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谷郁雄の詩のノート21

これは永福町に買い物に行く途中で発見した壁画です。正しくは、きれいに白塗りされたブロック塀に描かれた「クレヨンしんちゃん」でしょうか? しんちゃんは怪獣の着ぐるみを着て、楽しく遊んでいるようです。これを描いたお宅のご主人はクレヨンしんちゃんがよほど好きなのかもしれません。他にもいくつものバージョンのしんちゃんが描かれていました。なんだか、見ているだけで、こちらの顔がゆるんでしまいました。これだから街歩きはやめられません。「ありがとう」と心の中でお礼を述べて、しんちゃんの壁画をあとにして買い物に向かう怪しいオヤジが一人。(最新詩集「詩を読みたくなる日」絶賛発売中)


「かっこよさ」

ぼくらは
かっこよさを
目指していた

女の子に
ほめてもらいたいと
思っていた
女の子の目が
キラキラと
輝くようなことを
したいと思っていた

それは
かっこわるくても
生きていかなくてはならないと
気づく前の
かっこわるかった
ぼくら


「宝くじ」

財布から
一万円札を出して
宝くじを買うおじさん

おじさんが
買ったのは
ひょっとしたら
当たるかも
というワクワク感

けれども
やっぱり
当たらなかった
という
小さな失望感

外れた
宝くじで
せっせと作った
きれいな
千羽鶴


「避難はしご」

今日は
避難はしごの
点検日

普段は
とじている
はしごの蓋が
ぱかっと開けられ
はしごがするする伸びていく

はい
大丈夫ですね
作業員さんが宣言する
はしごはするする
戻されて
蓋もぱかっととじられる
蓋がキラキラ
光を反射する

ぼくと
妻と
作業員さんの
三人は祈る

このはしごが
使われる日が
来ませんように

©Ikuo  Tani  2023


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