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働き方改革の “落としもの”

column vol.869

当社では有休5日間義務を達成するために、28日、1月5日を休みにしているので、今週が終わると冬休みモードになります。

10年前のことを考えると、当時は冬休みすらちゃんと休めない状況だったので、働き方改革の波の大きさを改めて感じます。

“働き方改革” と言えば、今年は何といっても「人的資本経営」への大きな転換が見られた年でしたね。

まずは、その辺をおさらいしておきたいと思います。

「人的資本経営」とは何か?

人的資本経営とは、人材を「資本」と捉え投資の対象とし、企業価値を高めていく経営手法です。

2次産業が主流の時代は、いかに早く安く生産するかが肝でした。

しかし、企業におけるビジネスモデルは、デジタル化への急速な変化を迎え、製造業中心から無形の知識資産中心に変わりつつあります。

つまり、これからは「創造性」「革新性」が競争力を生む。

それを叶えるのは、まさに人材であるということなのですが、実際、米国S&P500社の市場価値を分析すると、その約9割無形資産が生み出していると言われています。

ということは、優秀な人材をいかに仲間に引き込むかが重要になるのですが、年功序列や終身雇用で人材を確保できていた従来とは異なり、今日は組織と人材が互いに選び合う自律的な関係へと変革しています。

ですから、人的投資なくして優秀な人材を自社に留めることはできなくなっているということですね。

まとめるとこんな感じです。

【以前】
企業はモノへの設備投資によって、生産性を向上し資本力とする形 /
 
「人的資源」 / 相互依存 / 囲い込み型
近年
IT産業に代表される、無形の財産を活用して生産性を向上し、資本力とする形 / 「人的資本」 / 個の自律 / 選び選ばれる関係

そして、投資の観点でも「人的資本情報の開示」への要望は欧米では強まっており、この流れは日本でも上場企業を中心に広まっています。

なぜなら、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資に対しての意識が高まっていますが、人的資本は「社会」「ガバナンス」に含まれ、人材への投資状況が企業の成長性を評価する判断ポイントとなっているからです。

上場企業では来年から開示が義務化

一方、このことが各社の大きな負担にもなっているのです。

「開示」のために現場が疲弊??

どの企業も、人的資本の観点をより強めていくことには賛成しているものの、「開示」への疑問は未だ色濃く残っていると感じます。

ちょうど最近、東洋経済オンラインでも記事が上がっていたので、共有させていただきますね。

〈東洋経済オンライン / 2022年11月26日〉

開示項目企業の自主性に委ねられていることから、どう開示するべきか、各社やきもきしながら検討作業に入っています。

そのため、ある電機メーカーでは、『ヒトが大切』が合言葉の人事部門が人的資本開示のため大残業し、疲弊しているという事態に陥っているそうです…(汗)

ちなみに、人的資本経営の分析指標と言えば、国際標準化機構(ISO)の設けているガイドライン「ISO30414」でしょう。

11の項目(以下列挙)と、それに紐づいた58の指標があります。

ISO 30414 管理項目

これに対して、ある機械メーカーの経営者は、女性の雇用について次のような疑問を呈しているそうです。

当社の全従業員に占める女性の比率は約10%で、女性活躍についてはダメ企業になるそうです。ただ、工業高校の生徒に占める女子の割合は7~8%で、当社はむしろ女性活躍に積極的です。

なるほど…、確かに非常に難しいところですね…

投資家の反応も微妙…?

では、先ほど「開示を強く求めている」という前提に立っている投資家の方々のご意見はどうでしょう?

同じく東洋経済オンラインの記事を読んでいると、外資系投資ファンドの運用責任者はこのように語っております。

当社はさまざまな業種の数百社に投資しており、各社の事業内容を詳しく把握しているわけではありません。ですので、『こんなすごい研修をやってます』とか『資格保有者がたくさんいます』と報告されても、チンプンカンプンです。人的資本開示は、投資判断にほとんど意味がありません

もちろん、こちらの投資ファンドの方々も人的資本経営に対しては賛成であることが前提であることは追記させていただきます。

企業側に目を移してみても、ある会社の人事部門責任者の方はこのようにお話しされています。

人的資本の“経営”と“開示”を分けて考えるべきではないでしょうか。当社でもヒトが何より大切なので、教育投資や健康経営にはしっかり取り組んでいくつもりです。しかし、情報開示については、株主・投資家やマスコミから後ろ指を指されない程度に、周回遅れで対応していきます。

なるほど…、なるほど…

「ヒトを大切」にする経営を皆が理想とし、そこに向かいながらも、立ちはだかる現実によって、現場が苦しい思いをするということは、やはり避けていかなければなりませんね…

過渡期はいつも大変だとはいえ、理想に向けての積み残しは存在してしまっている…

慎重な議論深い考察が今後の取り組みの中で必要となりますね。

裁量労働制「対象拡大」になるのか?

“積み残し” と言えば、裁量労働制の「対象拡大」議論も大詰めを迎えています。

〈毎日新聞 / 2022年11月29日〉

裁量労働制は、実際に働いた時間ではなく、あらかじめ労使で決めた時間を労働時間とみなす制度のこと。

労働者の裁量で働く時間を管理できることが特徴です。

弁護士証券アナリストなど19業種を明示した「専門型」と、事業の内容を例示した「企画型」の2種類があり、厚生労働省21年度調査によると、導入する企業の割合は専門型2.0%企画型は0.4%に留まっています。

「対象拡大」で注目されるのが「営業職」です。

18年成立の働き方改革関連法一部の営業職で実現するはずだったのですが、法案の根拠となった厚労省の調査データに多数のミスが見つかり、法案から削除されてしまいました。

かねて裁量労働制の拡大を求めてきた経団連にとっては悲願とも言える今回の議論。

一方で、長時間労働に繋がりかねないと連合は反発しています。

企画型を拡大するには法改正が必要となりますが、専門型ならば省令改正で対応できます。

こうした点も念頭に、厚労省幹部は「与野党の議論が紛糾する国会会期中は避け、来年の通常国会が始まる前の年内には一定の結論を出したい」としています。

当社はマーケティング会社ですので、クリエイティブ職は対象になりますが、企画営業に近いプランナー職は対象外となっています。

個人的には、対象拡大が実現され、社内で足並みを揃えたいというのが本音です。

もちろん、クリエイティブ職、プランナー職、双方とも超過労働にならないことが前提であることは間違いありませんので、現場とよく話し合って皆が健康的に仕事をできるように努力します。

義務やルールも大切ですが、最終的には経営陣にどれだけ社員を大切にするかという熱意が必要であるような気がしています。

とはいえ…、仕事への価値観、スタンスは多様化しているので、どう最適解を生み出していくのかは本当に大変なのですが、じっくりと考え、努力していきたいと思います…!

さてさて、話は変わりますが

今夜は、M-1W杯決勝とビッグイベントが続きますね。

この後、そちらをゆっくりと楽しみたいと思っております。

それでは、また!

明日もよろしくお願いいたします!!

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