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【感想文】移動祝祭日/ヘミングウェイ

『VTuberのマイクに転身したら、推しが借金まみれのクズだった』

っていうタイトルのライトノベルをさっき読んだ。

で、掲題の本書『移動祝祭日』には、弱冠二十二歳の著者がパリに移住してから妻と離婚するまでの約七年間に起きた出来事が回想録として断片的に描かれている。その多くは、未来のノーベル賞作家ヘミングウェイの文学修行の様子であり、その際の苦労話だけでなく「創作上の注意点」もいくつか見受けられる。

▼創作上の注意点① ~ ミス・スタインからの教訓 ~
「ミス・スタインの教え」の章において、スタインは著者の短編に対して次の様な評価をくだす。

<<展示会の壁にかけられない作品のようなもの>> であり、そういった作品は <<まったく無意味なことだから。それは間違っているし、愚かしいことなんだったら」>>新潮文庫,P.28-P.29

【解説】スタインの根拠が弱いので分かりにくいが、上記はおそらく「多くの読者を想定した作品を書くべし」「露骨な表現は避けるべし」といったところか。私が思うに、ヘミングウェイの小説は露骨な表記がまあまああるので、こうしたスタインの教訓はあまり加味されてない様に思われるが、過去の読書会で扱われた『キリマンジャロの雪』のラストシーンの様に劇的な展開は多少あったりするので、そういった点は教訓が生かされているのかもしれない。

▼創作上の注意点② ~ エズラ・パウンドからの教訓 ~
「リラでのエヴァン・シップマン」の章では、著者が信頼を置くエズラ・パウンドから次の様な教えを受けたという。

<<“正確な言葉(モ・ジュスト)” ──対象を正しく形容する唯一の言葉──の信奉者であり、私がのちに、ある状況下ではある特定の人々を信頼しなくなったように、形容詞を信頼するなかれ、と私に教えた人物なのだ。>>同著,P.186

【解説】上記も経緯不明だが「形容詞を信頼するなかれ」という点からして「何かを表現する際に用いる言葉は慎重に吟味するべし」「率直に語るべし」といったところであろう。ヘミングウェイの小説は読みやすい作品が多く、それは言葉に迷いが無いからともいえる。つまり、ウダウダ書かないのはこうしたエズラの教訓が生かされているからなのかもしれない。

といったことを考えながら、こうしたヘミングウェイの修業時代からおよそ百年が経とうとする今、あらためて『VTuberのマイクに転身したら、推しが借金まみれのクズだった』(※2022年発表)を読み返してみると、私の頭脳ではなにがなんだかもう訳が分からなくってしまったので、今一度冷静になるために私も、ライトノベル『美少女アイドル系VTuberのカメラに転身したら、推しが童貞クソニートのおっさんだった』を執筆することに決めた。

以上

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