小売業は「ポジション」がカギ
column vol.804
昨日は、以前お世話になったとある商業施設に行ってきたのですが、コロナが落ち着いた今でも空きテナントがある状況で、未だ小売業の厳しさを感じました。
ビジネス+ITの【廃墟化する商業施設が大変身? 都市で増える「超個性的な施設」と郊外の「ある施設」】という記事でも、その深刻さを伝えており、小売のマーケティングを専門とする身としては、日々非常に考えさせられます。
〈ビジネス+IT / 2022年9月16日〉※無料登録で閲覧可能
そんな中、「個性×小型」戦略で顧客の心を掴んでいる商業施設が台頭してきています。
「希少性」を重視した商業施設が台頭
例えば2020年2月、日本橋にオープンした「K5」。
マイクロ・コンプレックスを掲げており、個性的なホテル、ビアホール、レストランなどから構成されています。
他にも東京では、クリエイターの巣窟として注目され、現在はファッションブランド「ミナ ペルホネン」のショップなどが入る「アガタ竹澤ビル」や、お茶をテーマにしたショップが入る「JINNAN HOUSE」などがあります。
独自の世界観や趣旨を貫ける範囲の小規模なつくりで、「唯一無二」の存在感を示すことで、目的性の高い特性少数のファンを集客しています。
そして、このような店舗は多店舗展開による事業拡大よりも、ネットでの販売拡大や、自分たちの趣旨を実現するための新たな取り組みへの拡大を目指している。
これまでの商業施設は、広いターゲット設定を行い、多くの人たちに利用してもらえるための、いわば最大公約数的なショップや商品揃えを行ってきました。
しかし、自社のECサイトを通じて商品を顧客に直接販売するD2Cブランドが台頭してきたことで、より生活者の細分化されたニーズに対応することができ、「他にはない特徴」が大切な時代になってきました。
そういった中で実店舗も、「希少性」を重視し、勝機を掴むという流れに変わったのです。
テナント企業も「個性重視」
そして、商業施設にテナントとして入居する小売企業でも「個性重視」は強まっています。
無印良品を運営する良品計画では「感じ良い暮らしと社会の実現」を理念として掲げていますが、新たな挑戦として東京都板橋区と地域活性化などに関する包括連携協定を締結しました。
〈産経新聞 / 2022年9月15日〉
協定は、産業振興や福祉、教育など8項目で、区民祭りでは同社が一部のデザインを担当する他、都内最大級の新店舗「無印良品 板橋南町22」に板橋区の産品を販売するコーナーなどを設置。
将来的には、共同で商品開発することなども検討しているそうです。
区と提携しながら、そこに住まう人たちの暮らしを豊かにする。
「感じ良い暮らし」を単に感じ良い商品を販売するだけではない良品計画の熱意を感じます。
また、アパレルブランドの「NIKO AND...」が、東京・台場の潮風公園(太陽の広場)で音楽フェス「UNI9UE PARK’22」を10月9・10日の2日間開催。
〈WWD JAPAN / 2022年10月11日〉
オープニングアクトを務めた「UEBO」や「CHILLI BEANS.」、「KOJIKOJI」、「LUCKY TAPES」、「FIVE NEW OLD」、「SIRUP」など総勢18組のアーティストがパフォーマンスを行いました。
「NIKO AND...」からは「カルチャーを発信していこう」という気概が。
他にも紹介したらキリがないですが、各企業「どんな企業でありたいか」「どんな世界を届けたいか」ということを真剣に考えていることが伝わってきます。
「最大公約数」を武器にする
では、「最大公約数」を求めてつくられてきた今までの商業施設がダメかというと、そうでもないとも思います。
なぜなら、そんなに趣味趣向がはっきりしていない人もいますし、自分の個性を爆発させるより、周りに上手く溶け込みたい人もいます。
そういった人からすれば、とりあえず「間違いのないものが欲しい」というのが本音です。
ビームスやユナイテッドアローズ、トゥモローランドなど、セレクトショップを集結したショッピングセンターが必要とされるのも、そういったニーズの表れです。
みんなが知っていて、間違いのないもの。
これも、どんな世になっても求められると信じております。
ただ、これまでの商業施設がその役割(ニーズ)を真正面から受けて、その最適解を日々アップデートしているかというと、どうでしょう?
当社ではこれまで40年間、生活者研究、顧客調査に力を注いできましたが、5年もすれば、同じ属性(年齢など)であっても、価値観の変化を著しく感じます。
若年層は特にそうです。
そもそも最大公約数的に最適解を生むことは難しいもので、それには対象とする人たちの心に徹底的に向き合い、深掘っていかないと、共通のニーズをなかなか見出すことはできないでしょう。
顧客にトコトン向き合っている商業施設は、やはり人気が高い。
「最大公約数的」商業施設の差は、ここに大きなポイントがあるのではないかと感じております。
ということで、それぞれの企業のそれぞれの正解を突き詰めていくことが大切なのですが、自分のポジションを決めたら、その役割が担うための不断の努力をする。
そこは一貫して共通することなのだと思います。
…と、ついつい意気込んでしますのも…、本日、月曜日の全社ミーティングに向けて、もう一人の副社長である石川と発表資料の最後のすり合わせを行ったからです。
当日は、改めて当社がどんな企業でありたいかを話すつもりです。
…どんな反応が待っているのか…?
考えるとドキドキしてきますが、とりあえずはゆっくりと土日を休みたいと思います…。
本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。
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