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で、現代アートって何なのか。

「アートなんて感じたいままに感じていい、と言われても困る」というお話を聞く機会がありました。
私は作品が異質であればあるほどムラムラする性癖を持っているので気が付かなかったのですが、こと現代アートに関しては、確かに何の理由もなく突然「石」とか置かれても気持ちが追い付かないし、困惑してしまうというのはなんとなくわかります。

李禹煥(リ・ウファン)/Lee Ufan 対話 2017・ 関係項 1968/2019

普段から人を思いやったり、気持ちを理解しようとする優しい人ほどそうなるのかもしれません。

ということで、アート雑誌も読まない、なんかきれいなものが好きだよ、という程度の薄っぺらい鑑賞者なりに現代アートって何なのか考えてみました。

私なりの現代アートの簡単な解釈は以下です。


・ざっくり100年前から今のアートのことを差すのだろう。

色々な「現代アート」関連の記事を読んで、とりあえずそう理解することにしました。というのも、マーベル映画で時系列が気になって内容に集中できない私のような人間は「現代」という表現にまず、つまずくのです。

今この瞬間、自分は生きているから現代だけど、50年後、今発表されているアートは現代アートって呼ぶのか?などと余計なことが頭をかすめて作品鑑賞どころではありません。なので100年前あたりから今までが現代アート。

もし興味がある方は以下の本など参考にしてみてください。現代アートは100年くらい前に業者さんが作った便器が出発点、と知ることができます。ジーザス。

・見た目にインパクトがある作品は特に「現代アート」と呼ばれる雰囲気がある。

デカい、不思議、わからない、綺麗、汚い。社会の中で生活していてまず見かけることのない、見かけたとしてどうしていいのかわからないものを「現代アート」と呼ぶ雰囲気があります。

この辺から、「現代アートってなんなの」「意味が分からなければなんでもいいのか」とモヤモヤし始めるのですが、そう、きっとそれが現代アートです。インパクトといっても、何にインパクトを感じるかは人それぞれです。

「わからないけど、なんかすごいな」と表面的にでも感じられたらしめたもので、「すごいな」が日常に入ってくることが「現代アート」なのかもしれません。

・余計な文章や前知識は「辛い」と感じたら何も入れないで鑑賞したほうがいい。

作品の作られた時代背景、作家の生い立ちや作品コンセプトなど、前もって知ってから鑑賞すると確かに理解は深まります。

それはそれで楽しいのですが、研究者やよほどのファンでない限り、普段生活していて「今度の週末、展覧会へ行こう→その前に作品の下調べをしよう」とはなりづらいものです。

時間があればよいのですが、調べられたとしてもあまりにも文章が長かったり、専門用語が飛び交ってしまうと気持ちもしぼんでいく。面白そうだから、綺麗だから見たい、じゃダメなのかな……難しそうだし行くのやめるか。

そうなる前に、読み始めて「無理」と感じたらそのスマホまたは本をいったん閉じましょう。情報を詰め込み過ぎると、その中から正解を導き出そうとして、展覧会がテストのようになってしまいます。

面白そうだから、綺麗だから見たい、でまずは動きだしたのですから、答え合わせは家に帰ってからでも遅くはないですし、もちろんしなくてもいいのです。どこで心の栄養になるかわからないのが、芸術の豊かなところ(きっと)。


宮島達男 Innumerable Life/Buddha CCIƆƆ-01 2018年

・自分の過去の経験と現代アートがリンクしないので「?」となるのは当たり前。

「こんなものを作る気持ちがわからなくてつらい」と思ったことはありませんか。私はあります。理解できなくて芸術と距離を感じることはしょっちゅう。
実はわからないというのは、過去にこれを作ろうと思ったこともなければ描こうと思ったこともないから。

それもそのはずで、私たちが見ている現代アート(現代でなくても)は、
「他人が作った、他人の心の内にある、他人による創造物」なのです。
他人のことを理解しようとしても限界があります。

そもそも理解できるという事象は、数学のような絶対的正解があるものを省いて、対・人間においてもとても曖昧なものです。

私にも数少ない友達がいまして、彼らとの会話中、それこそ本心から「わかるよ!」と言ったことがあったとしても、本当に同じ気持ちかは残念ながら何の証明もなく、そしておそらく本当にはわかってはいない(同じではない)でしょう。ただ「わかる気がしている」だけなのかもしれません。

しかし、まったく同じようにわかることなど不可能であり、また「わからないこと」それ自体はそこまで重要じゃないと思うのです。
違うことを感じているから、理解したいと手を伸ばしてみる。わからない、共感できないということを恐れなければ、自分だけの発見がそこにはあります。

まとめ

偉そうにつらつらと知識のない素人が書いていますが、素人だからこその芸術の捉え方の一つだと思っていただけたら幸いです。
現代アートって何なんでしょう。「他人が生み出した作品」は、共感も反感も、正解も不正解も、晴れか雨かも求めていません。わからないことを責めるなんてことも、しません。
ただあなたという鑑賞者がどんな人生を歩んできたか、どんな経験を持って今日、作品の前に立ったのかを、聞きたいと思っているのかもしれません。

奈良美智 《Miss Moonlight》 2020年

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