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健常者と障がい者という言葉について、そのはざまの私が思うこと

 障害者雇用を目指して就活を進めていく中で、これまであまり意識していなかった、健常者と障がい者の違いみたいなものを感じる場面が多くなった。なぜこれまで意識しなかったかと言うと、わたしの障がい(双極性障がい)が目に見えないものであり、さらに比較的軽いことや、就活のように一般と障がいで分かれているような仕組みの中で活動することがなかったからだ。
 そしてわたしは健常者と障がい者とか、定型発達と発達障害、といった言葉があまり好きではない。「健常者は障がい者の気持ちなんて分からない」とか「健常者だからこう」とか、属性によって決めつける言葉にもやもやしていた。確かに障害を持った人はそうでない人に比べて不便を強いられたり簡単にはいかないことがたくさんあるのも事実だし、実際経験してみないとその気持ちが分からないと思う。
 しかし、特にわたしのような精神障害は、病院に行っていない(つまり診断や手帳をもらっていない、健常者・一般と区分されるであろう)人々のなかにも相当数病的な症状がある/あった人はいると思うし、実際うつ病や不安障害などの精神疾患はありふれたものだ。屁理屈を言っているみたいに聞こえるかもしれないが、精神疾患に関しては通常と症状の境目があいまいなものも多いと思うから、はっきり区別できるわけではないと思う。もちろん精神疾患とは縁がなくて興味もない人もいると思うし、そういう人と重度の精神疾患の人の違いがないのか、と言ったら絶対にそんな訳はないので、要は軽い重いや程度の問題になってしまうのだが。しかし最近あることを経験してから、そういった言葉の捉え方が変わったので、それを書こうと思う(前置き長っ!)
 ではまず、なぜわたしがもやもやしていたかと言うと、冒頭でも書いた通りやはりわたしの障がいが軽く、健常者と近いところにいるからだと思う。「健常者は~」とか「うつ病の人は~」とかの言葉を見ると、わたしは本当にうつ病の人の気持ちが分かるほど症状が重いのか、とか、ほんとに手帳持ってもいいくらいの病気なのか、とか考えてしまって、以前は自分は(精神疾患を理解していない)健常者側だと思うことが何度かあった。しかし、そういう「健常者には分からない」系の言葉を言う人が言う「健常者」は、精神疾患を理解しようとする姿勢がないか、あるいは精神疾患になったり、そういう人と接したりする経験が乏しい人なのだろうなと気づいたのだ。
 わたしは精神科デイケアというところに通っているのだが、もちろん利用者はみななんらかの精神疾患や発達障害を持っているし、スタッフも理解がある人ばかりだ。だから、その場で「体調が悪い」と言えば、基本的には精神的に調子が悪い、という意味なのだが、アルバイト先でオーナーさん(多分50代くらい)に「体調が悪い時期があって…」という話をしていたら、「体が弱いの?」と言われ、「体調が悪い=身体的に調子が悪い/身体的な病気」と捉える人もいるんだ…となった。またそのオーナーさんと、うつ病で入院している共通の知人のことを話す機会があり、その際に「すごくできる子なんだから励ましてあげて」と言われたり、(その子とわたしは仲が良いので)「退院したら次のシフトのこと聞いてみてもらえるかな?」と言われたりした。うつ病=ただ落ち込んでいる、みたいに思われていたのかもしれないが、実際はそんな生易しいものではない。全世界が絶望で、ひどいと妄想もあり通常の思考ができない時もあるし、自殺する危険性だってある。危険性だけではない。ほんとうに死んでしまう人もいる。なのに!励ますとか、次のシフトとか、言ってる場合じゃないでしょ!!と思ってしまった。またその友人に限らずわたしも、うつ状態がひどくても、人前では無理して明るくふるまうので「平気そうに見える」などともいわれたこともある。オーナーが悪人なわけでは決してない。ただ経験が乏しく、分からないことも多いから、善意で言った言葉がわたしを傷つけているだけなのだ。
 本題に戻るが、特定の文脈においての「健常者」とは、全ての健常者のことではなく、理解がないあるいは経験がなく分からない人のことを指すのだと思う。ひとくくりにして考えてしまうのだ危険だ。「障がい者」も同じだ。ひとくくりにして「あの人は障がい者だからこう感じるだろう」と考えてしまうのは良くない。ある程度精神疾患に共通する考えや、理解の枠組み(特性上こう配慮したほうがいいなど)はあると思うが、何がしたくて何が得意で、どう感じるかはひとそれぞれだ。また世代によっても理解度が違うと思うが、わたしが年上の人と話すときには、自分の世代のことばっかり理解してほしいと思うのではなくて、年上の人たちが生きてきた背景や状況も考えてみるようにしたいとも思った。

最後まで読んでくれてありがとう。るえな

P.S. 3月31日は「世界双極性障害デー」。精神疾患に関して、多くの人がより良い理解ができるように、わたしも啓発していきたい。

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