自分には「武器がない」と思ったら
column vol.931
最近、とある経営者の方から「優秀な個人」と「優秀な組織」の違いについて話を聞く機会がありました。
優秀な個人とは「何でも出来る人」。
それもどれもレベル高く出来ることが望ましいわけです。
一方、優秀な組織とは何か?
それは「何ができるかを理解している人」が揃っていること。
つまり、チームの中での自分の「貢献どころ」をちゃんと見つけられる人が揃っているというわけです。
実は突出したことがないのが普通
ポジション名がある団体スポーツとは違い、会社組織のチームにはハッキリと役割が決まっているわけではありません。
例えば、マーケティング課があった場合、担当は決まっていたとしても、それは業務を棲み分けいるだけでやることは同じだったりしますし、複数人で協力して業務を回すこともあります。
しかし、同じマーケティングチームの中でも、アイデアを出すのが得意な人もいれば、分析が得意な人もいるし、トレンドをキャッチするのが得意な人もいる。
何か突出したものを持っている個人が集まり、お互いがそれぞれの強みを理解し合い、手をとり助け合う形が「優秀な組織」であるというわけです。
世の中、何でも高いレベルでできる人というのは稀有で、1つでも得意技があれば組織の中でなくてはならない存在になるというのが話の筋です。
…ただしかし……
…現実的に考えると何か突出した何かを持っている人というのも、実はそんなに多くはないのかなと感じています…
「あなたは絶対誰にも負けない突出した能力を持っていますか?」と問われたら、ちょっと考えてしまいませんか…?
恐らく「自分はどれも平均的」「器用貧乏で特別得意なものなんてない」と思う人の方が多いのではないかというのが私の意見です。
その繰り返しこそが日常なのではないかと思っています。
「役割」は相対評価の中にある
しかし世の中、上には上がいると思う一方、チームは限定された人数ゆえ、その中での一番は見つけることができるはずです。
それがチームでの自分の役割(貢献どころ)になります。
Aチームでは、自分はアイデアを出すことに長けていたが、Bチームに移ると自分よりもアイデアを出す人がいて、逆に自分は分析力が一番高い人になる場合もあるわけです。
何でも平均的だと自分を認識している人は、逆にデコボコがない分、チーム特性によって自分の役割を見つやすいとも言えます。
私はチームワークの原点はここにあって、自分の強みは自分で決めつけるものではなく、周りとの関係で決めれば良いと思っています。
そう考えると、変に突出したものがないなら、それはそれで良い意味でこだわりがなくチームに順応できるというわけです。
実際、私も平均的なタイプだと思っているので、チームに合わせて自分の役割を変えるようにしています。
繰り返しにはなりますが、何を求められるかはチームメンバーとの比較の中で相対的に決まると捉えているからです。
「自分が望まない」褒め言葉こそ鉱脈
とはいえ、それでも自分の強みを持ちたいという人もいるでしょう。
ただ、実はそういう人に限って、理想の自分と他人の評価にギャップを抱えている傾向がある気がします。
自分を例に挙げると、若い頃の私は「面白い人(個性的・型破り)」と思われることを望んでいたのですが、私を知る人ほど私のことを「マジメ(実直・まとも)」だと言ってきてました…
当時は「普通の人(つまらない人)」だと評価されているようで、非常に嫌だったのですが、そこそこ大人になると「そんなに面白いわけでもない自分」を受け入れないといけなくなる日が来ます。
しかし、嬉しくない褒め言葉にこそ鉱脈があると思っています。
なぜなら、仕事においては、評価は自分が決めるものではなく他人が決めるものであることが前提だからです。
さらに、その部分はまだ自分でも掘り下げたことはなく、きっと伸び代が大きいでしょう。
私もある日「一旦、マジメである自分を受け入れてみよう」と前向きに考えたら、多くの発見に恵まれました。
例えば、私はマジメにコツコツやるのが得意なタイプなので、その理想のロールモデルを探してみると、非常にカッコ良い人に辿りつきました。
それが、元プロ野球選手のイチロー選手です。
これは、私の座右の銘になっている言葉で、この言葉があることで自分の人生を肯定できています。
それはnote執筆でも感じられます。
これまで2年半、私よりも魅力的な記事を書く方に数多出会いましたが、その中でもnoterを辞めてしまう方も多くいらっしゃいました。
しかし、コツコツと続けていれば、いつか自分が憧れた方々と同じように魅力的な記事を書く可能性はある。
マジメだからこそ、自分でも予想しなかった遠くに行けるかもしれない。
それがイチローさんが教えてくれていることだと思うのです。
大切なのは「セルフコンパッション」
このように、最初にピンと来なかった特長でも、一旦ノリ良く乗っかってみると新たな鉱脈に出会えることが多いと感じています。
noteのつながりで言うと、私の場合はたまに「文章が分かりやすい」と褒めていただく機会があります。
これも実ところ、最初はピンと来ませんでした。
「面白い」とか「奥が深い」とかなら分かりますが、「分かりやすい」ってどういうことなのだろう…?と。
しかし、これにもノリ良く乗っかってみます。
分かりやすさを追求してみたのです。
そうして続けていると、あるnoterさんから「一般的な記事は小難しいものが多く、しかも長い。でも池さんの記事は簡潔で分かりやすいから通勤電車の中でさらっと読める」と言われてハッと気づきました。
なるほど、現代人は皆忙しい。
時短がキーワードになる中で、「簡潔で分かりやすい」というのはそれはそれで武器になると。
それが今の自分のスタイルにつながっています。
(最近、ちょっと記事が長くなってきていますが…)
このように自分を前向きに励まし導く方法を「セルフコンパッション」と言います。
〈東洋経済オンライン / 2023年1月14日〉
コンパッションとは「思いやり」。
もしも、友人が「人からこういう風に褒められるのだけど、嬉しくないんだよね…」と相談してきたら何て返すでしょう?
きっと、その面を肯定するのではないでしょうか。
カギは「何ができるかを理解している人」
とはいえ、私よりもマジメな人で、継続力があって、分かりやすい人はこれまた数多いるわけです。
あくまでも私レベルの能力で言えば、人と比べてそのような特性が発揮しやすい傾向にあるというだけです。
当然、チームによっては私よりも「優秀なマジメ」がいます。
しかし、そもそもで言えば自分は平均的な人間。
ですから、先ほどの話のように、相対的に自分の役割を見つけて担えば良いわけです。
マジメな自分は時に融通が利かないことをよく知っています。
自分よりも優秀なマジメに出会ったら、マジメの負の部分も強いはずなので、その部分をサポートしたり、違う特性を持った人たちに理解を促していく。
そうして、自分の貢献どころを探り、そのチームが一番上手くいく形を築き上げていくようにしています。
重要なのはチームの中で「何ができるかを理解している人」であること。
そこさえ外さなければ、他のメンバーは自分のことを肯定し、必要としてくれると信じています。
何でもできる人でなくても、突出しているものがない人でも良いのです。
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