に参加することになったのは、この企画の主催者である井上拓美くんが、過去の僕のつけてきたプロダクトたちの名前をいたく気に入